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映画 真夏のオリオン(2009日) BSシネマ [日記(2014)]

真夏のオリオン [DVD]
 「潜水艦映画にハズレ無し」、ということで見てみました。
 敗戦色濃い1945年夏、米駆逐艦とイ号潜水艦の戦いを描いた戦争映画です。この手の映画の常として、ヒューマニズム、反戦、若い将校と内地で帰りを待つ恋人、というお決まりの道具立てがあります。潜水艦映画ですから、緊迫したソナー音、駆逐艦との駆け引き、爆雷による浸水、火災、限界深度を超える潜行(例のボルトが飛ぶやつです)など、定石通りです。これ等を全部揃えて、なおかつ過去の映画の寄せ集めツギハギから逃れるためには、もうひとつ何かが要ります。
 それが「真夏のオリオン」というわけです。

 冒頭、65年前に拾われた1枚の楽譜がアメリカから届き、その楽譜にまつわる潜水艦イ-77号の物語を、生き残りの老人が語るという構成です。「イ-77号からの手紙」ですね、何処かで見たような聞いたような。この楽譜のタイトルが「真夏のオリオン」、潜水艦の艦長に恋人が託したものです。楽譜は戦死した水兵とともに海に流され、これを拾った駆逐艦の艦長が65年後に日本に届けたということです。
 この艦長はイ-77号と死闘を演じた駆逐艦の艦長です。艦長は、潜水艦の艦内でハーモニカで演奏される曲を聴き、その楽譜に書かれた文言から、「真夏のオリオン」は愛する人を導く瑞兆であることを知るという伏線が用意されます。艦長は、潜水艦と最後の一戦を交える寸前に、「真夏のオリオン」に託して終戦と平和の訪れを潜水艦の艦長に伝えます。

 というストーリーです。繰り返しますが、戦争映画の道具立て、潜水艦映画の定石、全てが揃っています。「真夏のオリオン」という工夫もありますが、この映画は面白くありません。全てが揃っていることで、新鮮さに乏しく、こじんまりとまとまった戦争映画、潜水艦映画に終わっています。

 潜水艦映画の名作『Uボート』では、クルーの汗の匂いと湿度が伝わってくるほどの息苦しさをおぼえたものですが、『真夏のオリオン』の潜水艦艦内は広々としていて清潔感にあふれています。Uボートとイ号はどれほど違うのかと調べてみました。

      UボートVII型             伊号第五八潜水艦
排水量: 769t(水上)/871t(水中)       2,140t/3,688t
全長: 67.1m                    108.7m
全幅: 6.2m                      9.3m
喫水: 4.74 m                    5.19m
速力: 浮上時17.7 ノット潜航時7.6ノット    17.7ノット/6.5ノット
航続距離 :浮上時15,170 km潜航時150 km  38850km 194km
魚雷発射管:5門(魚雷14本)           6門(魚雷19本) 水上偵察機1機
総員 :~52名                    ~94名

 なるほどイ号は大きいです。大きいですが、如何にも映画のセットという雰囲気で緊迫感が伝わってきません。クルーは長髪で、言葉使いも丁寧 →あり得ないです。「潜水艦映画に外れなし」とはいいますが、『真夏のオリオン』はこの範疇に入りそうにもありません。

監督:篠原哲雄
出演:玉木宏 北川景子

タグ:BSシネマ
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コメント 2

ktm

それぞれの海軍の戦略の違いはあるのでしょうけど、
戦う戦場の違いも大きいですよね。
Uボートは大陸に近いところで戦い、伊号潜水艦は広大な太平洋で戦いましたから。
空中戦でもヨーロッパは高度が重視され、太平洋では航続距離が重視されました。
ゼロ戦の類稀な航続距離はそのためですし、伊号潜水艦は大戦初期に西海岸で通商破壊行動も実現しています。
これに対抗したドーリットルの東京空襲は陸軍の爆撃機を空母から発艦させてやっと中国まで辿り着きました。
by ktm (2014-06-05 12:05) 

べっちゃん

確かにそうですね。イ号はドイツとからエニグマを運んだり、チャンドラ・ボースを運んだりしたそうですね。
by べっちゃん (2014-06-06 20:33) 

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