映画 祇園囃子(1953日) [日記(2015)]
母親を亡くし身寄りのない16歳の栄子(若尾文子)は、かつて父親がひいきにしていた祇園の芸妓 、美代春(木暮実千代)を頼り舞妓となります。美代春は、筋の良い栄子を実の妹のように育て、栄子のお披露目にお茶屋の女将(浪花千栄子)から30万円を借りて支度をします。
美貌の「姉妹」が祇園という特殊な世界で生きてゆく姿が美しい京都の四季とともに描かれます、と書きたいのですが、話はもっと生臭いものです。
専務は商売をまとめるために、課長の東京出張に美代春と栄子を伴い事件が起きます。専務は、ホテルで栄子に襲いかかり唇を噛まれて全治一ヶ月。当然、美代春を当てにしていた課長の欲望も宙に浮きます。この「事件」には笑ってしまいます。
ここからが映画のハイライトです。栄子のお披露目にお茶屋の女将から借りた30万円は専務から出ていたことが明かされ、専務と栄子、課長と美代春を結びつける女将の策謀が明らかになります。
専務の商売は壊れ、面目を潰され顧客を失う危機に立たされた女将は、検番に圧力をかけて美代春と栄子がお座敷に出ることを妨害します。祇園で芸妓として生きたかったら課長と「寝ろ」というわけです。浪花千栄子の演技は上手いです。この映画は、浪速千栄子のしたたかな女将と、「祇園」の因習に絡め取られる木暮実千代の美代春で成り立っているようなものです。
女将の圧力に屈し美代春は課長と「寝」ます。逡巡しながらも足袋を脱ぐ木暮実千代の演技も秀逸。
元通り美代春と栄子にはお座敷がかかるようになり、着飾ったふたりが祇園囃子のなかを「晴れやかに」お茶屋に向かう姿で、幕。しかし、これっておかしくないですか?。女将は面目を施し美代春は旧弊に破れ、祇園の「日常」が戻ってきただけです。これではホームドラマです。それとも、千年王城の地京都の伝統はかくも揺るぎのないものだというのが主題なのでしょうか。
ともかく、京言葉が存分に楽しめます。
監督:溝口健二
出演:木暮実千代 若尾文子 浪花千栄子 河津清三郎
当blogの溝口健二
タグ:BSシネマ
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