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映画 晩春(1949日) [日記(2016)]

晩春 デジタル修復版 [Blu-ray]
 小津安二郎といえば、原節子、笠智衆が定番ですが、以外なことに『晩春』が原節子を主演に据えた初めて映画だそうです。
 高度成長に走る前の家族の物語です。『東京物語』を始め、有名な小津の映画は全部コレです。ゆったりした時間の中で、古い倫理や家族愛が描かれます。
 

 妻を亡くし娘の結婚を心配する父親( 笠智衆 )と、父親を残して結婚することをためらう娘(原節子)の話です。このテーマは、『秋刀魚の味』(1962、遺作)でも繰り返されます。『晩春』も『秋刀魚の味』も、娘を結婚に送り出した初老の父親の孤独の描写で終わっていますから、娘を手放す父親に仮託された「喪失」がテーマかも知れません。では父親が失ったものは娘なのか?。

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 『秋刀魚の味』では、この喪失のもうひとつの側面が描かれます。娘の結婚を心配する父親( 笠智衆 )は、恩師(東野英治郎)の家を訪れ、婚期を逸した娘(杉村春子)とその父親の無惨な生活を見ることになります。娘を失った孤独と、娘を失わなかった代償の対比が鮮やかに描かれます。

 『彼岸花』(1958)は、逆に娘(有馬稲子)の結婚に反対する父親( 佐分利信 )の話です。描かれるのは、かつて日本の父親が培ってきた責任感と空威張りと痩せ我慢という父性です。小津が描いたのは、 娘を失う喪失感ではなく、 そうした伝統的な「父性」が若い世代にいともた易く突き崩される寂しさ、喪失感です。

 『晩春(1949)』、『彼岸花(1958)』、『秋刀魚の味(1962)』の三作の中に『東京物語(1953)』を置いてみると、小津の描いた喪失感の姿が見えそうです。
 『東京物語』は、子供たちに会いに尾道から上京する老夫婦の物語です。子供たちは老父母を歓待はしますが、仕事もありそれぞれの事情もあり、熱海の旅館に追いやってしまいます。唯一、父母を心を尽くしてもてなしたのは、戦死した次男の妻(原節子)でした。『東京物語』は、崩壊しつつある「家族」への惜別の物語です。
 『晩春』以降小津が原節子、笠智衆に仮託して描いてきたのは、これだったと思われます。
 
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監督:小津安二郎
出演:原節子 笠智衆 杉村春子 

タグ:BSシネマ
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