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ジョン・フォード アパッチ砦(1948米) [日記(2018)]

アパッチ砦 ニューマスター版 DVD  騎兵隊三部作『アパッチ砦』『黄色いリボン(1949)』『リオ・グランデの砦(1950)』の第一作、カスター中佐率いる第7騎兵連隊211名が全滅した「リトルビッグホーンの戦い」に想を得た西部劇です。
 カスターに相当するサースデイ大佐をヘンリー・フォンダが演じます。ジョン・フォードは、『怒りの葡萄』『荒野の決闘』『モホークの太鼓』でヘンリー・フォンダを起用していますから、名監督、名優のコンビでしょう。ジョン・フォードの西部劇といえばジョン・ウェインですから、ヘンリー・フォンダと衝突するアパッチ砦の古参大尉ヨークを演じます。

 『アパッチ砦』は、権威主義者で手柄を焦る指揮官が、部下の忠告を聞かず自滅してゆく物語です。そうした意味では、ヘンリー・フォンダの主演映画だと思うのですが、クレジットはジョン・ウェインがトップにきています。

 サースデイ大佐というのはなかなか陰影に富んだ人物です。南北戦争当時は将軍だったようで、大佐に降格され(給料は中佐並だとぼやきますが)アパッチ砦に左遷されます。本人は手柄を立てて返り咲きを狙っていますが、アパッチ砦は手柄の立てようのない平和な砦。登場からパッとしません。砦に赴任する少尉の出迎えはあったものの、連絡ミスで大佐の出迎えはなく、娘とふたり寂しい登場となります。大佐を待っていたのは、ヨークとコリングウッドのふたりの大尉。コリングウッド大尉は元同僚のようで、コ大尉に降格されアパッチ砦に埋もれているという境遇。かつての同僚が上司と部下という関係です。
 着任早々、サースデイ大佐は将校の服装に文句をつけ、規律の緩みを叱りつけます。持ちたくない上司の典型です。茫洋としたジョン・ウェイン、神経質で傲岸なヘンリー・フォンダの対比が映画の見ところのひとつ。
 新任のオローク少尉(ジョン・エイガー)とサースデイ大佐の娘フィラデルフィア(シャーリー・テンプル)の恋が映画に花を添えますが、折角ヘンリー・フォンダを持ってきたのですから、恋など無用で、サースデイ大佐vs.ヨークとコリングウッド大尉の人間ドラマにした方が面白かったと思います。当時の騎兵は妻子同伴で砦に住んでいたようで、兵士の妻や若い娘がドラマに参加することで、映画に膨らみが出るのは事実です。

 手柄を焦ったサースデイ大佐は、ヨーク大尉の忠告を聞かずアパッチを攻め大敗して戦死します。カスター将軍の第七騎兵隊です。

 映画は、白人の騎兵隊と先住民の対立の構図で、対立の要因等の描写ほとんどありません。先住民に殺された白人の死体が写され、先住民は絶対の悪です。騎兵隊もすべて白人で、南北戦争で奴隷解放がなされ自由黒人もいたはずですが、黒人はひとりも登場しません。ジョン・フォードの映画で黒人の騎兵隊員が登場するのは『バッファロー大隊(1960)』、先住民が人間として描かれ白人の加害描かれるのは『シャイアン(1964)』に至ってです。『怒りの葡萄』『タバコ・ロード』で虐げられた人々(但し白人)を暖かい視線で描いたジョン・フォードにしてもです。白人の先住民虐殺を描いた映画は、1970年の『ソルジャー・ブルー』まで待たなければなりません。
 面白いかというと1948年の映画ですからそれなりで、西部劇の定番というところです。個人的には、ジョン・ウェインよりヘンリー・フォンダの方が魅力的です。

監督:ジョン・フォード
出演:ジョン・ウェイン ヘンリー・フォンダ シャーリー・テンプル ジョン・エイガー

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サンフランシスコ人

現在、サンフランシスコの映画館では『アパッチ砦』を上映する事はありません...
by サンフランシスコ人 (2018-11-10 02:38) 

べっちゃん

古い映画は、DVDか動画配信ですね。便利になったものです。
by べっちゃん (2018-11-10 11:38) 

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