SSブログ

映画 ボヴァリー夫人とパン屋(2014仏) [日記 (2020)]

ボヴァリー夫人とパン屋 [DVD]  「ボヴァリー夫人」とは、言わずと知れたフローベールの不倫小説のヒロイン。話は、19世紀の「ボヴァリー夫人」ではなく、21世紀のボヴァリー夫人ジェマ・(ジェマ・アータートン)とパン屋マルタン(ファブリス・ルキーニ)の話。

 マルタンは出版社を退職して故郷のノルマンディーに帰り、父親の跡を継いでパン屋を営んでいます。愛読書が『ボヴァリー夫人』というちょっと変わった文学中年。そのマルタンの隣家に、英国人のボヴァリー夫妻が引っ越してきたことから話が始まります。
 マルタンは、「誰が引っ越してきたと思う、ボヴァリーだ、夫の名はシャルル(実はチャーリー)、ここは小説の舞台ノルマンディーだ!」と嬉しそうに家族に話します。マルタンの奥さんは、「なに若い女性に鼻の下伸ばしているの、たいして美人でもないし」と冷めた眼で夫を見ています。マルタンの下心は飼い犬が敏感に感じとり、何かに付けてジェマの飼い犬にチョッカイを出します。犬の登場する映画に駄作はありません(笑。

 店に来たジェマがパン香りを嗅ぐ姿を目にして、「10年振りに性欲を覚える」と言い彼女に熱をあげます。熱をあげると言っても、言い寄るわけではなく、小説のエマを隣のジェマに重ねて毎日遠くから眺めるだけ。これも一種のストーカーでしょうね。
 現実が小説に近づきます。ジェマは、司法試験のため(これも小説通り)村の古い館に滞在する青年エルヴェと知り合います。その様子を眺めるマルタンは、「私は何とも言えぬ喜びを感じた、裸で抱き合う二人が目に浮かぶ...」とジェマが「ボヴァリー夫人」のように不倫に走ることを期待している様です。
 ジェマがエルヴェの館を訪ね、この一部終止をマルタンは観察します。ジェマの館滞在が78分だったことで「ボヴァリー夫人」の不倫が始まった!と確信する始末。計っていたわけですから、マルタンは「病膏肓に入る」状態です。事実ジェマは不倫に走り、マルタンは小説のようにジェマが不倫と借金の果に自殺するのではないかと気をもみ、「ボヴァリー夫人」を真似てエルヴェの名で別れの手紙まで書きふたりの仲を裂きます。ルーアンの教会でジェマの幻影まで見たりと、相当重症です。
人生は芸術を模倣する、そのうち恋人を失い借金で首が回らなくなって自殺する」とジェマに忠告します。妄想もひとりで楽しんでいる間は罪がありませんが...。

 『ボヴァリー夫人』のパロディですからジェマが自殺しないと映画は終われません。自殺ではありませんがジェマは亡くなります。なんとマルタンの焼いたパンを喉に詰まらせて窒息死、というパロディらしい結末です。

 オチがあります。ジェマが亡くなり夫のチャーリーも去った隣に、新たな家族が引っ越しってきます。マルタンの息子によると、家族の名前はカレーニナ!。マルタンはさっそく隣家にアンナ・カレーニナを訪ねますが…。

 というパロディ映画が面白いかというと、これが面白い。マルタンの妄想が現実化してゆく可笑しさ、妄想するマルタンという人物の可笑しさです。フランスではヒットしたようです。『ボバリー夫人』のパロディ映画がヒットするとは、フランスという国は面白い国です。例えば漱石の『こころ』をバロディー映画にしても、日本人にウケるのかどうか。
 ジェマ・ボヴァリーはフランス人ではなくイギリス人、映画にはフランス女性とアメリカ男性のカップルも登場しますから、その辺りにも何かありそうです。

 ジェマ・アータートンとファブリス・ルキーニを見ているだけでも飽きません、たまにはこういう映画もいいです。

監督:アンヌ・フォンテーヌ
出演:ファブリス・ルキーニ、ジェマ・アータートン

タグ:映画
nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。