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百田尚樹 今こそ韓国に謝ろう(2017飛鳥新社) [日記 (2021)]

 『 今こそ、韓国に謝ろう ~そして、「さらば」と言おう~ 【文庫版】 日本国紀』が面白かったので引き続き百田センセイ。2017版と2019年の増補版があるようで、読んだのは前者。
 百田氏はまえがきで、韓国が日本に「謝罪せよ!」「賠償せよ!」という論調を見て、この国を「品性下劣な国であり、あさましい民族であるかと呆れて」しまうわけです。で日韓関係史を勉強して

日本が朝鮮および朝鮮人に対して行なった悪行を知り、愕然としたからです。その非道の数々は、私の想像を絶するようなものばかりでした。・・・私は今こそ、声を大にして言いたいと思います。「日本は韓国に謝らなければならない!」

 保守派の百田氏が謝るわけはないので、(タイトルからしてそうですが)これは逆説、イヤミ、ギャグです。
 第1章「踏みにじられた朝鮮半島」からギャグ爆発。日本は、1905年当時朝鮮全土で40数校しかなかった小学校を併合によって4300校まで増やし子供たちから自由を奪い勉学を強制します、人権蹂躙ではないか!。これによって朝鮮の文盲率は10%から90%まで改善されますが、学校教育の普及は、質の高い労働力を得るための日帝の策略であったというわけで、百田氏は「謝り」ます。

 以下、禿山に植林して自然を「破壊」し、鉄道を引き、橋を架けて朝鮮の景観を壊し、化学肥料を持ち込んで農業生産高を上げて人口を倍増し、24歳だった平均寿命を42歳まで引き上げた、等など日韓併合の罪を列挙します。おまけに、日本はダムを作り工場を作り18%だった工業生産高を43%まで高め、牧歌的な農業国を破壊したことを百センセイは「謝り」ます。呉善花、李栄薫、金完燮の著作を読むとこれらは正論ですが、ここまで書くとイヤミです。『日本国紀』で日本民族の美質を高らかに謳ったわけですから(出版は本書の方が先)、日本は、朝鮮を植民地化せず同化しようとしたとどうして胸を張って言えないのか?と思いますが、そんな生易しいことで氏の鬱憤は晴れないのでしょう。

 第3章「『七奪』の勘違い」あたりまではいいのですが、第4章「ウリジナルの不思議」からは百田センセイの素顔が顕になってきます。「ウリジナル」とは、ハングルの「ウリ(自分)」とオリジナルの合成語、日本文化の韓国起源説の話です(最近では、キムチの起源で中国とやりあっています)。剣道、茶道、ソメイヨシノなどは朝鮮起源であるとする奇説です(ちなみに孔子やイエスも韓国人)。笑って済ませばいい話ですが、この奇説を大学のセンセイが唱えるわけですから面白い。
 百田氏は現代韓国の剽窃文化を憂え、セウォル号沈没事件や百貨店の崩落事故を例に、韓国のアンモラルを非難します。そして、日本は日韓併合の35年で木を植え学校や工場は作ったがモラルを教えなかった、「育て方が悪かった」のだとします。これは、「日本人に文化を教えてやった」という韓国の上から目線と同じものです。

 国民の70%以上が日本製品の不買運動に参加し、慰安婦問題、いわゆる徴用工訴訟、教科書、靖国参拝問題と、事あるごとに日本は非難の的です。著者は、併合35年の間に韓国民族が日本人であることを(ローレンツのいう)「刷り込」まれ、未だこの刷り込みから脱却できていないのだと考えます。韓国人は自らを日本人と考え自国政府を非難しているのだと言うのですが、ちょっと無理があります。むしろ、夷狄で劣った日本に35年も支配されたという屈辱を晴らしたい、消し去りたいという意識の裏返しでしょう。その恨を歴史教科書で「刷り込」んで出来上がったのが今の反日だと考えた方がよさそうです。
 日本人もGHQのWIGPによって戦争犯罪と贖罪を刷り込まれ、自衛権まで放棄した憲法第九条を平和憲法として有難がっているわけですから、同じことです。

 本書に新しい知見は無く、既知の資料を使った「嫌韓本」に終わっているのは残念です。

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