SSブログ

毎日新聞『今週の本棚』(2) [日記(2005)]

 先週の「今週の本棚」は個人的には不作だったが、今週は読んでみようかなという書評がある。
・「『51C』家族を容れるハコの戦後と現在」平凡社(藤森照信 評)
いわゆる2DKや3LDKという間取りの成立と功罪を論じた本らしい。かの上野千鶴子先生も執筆者のひとりである。2DKや3LDKの元となった51Cとは、1951年に時の建設省が集合住宅の標準とした間取り51C型に拠るものらしい。DKとは、云わずとも「ダイニング(食事の場)とキッチン(料理の場)が一つに納まる」ことだが、「戦前の日本ではよほど狭いか貧しい家でもないかぎりありえなかった」。築25年の我家にもこのDKはしっかりある。毎朝毎晩このDKで調理と食事をしている。築4?年の実家には無い。立て替え前の戦前に建てた実家にもそんなものは無かった。調理と食事は別の部屋であった。書評ではDKの功罪については書かれていないが(子供部屋の功罪は云われて久しいが)、「上野千鶴子の攻めは徹底している。夫婦と子供が一緒に仲良く暮らす核家族は戦後社会の制度に過ぎず、現代日本の家族は解体に向かっており、解体後にふさわしい住宅を求めるべきで、その時、正面の敵となるのは戦後の核家族のハコとして作られたLDK住宅ある、と。」なんとも刺激的である。
・素数ゼミの謎 文藝春秋(池内 紀 評)
クマ蝉とアブラ蝉の話を書いたが、素数蝉がいるとは知らなかった。十数年に一度大発生を繰り返すセミがアメリカにいることは知っていたが、この十数年が13、17年の素数であることを初めて知った。なぜ素数なのか、書評では詳しく述べられていないが、氷河期と関係があるらしい。さらに地球温暖化の環境変化と素数ゼミの行く末(あるいは生物としての人類?)が解き明かされらしい。これも刺激的である。
・2週間前に、作者インタビューとして登場した佐野眞一の「阿片王」が今週書評として掲載された。書評としては、真ん中に「読んだ」を挟んでいることを割り引いても、インタビューの方が余程刺激的あった。ジャーナリストが、ノンフィクション作家、いわば同業にインタビューした「記事」と、大学の研究者が書いた「書評」の差かもしれない。読者を書店に走らす力は、ジャーナリストにあった。

「51C」家族を容れるハコの戦後と現在

「51C」家族を容れるハコの戦後と現在

  • 作者: 山本 理顕, 鈴木 成文, 上野 千鶴子, 布野 修司, 五十嵐 太郎, 山本 喜美恵
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2004/10
  • メディア: 単行本