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映画 告発のとき(2007米) [日記(2013)]

告発のとき [DVD]  原題は“In the Valley of Elah”
 豪華キャスト、スタッフです。監督が『ミリオンダラー・ベイビー(脚本・製作)』『クラッシュ』のポール・ハギス、出演が『ノーカントリー』のトミー・リー・ジョーンズ、『モンスター』のシャーリーズ・セロン、『デッドマン・ウォーキング』のスーザン・サランドン。アカデミー賞カルテットですね。

 ポール・ハギスですから、話としては相当地味で、「イラク戦争」が背景となっており『クラッシュ』同様アメリカ人以外にはピンと来ません。

 軍を退役したハンク(トミー・リー・ジョーンズ)の元に、イラク戦争から帰国した息子のマイクが無断で隊からは離れ行方不明だという連絡が入ります。ハンク自身が兵士であったことに誇りを持ち、息子ふたりも父親を見習って兵士となったという軍人一家。ハンクは軍曹で退役し、マイクも一兵士ですから、ウエスト・ポイントがどうのという軍人一家ではありません。
 妻のジョアン(スーザン・サランドン)は、マイクを軍隊に入れたからこんなことになるんだとハンクを非難し、マイクが軍に入りたいと言ったとき俺は反対しなかっただけだと応じます。長男は、10年前に訓練中亡くなっているという背景があり、次男もまたという母親の嘆きを背負ってハンクは息子を探す旅に出ます。
 ハンク自身元軍警察官(MP)だったという背景で、父親による息子探し(捜査)の物語がスタートします。

 実にアッサリと、マイクは死体で見つかります。四十数箇所をナイフで刺され、バラバラにされてガソリンで焼かれ、死体は野犬に食われているというおぞましい姿で発見されます。死体発見場所が軍の所有地であったことで、事件は軍警察の管轄となります。
 ハンクの調査によって、マイクは道路脇で殺され軍の所有地に運ばれて焼かれたことが判明し、事件は警察の手に戻り、美人の刑事エミリー・サンダース(シャーリーズ・セロン)が事件を担当します。べつに、シャーリーズ・セロンが登場する必然はないのですが、原題のエラノの谷で勇者ダビデが戦う話をエミリーの息子に語って聞かせるために登場させたのでしょうか。美女とうらぶれた初老の元兵士のコンビは、ストーリーに奥行きを与えているといえばいえます。 
 
 元MPハンクの息子探しは、息子が誰に殺されたのか何故殺されたのかという殺人事件の「捜査」へと変わったわけです。この捜査の過程で、ハンクの知らないもうひとりの息子の姿が現れ、アメリカが抱えるイラク戦争という病巣が立ち現れてきます。ハンク・ディアフィールドという祖国を愛する初老の退役軍曹が、アメリカのもうひとつの実相と向かい合うことになります。
 邦題の「告発」から、軍の陰謀めいたもの連想しますが、ハンクが出会ったのは、古くはベトナム症候群、湾岸戦争、アフガニスタン帰還兵の患ったストレス障害(PTSD)、イラク・シンドロームです。

 冒頭で、誤って逆さまに掲揚された星条旗を正すシーンがあります。ハンクによると、この逆さまの星条旗は「救難信号」を意味するそうです。ラストシーンで、ハンクは正常に上がっている星条旗を上下逆さまに掲揚します。これはマイクのSOSであり、ハンクのSOS、アメリカ国家のSOSだということなのでしょう。ポール・ハギス好みのテーマです。

 人種の坩堝アメリカを描いた『クラッシュ』は、日本人にはわかりにくい映画でした。『告発のとき』もイラク戦争が背景にあり、原題の“Valley of Elah”は旧約聖書からきているらしく、これもわたしにはもうひとつピンと来ない映画でした。群像劇の『クラッシュ』に比べると、『告発のとき』は息子を失った初老の男の執念と悲嘆を、トミー・リー・ジョーンズがじっくり演じており、こちらの方が見応えがありました。
 原題のエラノの谷の逸話は、弱者が強者を倒すたとえ話にようです。強者アメリカと弱者イラクということなんでしょうか。それとも、エラの谷で巨人を倒して王となったダビデと、世界の王アメリカをダブらせているのか、よく分かりません。
 お薦めかというとそうでもないです。 この映画も、『クラッシュ』のようにアメリカという国の抱える問題を扱っていますから、日本人には分からない部分が多い映画です。但し、トミー・リー・ジョーンズはすばらしい。

監督:ポール・ハギス
出演:トミー・リー・ジョーンズ シャーリーズ・セロン スーザン・サランドン

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