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映画 リンカーン(2012米) [日記(2014)]

リンカーン [DVD]
 リンカーンについては、丸太小屋で生まれて大統領となり、奴隷解放宣言、ゲティスバーグの演説(有名な「人民の人民による・・・」)、劇場での暗殺という程度の知識しかありません。いずれも、小学生の時に読んだ世界偉人伝「リンカーン」ですから、我ながら恥ずかしい限りです。
 エピソードの多いリンカーンの一生のなかで、アメリカ合衆国憲法修正第13条(奴隷制廃止)の批准(1865年)に焦点を当てた映画です。従って、かなり地味な映画です。

【アメリカ合衆国憲法修正第13条】
 奴隷制度廃止を、合衆国憲法に追加する修正条項です。奴隷制度は、1862年の大統領の廃止宣言によって多くの州では違法となっていますが、合法の州もあり、合衆国としては徹底を欠いています。リンカーンは、これを憲法に明記することによって、合衆国として奴隷廃止を完全なかたちにすることを考えます。
 修正条項の批准は、上院、下院それぞれで、出席議員の2/3の賛成が必要とされます。共和党(リンカーンは共和党)が多数派を占める上院では批准されますが、民主党が多数派の下院では批准が危ぶまれ、リンカーンは、多数派工作に乗り出します。保守派の共和党が修正条項賛成で、民主党が反対というのも面白いです。

 1865年、南北戦争が始まって4年目に入り、人々は戦争に倦んでいます。奴隷廃止より戦争終結が先何ではないの?とか、いろいろ声が聞こえてきます(私もそう思う・・・笑)。ところが、リンカーンは修正条項が先だと言うのです。先に南北戦争を終結させると、勢いづいた民主党の反対で修正条項は通らない。または、南部諸州が議会に参加することで、賛成票が確保できない、ということなんでしょうか。奴隷制度が南北戦争の原因のひとつだという事は知っていますが、北軍が、従ってリンカーンが勝てば、修正条項など簡単に通りそうなものですが、そうでもないというのが複雑なところです。奴隷制度に対する利害が錯綜していること、また奴隷解放後のビジョンが描けていない、奴隷解放後黒人に参政権まで与えるのか等など、下院の演説を聞いているとこれはこれで面白いです。

 リンカーンは、ポストを武器に、賛成に回りそうな民主党義委員の切り崩しにかかります。リンカーンが多数派工作?ですが、これが政治の現実なんでしょう。
 もうひとつ、南部連合の副大統領等3人が、停戦交渉にワシントンにやってくることになります。彼らがやって来るのが明らかになると、南北戦争終結で修正条項が飛んでしまいます。リンカーンは、彼らの来訪を伏せ、ワシントンに入れません。大統領を2期も務めるリンカーンですから、その辺りはソツがありません。

【タデウス・スティーブンス】
 奴隷解放の共和党急進派。ここを読むと、なかなかすごい人のようです。これを宇宙人トミー・リー・ジョーンズが演じていますが、ソックリ。黒人に参政権を与えよという筋金入りの奴隷解放論者です。修正条項を通すために、人間は平等であるという従来の主張を、法のもとの平等と言い換える苦渋の選択をしますが、トミー・リー・ジョーンズ渾身の演技です。
 修正条項が批准された晩、原本を借りて家の黒人メイドに見せます。スティーブンスとメイドは、一緒にベットに入って修正条項を読むのですが、あれれ →スティーブンスは独身でしたがこのメイドと事実婚だったようです。私生活でも人種差別を撤廃していたことになります。

【メアリー・トッド・リンカーン】
 「悪妻」と検索かけると、ソクラテス、トルストイとともにリンカーンの名前が出てきます(笑。知りませんでした。映画でも、息子が兵士になると聞いてヒステリーを起こしたり、一時精神病院に入っていたとなんとか言っていますから、どうも情緒不安定な女性のようです。パーティーで、夫のリンカーンを差しおいて、訪問客に延々と皮肉を言ったり、ファーストレディーという雰囲気ではありません。リンカーンがはこの悪妻に優しくしますから、なおのこと悪妻が際立ちます。サリー・フィールドという女優さんが演じていますが、こちらもソックリです。彼の国では、悪妻ぶりは有名な話でしょうから、一見の価値があるのでしょう。
 
 南北戦争とアメリカ合衆国憲法修正第13条をざっと予習してから見るとよく分かるかと思います。ダニエル・デイ=ルイスはこの映画で3度めのオスカー主演男優賞に輝いていますが、リンカーンになりきっています。その辺りもみどころでしょうか。でお薦めかというと、地味な映画ですが、修正条項の批准とリンカーンの私生活というところに照準を合わせると面白いでしょう。
 『リンカーン/秘密の書』とうのもあるのですが、これはリンカーンvs.吸血鬼というキワモノです。

監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:ダニエル・デイ=ルイス サリー・フィールド デヴィッド・ストラザーン トミー・リー・ジョーンズ

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