映画 グローリー(1987米) BSシネマ [日記(2014)]
この黒人部隊の第54連隊を率いたロバート・グールド・ショーと黒人兵士の、偏見と差別との闘いが映画の主題です。1987年の映画ですから、ケレン味もなくアメリカと人間に対する賛歌で出来上がっています(という意味では物足りない)。
こういう時系列になると思います。
1861:南北戦争勃発1862:リンカーン奴隷解放宣言、第54連隊創設1865:合衆国憲法修正第13条の批准1865:南北戦争終結1866:第10騎馬連隊創設
ボストンのお坊ちゃんロバート(マシュー・ブロデリック)に、合衆国史上初となる黒人部隊を率いてみないかという話が舞い込みます。ロバートは、士官学校を出た正規の将校ではなく、どうも家柄と父親が奴隷解放論者であったことに起因する誘いのようで、家柄で大佐ですから呆れます。
黒人は、当時の合衆国人口の14%を占め400万人ほど。そのうち奴隷から解放された自由黒人は10%ですから、南北戦争を戦う黒人だけの部隊ができても不思議ではありません。54連隊の黒人は、白人以上の教養を持つトーマス(アンドレ・ブラウアー)、脱走奴隷のトリップ(デンゼル・ワシントン)、墓掘り人のジョン(モーガン・フリーマン)と種々様々。13ドルの給与と食事と宿に惹かれて入隊した者が殆どいった様子です。
こういう部隊には鬼軍曹というのが通り相場で、今回も登場して黒人たちに規律を教え込みます。銃もなくいつまでたっても入隊したままの平服で行進の練習ばかりしています。どうも、初の黒人部隊ということで、政府が武器軍服の支給を後回しにしたようです。おまけに、13ドルであった給与が10ドルに値切られる始末。黒人兵は受け取りを拒否し、頭にきたロバートは、将軍を脅しあげて13ドルと銃弾薬と軍服を奪い取ります。
格好はついたものの、54連隊は明けても暮れても後方支援の労役ばかりやらされ、兵士とは名ばかり労働者。これにしびれをきらしたロバートは、またも将軍を脅すように掛けあって彼らの働き場所=戦場を得ます。見ている方は、そんなに死に急ぐ必要はないんじゃないの、と思うのですが、愛国心と54連隊のグローリーを優先するロバートは聞く耳を持ちません、別に私が言ったわけではありません(笑。しかしですね、死ぬのは兵士で、どうせ将校のあんたは生き残る訳だから、あんたの功名心?と疑ってしまいます。
この戦場というのが、難攻不落?のワグナー砦(チャールストン)の攻略。砦の立地上、1部隊ずつしか攻撃できず多大の犠牲が覚悟される作戦です。砲弾が雨あられと降る中、54連隊は犠牲を払いながら砦に攻め入り、ロバートもトリップも戦死します。エッ負けたの?。北軍は参戦した5,000名のうち1,515名の損失を出すという高い損失率になったそうです。この戦死者の何人が黒人兵であったかは書かれていませんが、映画の流れから言うと、「損失率」は黒人の方が高かったのではなかろうかと思います。しかしコレ、脚本を変えれば、危険な作戦に史上初の黒人部隊を盾に使った米陸軍の暗部を描く、という映画にもなりますね。
で、私の予想に反してロバートは戦死します。ロバートの死体の横にトリップの死体がころがり、今日の黒人の地位は彼らの犠牲の上に成り立っているのだと、感涙の涙を流すわけです。
この映画を見ていて思ったのですが、150年前とは言えアメリカは内戦を経験しているのですね。300万人以上の兵士が5年近く戦い80万人の死者を出したこの内戦が、人々にどんな傷跡を残したのだろう、たぶんそれは「グローリー」では無かったはずです。
wikipediaの「アメリカ独立戦」に面白い記述を見つけました。
アフリカ系アメリカ人は解放奴隷も奴隷のままの者も米英両軍ともに従軍した。イギリス軍は積極的に愛国者を主人に持つ奴隷を徴募した。大陸軍側においても、1776年1月、人員不足解消のためジョージ・ワシントンは奴隷徴募の禁止令を撤廃した。ロードアイランドとマサチューセッツでは小さいながらも全て黒人の部隊が作られた。またフランス軍と共にハイチから全て黒人の部隊が参戦した。少なくとも5,000名の黒人が革命軍側で、2万人以上がイギリス軍に従軍した。
黒人部隊というのは、第54連隊が最初ではなく、独立戦争が最初のようです。マサチューセッツは、第54連隊が組織される風土を持っていたことになります。
でお薦めかというと、デンゼル・ワシントンも頑張ってくれたのですが、真っ当すぎて面白くありません。
監督:エドワード・ズウィック
出演:マシュー・ブロデリック デンゼル・ワシントン モーガン・フリーマン
タグ:BSシネマ
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