檀一雄 檀流クッキング [日記(2015)]
檀一雄は、代表作『家宅の人』でも料理の話がよく出てきます。パリやマドリッドでも市場に買い出しに出掛け、料理を作るというマメさです。なんでも10歳のころ母親が出奔し、父親に代わって幼い兄弟の面倒を見てきたという、50年の年季の入った主夫だそうです。
そんな檀一雄が、昭和44から毎週1回、94回にわたって新聞に連載した料理エッセイをまとめたものが、本書と云うわけです。どれも旨そうで、ひとつ作ってみようかと思わせる書き振りです。但し、塩を小さじ一杯とか細かいレシピはありません。調味料は自分の舌で決めろということの様で、これらの料理を再現するには、かなりの料理のセンスが要りそうです。
「ローストビーフ」の項にこうした表現があります。
この焦げ野菜の中にトマト・ジュースとかトマト・ピューレとか、パセリの茎だとか、月桂樹の葉だとか、グローブだとか、セージだとか、香草の類を加え、塩、胡椒、醤油、ウースター・
ソース等を自分の好み通りに、加えたりまぜたりして、煮詰めてゆくのである。するとすばらしいグレービー・ソースが出来上がる。醤油の量や、ソースの量など、勝手放題にやってゆくうちに、自分の家のグレービー・ソースの味が、決まってくるのである。
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