SSブログ

映画 スノーピアサー(2013韓米) [日記(2017)]

スノーピアサー [DVD]  間違いなくB級SFです。B級ですが設定が面白いです。温暖化した地球を冷やすプロジェクトが失敗し、寒冷化した地球では人類が絶滅し、生き残ったのは無限軌道を走り続ける列車の乗客だけという設定です。生産と消費が循環する閉鎖生態系ともいうべき列車の中で生きる、地球最後の人類の物語です。人間が集団で暮らす社会ですから、そこには支配被支配の関係が生まれ階層が生まれます。列車を牽引する先頭車両に集団のトップが君臨し、最後尾の車両へと順番に階層が下がってゆくヒエラルキーの構造です。支配の手段は暴力=軍です。つまり、列車は社会の縮図であるというわけです。

 最後尾車両のしたがって最下層の子供が軍に拉致されたことで、反乱が起きます。反乱を指導するのが若い指導者カーティス(クリス・エヴァンス)とかつてのリーダー、ギリアム(ジョン・ハート)。反乱軍は、軍と戦い先頭車両を目指して一両づつ車両を突破してゆきます。この進軍に協力してシステムを破るナムグン(ソン・ガンホ『グエムル 漢江の怪物』)、立ちはだかるのがメイソン(ティルダ・スウィントン『オルランド』)。B級映画にしては有名俳優が脇を固めています。『リトルダンサー』のジェイミー・ベル、ラストではエド・ハリスまで登場します。度の強い眼鏡をかけたオールドミスのティルダ・スウィントンはまず彼女とは分かりません。

 カーティス達が車両を進むことで、この『スノーピアサー』の世界が次第に明らかとなります。食品工場、水のリサイクル場、農場、魚の養殖場、学校があり、先頭車両に近づくにつれて支配階級の住むコンパートメントや豪華な食堂が現れます。列車の中に社会の縮図が存在することとなります。カーティス達の進攻は、軍に阻まれ激しい戦闘が繰り広げられ双方多くの死者が出ます。
 先頭車両にたどり着いたカーティスは、列車の最高権力者ウィルフォード(エド・ハリス)と対峙することになり、ウィルフォードによって列車の成り立ちが明かされます。先頭車両に君臨するウィルフォードと、最後尾車両のリーダー・ギリアムは裏で繋がっているというもの。列車の人口が増え生態系バランスが崩れだすと、両者合意のうえ革命と戦闘が起こって人口が減りバランスが回復するという仕組みだったのです。何処かで聞いたような話。
 老齢のウィルフォードは、このシステムを維持するために先頭車両のリーダーの地位をカーティスに譲ると言います。カーティスは、支配被支配の階級構造の打破を狙って反乱を起こしたわけです。リーダーの地位につけば乗客の淘汰を行わねばならず、行わないと生態系バランスが崩れて列車社会は崩壊します。また、老朽化した機関の歯車の代わりに、最後尾列車から誘拐した子供を使っていることが明かされます。機械の歯車を生産するといういうことが、最後尾列車の人間の存在意義だったということになります。カーティスは、人間の尊厳と自由と平等を掲げて革命を起こしたわけです。カーティスがウィルフォードに取って代われば、列車のシステムを維持するために、自らが淘汰(住民の抹殺)と歯車として子供を使役しなければなりません。この絶対矛盾をどう解決するのか? 、映画のオチをどうつけるのか?。
 良くも悪くも、まことに映画的解決方法が選択されます。すなわちか、カタストロフィ。テーマの答は巧妙に回避されますが、映画にそこまで求めるのは無理でしょう(笑。あまり評判の良くない映画ですが、個人的にはお薦めのSFです。

監督:ポン・ジュノ
出演:クリス・エヴァンス ソン・ガンホ ジェイミー・ベル ジョン・ハート ティルダ・スウィントン エド・ハリス

nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。