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映画 黄金のアデーレ 名画の帰還(2015英米) [日記(2017)]

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 ナチスの略奪美術品、クリムトの「黄金のアデーレ」を取り戻すアメリカ婦人と弁護士の話です。実話だそうです。ナチスが「退廃芸術」の名のもとに押収した美術品やユダヤ人から奪った膨大な数の美術品は、未だに行方不明だそうです。2013年にもドイツのアパートからこれらの略奪美術品が大量に発見されています。この略奪美術品は、略奪を証明すれば元の持ち主に返還される、ということが映画の背景です。

 1941年、ナチスのユダヤ人迫害は激しさ増し、オーストリアの裕福なユダヤ人家庭に生まれたマリア(ヘレン・ミレン)は、両親を残し夫と供にアメリカに逃れます。マリアの家の居間に飾られていた、叔母を描いたクリムトの「黄金のアレーデ」もナチスに没収されます。
 1998年、マリアは「黄金のアレーデ」が美術館にあることを知り、これを取り戻す為に弁護士のランディ(ライアン・レイノルズ)を雇います。二人は、「黄金のアレーデ」を取り戻す訴訟を起こします。取り戻せばその価値は何と1億ドル。
 40数年ぶりにオーストリアを訪れたマリアには、アデーレと過ごした幼い日々やナチスによる迫害、追っ手を振りきっての亡命など次々に思い出がよみがえってきます。絵画を取り戻すストーリーとマリアの回想が重ねられ、第三帝国の悪夢が現代と繋がっていることが示されます。
 絵画の奪還はすんなりとは行きません。オーストリア政府は、「オーストリアのモナリザ」と呼ばれる絵画の返還を渋り、美術館へ寄贈するというアレーデの遺言状を盾にマリアの請求を却下します。マリアは、かつて一族を迫害し追放に荷担したオーストリアが、今また自分の行く手を遮ることに絶望し、「黄金のアデーレ」を諦め帰国してしまいます。
 1万ドルに動かされて事件を引き受けたランディは、弁護士事務所を辞めてまで絵画奪還にのめり込みます。ランディもまた、ナチスの迫害を逃れてアメリカに亡命した作曲家アルノルト・シェーンベルクを祖父つオーストリア人であり、祖父の血が彼を突き動かしたと云うわけです。

 アメリカに戻り調査を進めると、絵の領収書から絵の所有権はアデーレの夫にあり、アデーレの遺言は無効だと云うことが明らかになります。アデーレは1925年に亡くなり、彼女の夫は1945年に死亡し、夫妻に子供がいなかったため絵の所有権は姪のマリアにあることが明らかになります。オーストリアに行かずともアメリカ国内でも訴訟が可能であることが分かり、マリアとランディはオーストリア政府を相手に略奪絵画の返還訴訟を起こします。
 マリアは訴訟に勝ち、「黄金のアデーレ」は、現在NYの画廊に飾られています。
 この映画の面白さは、絵を取り戻す過程よりも、故国を追われたユダヤ人マリアのアンヴィバレントな郷愁と、第三帝国の悪夢が現代と繋がっていることだと思われます。

  『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』のヒロイン、エリザベス・マクガヴァンが裁判官としてチラリと登場します(監督の奥さんらしい)。優雅なアデーレと『パンドラム』で派手なアクションを演じた女優が同一人物とはとても思えません。ヘレン・ミレンは、これはもう大女優の一言につきます。『クィーン』のヘレン・ミレンよりも、個人的には『カレンダー・ガールズ』のヘレン・ミレンです。
 地味な映画ですがお薦めです。

監督:サイモン・カーティス
出演:ヘレン・ミレン ライアン・レイノルズ

黄金のアデーレ 名画の帰還 [DVD]

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