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映画 ハクソー・リッジ(2016米) [日記(2017)]

「ハクソー・リッジ」スタンダードエディション [DVD] 太平洋戦争の沖縄戦で、75人もの命を救った衛生兵デズモンドの話です。デズモンドは良心的兵役拒否者であり、良心的兵役拒否者も兵士として活躍の場を与え、功績に対して勲章まで授与するというアメリカの度量の広さをPRする映画です。監督は、『マッドマックス』『リーサルウェポン』のメル・ギブソン。メル・ギブソンは、『ブレイブハート』でアカデミー賞を獲っていますから、実力は証明済み。『パッション』では会話はアラム語、『アポカリプト』では全編マヤ語という凝りようですから、そのリアリズムは期待できます。

 日本の真珠湾奇襲に触発されて、デズモンド(アンドリュー・ガーフィールド)は軍に志願します。入隊すると、鬼軍曹にシゴかれる厳しい新兵訓練があります。『フルメタル・ジャケット』や『愛と青春の旅立ち』で描かれるアレです。 この訓練で、デズモンドは射撃訓練を拒否します。つまり、信仰上人殺しはできないというわけです。戦争=人殺しですから、兵士に志願してそれはない。当然、指導軍曹の鉄拳がとび、同僚にも袋叩きにあいますが、へこたれません。軍は除隊を勧めますが、看護兵として国に尽くしたいという信念を捨ません。
命令不服従ということでついに軍法会議。デズモンドの父親(ヒューゴ・ウィーヴィング)は軍の上層部に手を回し、良心的兵役拒否は、アメリカ憲法で保証された国民の権利だという見解を引き出します。ホンマか?と検索してみたのですが、憲法云々は見つかりませんが、宗教的兵役拒否はありWWⅡで1万人以上がこれを認められているようです。デズモンドは看護兵となって沖縄戦線に投入されます。

 タイトルの"ハクソーリッジ”とは、首里城に近い前田高地のことで、この地をめぐって日米両軍の激しい争奪戦が繰り広げられたようです。ハクソーリッジでの看護兵デズモンドの"戦い"が、映画のハイライトで、
ブレイブハート』と『プライベート・ライアン』以来、最も暴虐で血まみれた殺戮(Wikipedia)
 のシーンが連続です。血しぶきが飛び手足がもがれ、それ以上という惨劇が繰り広げられます。普段は気にせずに見ているのですが、何しろ沖縄戦ですからバタバタ倒されるのは同胞で、さすがにいい気持ちはしません。おそらく、日本公開版とグローバル版があるのでしょう。『パッション』で、イエスの拷問と磔刑をリアルに描いたメル・ギブソンですから、迫力は十分。戦闘シーンはこの映画の目玉です。『プライベート・ライアン』のオマハビーチの戦闘シーンには度肝を抜かれました。あれから9年、残酷なシーンに慣れた身にはそれほどとも思われません

 デズモンドは、米軍が退却した後もひとり戦場に残って未だ生きている兵士を助けます。戦場は切り立った崖の上、デズモンドは負傷兵を崖の際まで運び、ロープを使って崖下へと降ろす作業を繰り返します。その数、日本兵も含めて75人。
 この映画で感心するのは、デズモンドの献身的な救助活動もさることながら、良心的兵役拒否が認められるアメリカという国の懐の深さです。当時の日本であれば間違いなく営倉送り、あるいは内務班のリンチで殺されていたでしょう。生きて俘囚の辱めを受けず、がまかり通る国ですから。

 映画としてはそれなりに纏まっていますが、登場人物が陰影に乏しく、従ってストーリーも
良心的兵役拒否者デズモンドの英雄的行為の賛美以外にこれと言ってありません。戦闘シーンだけではなく、『プライベート・ライアン』と比べるもうひとつが欲しかった、主題は「良心的兵役拒否者」なのですから。と文句を言いつつそれなりに楽しめました。最近観た戦争映画では『ヒューリー』が出色でした。

監督:メル・ギブソン
出演: アンドリュー・ガーフィールド サム・ワーシントン  ヴィンス・ヴォーン ヒューゴ・ウィーヴィング  テリーサ・パーマー

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