SSブログ

お手軽簡単 読書感想文 佐藤 剛 上を向いて歩こう [日記(2018)]

上を向いて歩こう: 奇跡の歌をめぐるノンフィクション (小学館文庫) 上を向いて歩こう 奇跡の歌をめぐるノンフィクション  昨日の新聞に、夏休みの宿題を代行する業者の話が出ていました。文科省がオークションサイトに自粛を要請したとか。小説の読書感想文が「小中学生向け オリジナル文章」(600円)だそうです。いろんなサービスがあるものです。当blogはこれを無料で提供しているわけではなく、良書を紹介しサンプルを提供することで、中高生に読書の面白さを知ってほしいと考えているわけです(少しクルシイ?)。感想文の書き方もありますから参考にして下さい(要検索)。というわけで、もう一遍読書感想文を追加。佐藤 剛の『上を向いて歩こう』です。諸君が(騎士団長風に、分かる人には分かる)生まれるズッと昔の話ですが、歌の話で面白いですから是非読んでみて下さい。kindle版で756円、私の街の図書館にもありました。

佐藤 剛 上を向いて歩こう

  「上を向いて歩こう」(作詞:永六輔、作曲:中村八大)とは坂本 九のヒット曲です。1961年に誕生したこの歌が、1963年に「SUKIYAKI」と名前を変えて全米チャートで一位を獲得します。本書は、日本語で歌った日本の歌が米国のヒットチャートでトップに立つという空前絶後の謎を解くドキュメントです。 

 敗戦後の日本のポピュラー音楽は、ジャズ →ロカビリー →米ポップスのカバー →和製ポップスと変遷をたどったようです。1960年代のTVの普及により、「夢であいましょう」「シャボン玉ホリデー」などの音楽バラエティー番組が生まれます。著作権が厳しくなり、アメリカのポップスに訳詞を付けて自由に歌えなくなります。こうした番組の需要を満たすために日本のポップスは生まれます。

 「上を向いて歩こう」は、構成を永六輔、音楽を中村八大が担当するNHKの「夢であいましょう」から誕生します。中村八大と永六輔のコンビ(六八コンビ)の歌は、 「上を向いて歩こう」以前にも、ロカビリー映画の挿入歌から生まれたヒット曲「黒い花びら」、ちあきなおみのカバーでヒットした「黄昏のビギン」等(いずれも1959年)があります。「黄昏のビギン」はインスタントコーヒーのCMで流れたことがあります。 

 「上を向いて歩こう」は、曲ができてそれに永が40行の長い詞を書き、中村がその詞のエッセンスだけを抜き出して出来上がったそうです。作曲家、作詞家という従来の分業ではなく、作詞家、作曲家それぞれの個性と感性の相乗効果によって生み出されたのです。これは、後のビートルズの曲がレノン&マッカートニーであり、ローリング・ストーンズの曲がジャガー&リチャーズであることと同じであり、今では当たり前のことが、当時の日本の歌作りにおいては革新的な手法だったと言います。 

 著者によると、1961年発表の「上を向いて歩こう」の詞は時代の空気を写したものだそうです。1960年の安保闘争後に唱われた西田佐知子の「アカシアの雨がやむとき」と同様の、時代を写しているといいます。中村八大のメロディーに乗る永六輔の詞には、失ったものを哀惜せずにはおかないなにものかがあります。その”鎮魂歌”を、喪失の向こうにある希望を託した歌として坂本九が歌った、これがヒットの秘密ではないかと著者は分析します。

 坂本九はロカビリーの歌手として出発しました。「上を向いて歩こう」を坂本九が歌うと、”ウヘェホムゥフヒテ、アァルコオゥオゥオゥオゥ”となり、8ビートのロックとなるというのです。リズムに乗りにくい日本語でリズムを刻む、これこそがアメリカでヒットした理由だったのです。「SUKIYAKI」は、なんと日本語で歌われアメリカで(世界で)支持されたのです。坂本九は先駆的なロックンローラーだということになります。

 これで1200字弱ですから原稿用紙3枚です。

タグ:読書
nice!(6)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 6

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。