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佐藤友哉 デンデラ(2009新潮社) [日記(2019)]

デンデラ (新潮文庫)  映画も面白かったのですが、いくつか疑問があり、さらなる神話世界があるのではないかと原作を読んでみました。概略は映画感想で。

【姥捨て】
 「姥捨て」というものが実際にあったものなのかどうか?ですが、「間引き」があり、現代にも老人ホームがあるわけですから、飢饉のあった時代に「棄老」が風習としてあったのかも知れません。無かったにしても、共同の幻想として「棄老」は十分成立します。本書でも、「お山参り」は極楽浄土は直結し、棄老が宗教と結び付き、棄てる側は良心の呵責を、棄てられる側は殺される恐怖を緩和する仕組みです。

 汗水流して働き、子育てし、老いたからといって口減らしのために殺されてはたまったものではありませ。死にたくない老人は村に戻りますが結局村人虐殺されますから、生き延びた老人がデンデラのような共同体を作るという妄想も成り立ちます。生き延びた老人が自らを追い出した村に恨みを抱き、復讐を考えても不思議ではありません。

 姥捨で生き延びた老婆が捨てられた老婆を助け、30年かけて住民50人のデンデラを作ります。面白いのは、デンデラの住人は全員女性。70歳になれば男も棄てられますが、男性は見殺しにされデンデラは女性しか助けません。デンデラの住人は、神に仕え鬼道をよくしたシャーマン・卑弥呼の末裔、女「性」の方が相応しいようです。

【原始共産制】
 デンデラにリーダーは存在しますが、住民に上下関係はなく、乏しい食料も平等に分配され、病人は全体で介護するという共同体です。狩猟採集社会ですから富の集積がなく、従って貧富の差は生まれず、搾取も階級もない原始共産社会という設定です。
 リーダーの老婆が主導する「復讐」よりも、食料の確保など共同体の繁栄を優先する住人も存在します。デンデラの面白いところは、自分達を捨てたムラ(農耕社会)と対極の共同体が想定され、反対意見も包含し許容することです。

【崩壊】
 共同体の崩壊は思わぬところから現れます。餓えた子連れの羆(赤背)がデンデラを襲い、老婆を喰い殺し備蓄した食料は失われます。映画で羆は着ぐるみだったので迫力不足でしたが、原作では血しぶきが飛ぶ凄惨さ。羆とそれに立ち向かう老婆という落差がこの小説の肝となります。もっとも、この逞しさに引きずられて主人公たちが老婆であることを忘れてしまいます。老婆たちは羆(小熊)を倒し、解体し肉を喰らっての大宴会は鬼気せまるもにがあります。
 もうひとつデンデラを襲う脅威が疫病。疫病が流行り、デンデラは感染者を殺すことで崩壊を食い止めた過去があります。殺されることを恐れた感染者は、食料貯蔵小屋に籠城。食料を奪われた住人は扉を破って突入し、感染者は小屋に火を放ち自らも火だるまとなって襲撃者を焼き殺すという反撃に出ます。

 羆と疫病で50人のデンデラの住人は19人となり、デンデラの創設者でリーダーが死に、デンデラの権力構造は武闘派から穏健派に変わり、新しいリーダーが登場します。
 おさまった筈の疫病が再びデンデラを襲い、羆が現れ、住民はわずか6人となり、食料も底をついデンデラは崩壊寸前。疫病は、実はジャガイモを食べることによって起こる食中毒であり、住民のひとりが我が身とともにデンデラを葬ろうとする殺人だったことが明らかになります。座して死を待つ以外にない老婆たちは、羆を誘導してムラを襲わせ、ムラと羆の両方を一挙に葬ろうとします。ここで物語は終了。

 村への襲撃があるのかと期待したのですが、あっけない幕切れ。虐げられた者が連帯して組織を作り、革命を志すも組織は崩壊するという寓話です。

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コメント 3

ryang

うぅーん
あらすじを読んでいるだけでドキドキするお話ですね...
by ryang (2019-01-03 13:37) 

ネオ・アッキー

明けましておめでとう御座います。
昨年中は大変お世話になりました。
本年も何卒宜しくお願い致します。
by ネオ・アッキー (2019-01-03 16:08) 

べっちゃん

ryangさん→姥捨の老婆たちが生きていたら、という発想は面白いです。
ネオ・アッキーさん→ご訪問頂きありがとうございます。今年もよろしくお願いします。
by べっちゃん (2019-01-04 08:13) 

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