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イングマール・ベルイマン 魔術師(1958スェーデン) [日記 (2020)]

魔術師 久々のイングマール・ベルイマン。

プロローグ
 魔術を売り物に北欧を旅するヴォーグレル一座の物語。一座は、座長のヴォーグレル博士(マックス・フォン・シドー)、彼の祖母(魔女?)、弟子のアマン(イングリッド・チューリン)、助手と、馭者の5人。
 行く先々で派手な広告を打ったため、とある町で警察に引っ立てられます。待ち構えるのは、警察署長、役人、医者の3人。3人は、魔術師ヴォーグレルのインチキを暴き座興にしようというわけです。怪しげな旅の一座 vs.町の名士3人の対決となります。

第1幕
 引っ立てられた館でヴォーグレル一座と名士3人の化けの皮が剥がれるというコメディです。登場人物がそもそも珍妙。ヴォーグレル博士はカツラに付けヒゲで威厳と神秘を装い、弟子のアマンは男装の麗人で実はヴォーグレルの妻。館で、魔女はインチキ媚薬を売り付け、助手は料理女を口説き、御者もメイドと洗濯室にしけ込みます。一方で館の女主人(役人の妻)はヴォーグレルを誘惑し、医者はアマンが女性であることを知って言い寄る始末。助手と御者はいいとしても、オツにすました夫人と医者も一皮剥けば、です。

第2幕
 一座は、館の面々に魔術を披露します。署長に空中浮揚のインチキを見破られ、仕返しに署長の妻に催眠術?をかけて署長の化けの皮を剥ぎ、館の使用人を見えない鎖で縛り、と茶番が繰り広げられます。使用人ははずみでヴォーグレルを殺してしまい(実は生きている)、ヴォーグレルは検視に現れた医者を幽霊に化けて脅し、医者は臆病な正体をさらけ出し、とドタバタ劇が続きます。第2幕では、一座のインチキが暴かれるとともに、署長と医者の虚飾が剥がされることになります。

エピローグ
 インチキのバレた一座は、はほうほうの体で逃げ出します。助手は屋敷の料理女と世帯を持つために残り、インチキ薬で一財産作った魔女もヴォーグレルと別れると言い出し、助手と魔女の代わりに御者と恋仲になったメイドが加わり、一座は崩壊寸。折りも折り、なんと国王よりヴォーグレル一座に興業の招待状が届き、ハッピーエンドなのかどうかよく解らない幕切れとなります。

 イングマール・ベルイマンは、この映画で何を描いたのか?。タイトル通り魔術師が登場し、魔術を暴く警察署長以下3人が登場します。魔術師ヴォーグレルはというと、カツラと付けヒゲで威厳と神秘を装いますが、変装を解くと、これも男装を解いた妻アマンに甘える唯のオッサン?。警察署長、医者、役人の3人も理性と権力、富によっていかにも上流階級を装っていますが、次々に醜態をさらけ出します。
 登場人物で自分を飾らないのが、料理女と懇ろになって落ち着き先が見つけた助手(早くも尻に敷かれていますが)、メイドと恋仲となった御者、インチキ薬の販売で一財産作った魔女の3人。飾る必要がないので、女を口説いたり金に執着したりと自由気ままに振る舞います。従って、登場人物全員が「唯の人」という誠にヒューマニズムに満ちた「人間喜劇」ということになります。

 制作の順番からいうと、第七の封印 野いちごと →魔術師処女の泉となります。イングマール・ベルイマンは、「神の沈黙」や人間の我執と孤独といったテーマを一度お休みして、人間喜劇で一息ついたのかも知れません。

監督・脚本:イングマール・ベルイマン
出演:マックス・フォン・シドー、イングリッド・チューリン、ビビ・アンデション

タグ:映画
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Lee

面白そうですね。余談ですが青いパパイヤのサラダの記事をアップしhttps://leesblog.blog.ss-blog.jp/2020-09-04、映画のリンクを貼らせて頂きました。
by Lee (2020-09-04 12:04) 

べっちゃん

拝見しました。
by べっちゃん (2020-09-04 12:13) 

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