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劉慈欣 三体Ⅱ 暗黒森林 上  (早川書房2019) [日記 (2020)]

三体Ⅱ 黒暗森林 上 三体Ⅰ
 続きです。やっと『三体Ⅱ 暗黒森林』を借りてきました。ベストセラーは待たされるというのが、図書館利用の不便なところです。2ヶ月空くと正直忘れてしまいます。
 読んでいる間に少しづつ思い出しました。文化大革命で中国の政治体制に絶望した物理学者は、異星人探査計画の巨大電波望遠鏡を使ってメッセージを発信し、それに答えたのが三つの太陽を持つ三体文明。文明崩壊の危機にある三体人は宇宙船を建造し、地球侵略計画を開始します。物理学者は「三体協会」を組織して三体人に協力し、これを知った人類は四百数十年後の侵略に備えて防衛体勢を準備する、そんな内容でした。
 『三体Ⅰ』でとりわけ面白かったのは、「文化大革命」の体験で物理学者は人間の本性は悪だと考え、異星人にSOSを発信すること(文革の描写はリアルです)。三体協会が提供するnet上のヴァーチャルな「三体ゲーム」。ゲームの仮想現実には、なんと始皇帝やアリストテレス、ニュートンやフォン・ノイマンが登場します。
 『三体Ⅱ』で、いよいよ三体人が攻めてくるのか?。

三体危機
 『三体Ⅱ』では、異星人の地球侵略(三体危機)に立ち向かう人類が描かれまます。人類滅亡の危機と言っても四百数十年後のこと、十数代後の人類のために現在を犠牲にできるか?という話です。地球温暖化問題で、国家のエゴが優先され足並みが揃わないみたいなものです。
 当然「戦う」ことが第一の選択肢ですが、隔絶した科学技術を持つ三体文明と戦って勝てる見込みは殆んどありません。続く選択肢は地球を捨てて逃亡。太陽系の外に人類が生存可能な惑星を見つけて移住する、閉鎖生態系を持った宇宙船で地球文明を存続させる、一時的に宇宙空間に避難して三体人と交渉する等の案が論議されます。ともかくも国連が機能し「惑星防衛理事会」が組織され、4人の「面壁者」に防衛計画が託されます。 

面壁者
 面壁者?、検索すると、「面壁」とは達磨大師が壁に向かって瞑想した故事に由来する座禅のことだそうです。何故SFに座禅が登場するのかというと、三体人が地球に放った情報収集機・智子(ちし)。智子は、分子レベルの機器で、あらゆる場所で情報を収集して三体人に通報するため地球の動きは筒抜け。おまけに情報を操作するため、科学技術の発展が阻止されます。人類の基礎科学は智子に封じられ、コンピュータや人工知能の行く手には壁が立ちはだかっているわけです。
 防衛計画は筒抜けとなって新たな武器や宇宙技術の開発はストップという縛りがストーリーに付加されます。つまり、機密保持のために、防衛計画は智子が侵入できない個人の頭の中で組み立てる「瞑想」に頼らざるを得ないということです。これが面壁者が登場する背景ですが、面壁者とは、壁の前の瞑想者であるとともに、智子が築いた「壁」に向かう面壁者でもあるわけです。
 三体人にも縛りがあります。三体人は、言葉や文字を額面通りに理解し、その裏にある真意を読むことができず、詐術、陰謀が理解できません。つまり創造力が欠如しているという縛りです。

 国連は、4人の面壁者を選定します。そのひとりが元天文学者で社会学者の羅輯(ラシュウ)。他の3人は政治的、学問的実績がありますが、羅輯は無名の大学教授で何故面壁者に選ばれたのかは?。羅輯が想像力によって理想の女性を組み立てるエピソードがありますから、想像力が智子探査をかい潜り三体人の侵略を阻止するという筋書きでしょう。「面壁計画」を探知した三体人は、面壁者に対し「破壁者」で対抗します。

 面壁者の侵略阻止計画は、1)200メガトンの原爆製造、2)小型戦闘機で三体人の宇宙船に神風特攻する「蚊群計画」、3)脳とコンピューターを繋いで人間の知能を最大限に引き出し侵略阻止を導きだす「搦め手作戦」(勝手に命名)。「蚊群計画」は破壁者フォン・ノイマンに見破られます。三体人は想像力欠如ではなかったのか?→フォン・ノイマンだから想像力はある。しかし、フォン・ノイマンはゲームの登場人物だった筈 →ツッコミなしです(笑。

 人類の未来を託された面壁者ですからあらゆる要求が通ります。羅輯が要求したのは、自分の想像した理想の女性を探せ!、彼女と暮らす環境を提供せよというもの。この理想の女性・荘顔登場しますからご都合主義もいいところ(笑。羅輯と荘顔は、ルーブルで『モナリザ』の微笑から表情言語のヒントをつかむあたりも伏線?。「眼は口ほどにもの言」いまから、眼や表情でコミュニケーションを図れば、智子はお手上げ。荘顔との生活にうつつを抜かし会議にも出てこない羅輯に痺れを切らした国連は、荘顔を「終末決戦」まで人工冬眠させ羅輯の尻を叩きます。何しろ終末決戦まで4世紀もあるわけですから、人工冬眠でも使わないとストーリーが進行しません。ということは、羅輯も冬眠することになるんでしょうね。というわけで、羅輯は荘顔に会うため終末決戦へ重い腰をあげます。

呪文
 羅輯が面壁者に選ばれた真相が明かされます。羅輯はかつて事故で死にかけたことがあります。この事故は三体協会が仕組んだ暗殺であり、羅輯は三体人の地球侵略の障害となる人物だったのです。

 羅輯は元天文学者で社会学者。かつて「宇宙社会学」を研究しようとしたことがあります。銀河に多くの文明が存在するなら、文明と文明の関わりを考察する「宇宙社会学」が成立するわけです。つまり、三体文明と地球文明の接触=戦争も宇宙社会学の範疇というわけです。
 宇宙社会学の公理なるものが紹介されます。1)生存は文明の第一欲求である。2)文明はたえず成長し拡張するが、宇宙における物質の総量はつねに一定である。→この辺りが下巻への伏線でしょう。
 羅輯は、地球の銀河系における位置と「呪文」を50光年彼方の地球外生命体に向けて発信します。呪文?...、果たして三体星人に次ぐ第三の異星人が登場するのか?。

 というのが『三体Ⅱ 暗黒森林 上 』で、『下』は未だ図書館から借り出せていません。借りられたとしても、『三体Ⅲ 死神永世』は未だ発売されていない!。

タグ:読書
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