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映画 女神の見えざる手(2016米) [日記 (2020)]

女神の見えざる手
 原題、”Miss Sloane”、ヒロインの名前です。アメリカのロビイストを主人公としたサスペンス。時々耳にする「ロビー活動」は、日本の政治では表に現れることが無いため、分かり辛い存在です。ロビー活動とは、ある政策を実現するために、政治、政治家に働きかける私的(プライベート)な組織の活動です。『女神の見えざる手』では、「銃規制強化法案」をめぐって賛成派と反対派がそれぞれ「ロビー会社」を使って熾烈なロビー活動を展開します。「銃規制法案」を推進あるいは反対活動を展開する圧力団体、その圧力団体の意向を受けてビジネスとして活動するのがロビー活動です。

映画は、ヒロイン、エリザベス・スローン(ジェシカ・チャステイン)の独白から始まります。

ロビー活動は予見すること 敵の動きを予測し対策を考えること
勝者は敵の一歩先を読んで計画し、敵が切り札を使ったあと、自分の切り札を出す

 最後まで観ると分かるのですが、この独白が映画のすべてを語っています。つまり、観客にはそんなことは分かりませんが、冒頭で種明かしをしているのです。

 独白の後、映画は上院の「公聴会」でエリザベスが査問を受けているシーンに続きます。どうやら、インドネシア政府をクライアントとしたロビー活動で、エリザベスが米議員に利益供与を図った不正が疑われています。そして一転、シーンは3ヶ月前に飛びます。

 銃器業界は、遣り手のロビイスト、エリザベスに「銃規制法案」を潰すためにロビー活動を依頼します。業界は、「銃によって子供を失った母親」から「銃で子供を守る母親」へのイメージ転換を図り、業界寄りの女性組織作り(つまりは集票組織)をエリザベスに依頼します。エリザベスは、金銭で動くロビイストにも倫理はある、とこの提案を一蹴し自分のチームを引き連れてライバル会社(銃規制法案推進派のロビー会社)に移ります。エリザベスが銃規制派であったというより、銃で子供を守る母親、銃でDVの夫から自分を守る妻という発想と、そんな発想をする男たちに我慢がならなかったのです。この映画は銃社会のアメリカを批判する映画ではありません。
 移籍際し、エリザベスの腹心ともいうべき女性スタッフが、反旗を翻し彼女と行動を共にせず会社に残ります(これが伏線)。

 エリザベスは、ロビイストとして数々の実績を持つバリバリのキャリウーマン。傍若無人で唯我独尊、ロビイ活動のためには危ない橋も渡るという仕事一筋の女性として描かれます。家庭も恋人も無く、睡眠障害で薬が手放せず、唯一の憂さ晴らしはホストクラブの男性を買うこと!。男顔負けの現実離れした人物造形ですが、ラストの逆転劇の効果を上げるためには、これくらい女性像が必要だったのでしょう。

 移籍した会社でエリザベスは「銃規制法案」を通すためのロビー活動に邁進します。法案の採決に関わる議員を賛成派、反対派に色分けし、態度保留の議員を自陣営に引き込むためにあらゆる手段を尽くし、世論操作の工作、フェミニズムの団体を動かし資金集めと八面六臂の活躍。一方で、女性スタッフのひとりが銃乱射事件の生き残りであることに目を付け、彼女を世論操作に利用します。ロビー活動の勝者となるためには、身内を裏切ることも許されるというのがエリザベスの考え。

 ライバルのロビー会社(エリザベスの古巣)、はエリザベス個人を潰す動きに出ます。彼女が手掛けたインドネシア政府のロビー活動から、彼女の不正行為を見つけ出します。この不正の証拠を見つけるのが、エリザベスの元部下でライバル会社に残った女性スタッフ。銃器業界を顧客とするロビー会社は、上院議員を抱き込んでエリザベスを公聴会へと追い込みます。これで冒頭の「上院公聴会」と繋がり、不正の証拠が提出されエリザベスは絶体絶命・・・ここから「敵が切り札を使ったあと、自分の切り札を出す」という彼女の「自分の切り札」が展開されます。ラストはあっと驚くどんでん返し...。

 ジェシカ・チャステインの演技と最後のどんでん返しは見ところで、ツッコミ所はありますが、まずまずのオススメ。個人的には、ロビー活動というもののイメージが掴めたので満足。

監督:ジョン・マッデン
出演:ジェシカ・チャステイン、マーク・ストロング、ググ・バサ=ロー

タグ:映画
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