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映画 やさしい本泥棒(2013米) [日記 (2022)]

やさしい本泥棒 [DVD] 本泥棒  原題、The Book Thief。マークース・ズーサックの原作『本泥棒』の映画化です。

 ヒトラー政権下のドイツを舞台に、ミュンヘン郊外に住むペンキ職人夫婦に預けられた少女リーゼルの物語です。リーゼルの両親は共産主義者だったために収容所に送りとなり、里子に出されたのです。ナチスの親衛隊や突撃隊が登場しユダヤ人迫害も描かれますから、数多く作られた「ナチもの」です。従って、切り口が問題となります。例えば最近観た同種の映画では、

 アイヒマンを追え! (2015独)・・・アイヒマンを追う検事フリッツ・バウアー。
 謀議(2001米英)・・・ユダヤ人虐殺を決定した「ヴァンゼー会議」の内幕。
 愛の嵐(1974伊)・・・親衛隊将校とユダヤ女性のラブストーリー、ホロコーストの加害者と被害者と倒錯の愛。
 ナチス第三の男 (2017仏英ベルギー)・・・チェコの副総督ラインハルト・ハイドリヒの暗殺(エンスラポイド作戦)。
 家に帰ろう(2017西・アルゼンチン)・・・ポーランドを尋ねるアルゼンチンの仕立屋のロードムービー、訪問の背景がユダヤ人迫害。

と、正面からナチズムを描くのではなく、斜めから描くところに特徴があります。

 原作では、ヒトラーの扇情的弁舌とゲッペルスのプロパガンダの「言葉」に、ナチズムの被害者である少女リーゼルとユダヤ青年マックスが記す「言葉」が対置されます。
 ヒトラーvs.リーゼル+マックスとはなりませんから、この主題を映画はどう描いたのか?。マックスは、ヒトラーの『我が闘争』のページを白いペンキで塗り潰し、リーゼルはその上にハンスとローザ、親友ルディとの戦時下の生活、本との出会いを記します。マックスとリーゼルは、ヒトラーの『我が闘争』を上書きし乗っ取ったことになります。題名の『本泥棒』とは、リーゼルがヒトラーから「本を盗んだ」ことを言っているいることにもなります。

 原作を読んでいるのでそう言えるのであって、映画で十分に描かれているとは言えません。映像化されると、ジェフリー・ラッシュ、エミリー・ワトソンの演技の上手さもあるのですが、時代に翻弄される庶民の哀感や戦争の悲惨が前面に出てきます。映画化の難しいところです。700ページの長編を2時間の映像にしたため、あれもこれも詰め込んで原作のストーリーを追うだけの映画となっています。原作のストーリーを離れ、ヒトラーから本を盗むという一本に絞った方がよかった様に思います。
監督:ブライアン・パーシヴァル
出演:ジェフリー・ラッシュ、エミリー・ワトソン、ソフィー・ネリッセ

タグ:映画
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