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アイザック・ウォルトン 釣魚大全 (グーテンベルク21) [日記 (2023)]

釣魚大全
 『チャリング・クロス街84番地』で、著者のヘレーンはロンドンの古書店から挿絵の綺麗な『釣魚大全』を手に入れます。ヘレーンが『釣魚大全』を手にするには、注文の手紙と納品で大西洋を隔て2週間以上かかったのではないかと思います。今ではインターネットの1クリックで、電子本であれば即時に入手できます。
 で、1クリックで読んでみました。待ち焦がれて手に入れた感動に比べると、如何にも安易、安直、感動の薄い御時世です。

 初版は1653年ですから370年前の本です。糸と針と竿で魚を釣るという一点においては、370年前も今も何も変わることはありません。ウォルトンによると釣りは「芸術」であり、「釣魚道」だそうです。何処が 芸術で道なのか?。例えば第4章「マスの餌について。 フライ(毛バリ)の作り方、生き餌の保存の仕方について」、

五月蝿の毛バリは、その胴を緑がかった刺繡糸か、萌黄色の刺繍糸で作るといいのです。つまり、蠟引きの絹糸で胴の大部分をくすんだ色に仕上るか、黒い糸で脇腹を作るかその脇腹の幾本かは銀糸で巻いたりしたらいいのです。 ウイング(翅)は、その季節に、いやいや、その日に、水の上を飛んでいる虫と同じ色にします。

羽虫に似せた毛バリの美しさは芸術的です。毛バリの「翅」にいたっては釣りの日に飛んでいる虫に似せてその場で作ると云うのですから、この拘りはまさに「釣魚道」です。

 「淡水の狼」と言われるパイク(カワマス)の話です。

パイクは実際、大胆・貪欲で、かつ残忍な性質を持っており、ゲスナーは、その猛烈さをこんな話で紹介しています。ある男が驢馬に水を飲ませようと池に連れてきたところ、突然パイクが水の中から飛び出してきて、驢馬の舌に食いついてきたのです。おそらくパイクはその池の魚を全部食いつくしてしまったのでしょうね。驢馬はパイクを水から釣りあげる結果になって、この男はこんな思いもかけぬ珍事で、魚を手に入れたという次第なのです。

わが国にも鹿を丸飲みしたというイトウ(サケ科)の伝説があります。釣り人にとって、獲物は大きいにこしたことはありません。

・・・この話と一緒にある賢人の「空きっ腹を説得することはむずかしい。なぜなら胃袋には耳がないから」という言葉をお伝えしておきましょう。

 笑い話です。パイクを釣る話に続いて、パイクを食べる話です。パイクの捌き方から始まって、

肝臓は別に残しておいて細かく刻み、タチジャコウソウとマヨナラ(ハッカ類の一種)と、少量の山紫蘇を混ぜ合わせ、それへ塩漬けの牡蠣少々と鰯二、三匹を加えます。 ・・・ それに生バターを一ポンド加え、細かく刻んだ薬草と一緒にし、全体をよく塩るのです。一、二切れの肉豆(ナツメグ)と一緒にこれをよく混ぜたものを、魚の腹の中に詰め、
葡萄酒と鰯とバタ―とを混ぜ合わせたタレをかけながら焼くそうです。釣った魚は自分で調理して食す、釣人の正しい在り方ですw。

 という様な釣りの蘊蓄が13章にわたって続きます。面白いかというと、370年の時間差は否めません。今なら、開高健の『私の釣魚大全』『フィッシュ・オン』でしょうか。

私の釣魚大全 (文春文庫 か 1-2)【電子特別版】オーパ! (集英社文庫)

タグ:読書
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