映画 ベルファスト(2012愛英) [日記 (2023)]
9歳の少年の眼で描かれた「北アイルランド紛争」の話です。ベルファスト出身の俳優ケネス・ブラナーのほぼ自伝だそうです。
イギリスの正式な国名は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」と言うように、イギリス本島と北アイルランドの連合国家。
アイルランド →カトリック → 元イギリス領、現独立国家
北アイルランド→プロテスタント・ カトリック→現イギリス
イギリス領になるか独立かが宗教に結び付き、北アイルランドのプロテスタントとカトリックの対立は根深いものがあるようです。1969年、プロテスタント教徒がカトリック教徒を襲い「北アイルランド紛争」が起こります。紛争下での9歳の少年バディ一家の物語です。
道路で遊ぶバディ(ジュード・ヒル)は、いきなりプロテスタント教徒がカトリック教徒を襲う紛争に巻き込まれます。カトリック教徒の家が壊されバリケードが築かれ軍が出動します。宗教対立があっても、プロテスタントの子供もカトリックの子供も学校では仲良く机を並べています。映画はこの子供の世界とバディ一家の日常の2つから成り立っています。バディの父親(ジェイミー・ドーナン)はロンドンに出稼ぎに行き、母親(カトリーナ・バルフ)と兄の3人でベルファストで暮らしています。近くには祖母( ジュディ・デンチ)、祖父(キアラン・ハインズ)も住み、ベルファストに根付いたプロテスタントの一家。
後年俳優で監督となるバディ(ケネス・ブラナー)は映画が大好き、TVの西部劇や『スタートレック』にかじりつき、映画館で『チキチキバンバン』に歓声をあげます。1969年のトピックと言えばアポロ11号の月面着陸。祖父は、「月に行く準備をしろ、ロンドン行きは小さな第一歩でしかない」とアームストロング船長の言葉を借りてバディを諭します。
映画では、1969年の世相とバディ一家を始めベルファストで暮らす人々の生活、ベルファストの町並みがモノクロームで(そう、モノクロ映画です)ノスタルジックに描かれます。タイトルの通り、映画の主役はベルファスト。
ベルファストのプロテスタント教徒は中立を保つことは困難で、暴徒は襲撃に加わるか金を払うか?と父親に迫ります。高い失業率と荒れるベルファストに嫌気がさした父親はロンドン移住を決意しますが、奥さんと子供は猛反対。故郷を離れるのは嫌だ、祖父母もいる、アイルランド訛りで苦労するのも嫌だと。ロンドンか自分達を育んだ故郷かの選択です。紛争が激化し、反対していた家族も折れバディ一家はロンドンに引っ越しすることになります。
バディは初恋の女の子に別れを告げに行き、父親に問います。
あの子と僕は結婚できる?、彼女はカトリックだよ。
あの子がヒンドゥー教でもパブテスト派でも反キリスト教徒でも、優しくて寛大でお互いを尊敬し合えれば、あの子もあの子の家族も大歓迎だ。
この映画がイギリスやアイリッシュの多いアメリカで支持されるのは分かりますが、カトリックもプロテスタントも無い非キリスト教文化圏ではどうなんでしょう。優しくて寛大でお互いを尊敬し合えないために戦争が起きる今日の世界に、一石を投じる映画ではあります。
監督:ケネス・ブラナー
出演:ジュード・ヒル、カトリーナ・バルフ、ジェイミー・ドーナン、
ジュディ・デンチ、キアラン・ハインズ
タグ:映画
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