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映画 チキンとプラム 〜あるバイオリン弾き、最後の夢〜(2011仏独ベルギー) [日記 (2021)]

チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~ [DVD]
 舞台がテヘランで、俳優はフランス、ポルトガル、イラン、イタリア、セリフは仏語、製作国がフランス、ドイツ、ベルギー、監督はイラン、と多国籍、国際色ゆたかな映画です。英語圏が全く登場しないと、こういう映画になりますw。なんとも不思議な映画なのでwikipedeliaを見ると、原作は『チキンとプラム』というコミック、その作者マルジャン・サトラピが監督しています。



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 コミックの実写版ですから、ちゃんと俳優が演じますが、ところどころにアニメがあったり、死神や何故かソクラテスまで登場するファンタジー。

ナセル
 「チキンのプラム煮」が大好物のバイオリン弾きが、死に至る8日間に人生を振り返るという話です。言っときますがシリアスな話ではなく、ファンタジーです。
 バイオリニストのナセル(マチュー・アマルリック)は、奥さん(マリア・デ・メデイロス)に愛用のバイオリンを壊され厭世気分となります。この奥さんは、数学の教師で共働き、売れないバイオリニストの亭主を半ば養っているというしっかり者。ちなみに弟は共産主義者というのは笑わせます。奥さんは、アタシが毎日働いて子供の世話をし家事をしているのに、アンタは一日中バイオリンを弾いてノラリクラリしている!。と奥さんの怒りが爆発し、バイオリンに八つ当たりして壊してしまったんです。こういう夫婦喧嘩は洋の東西を問わずイランにもあるんですね。で亭主のナセルは世をはかなんで、もう死んでしまおうとなり、ベッドに潜り込んでどうやって自殺しようかと考えます。ピストル自殺がいいか、投身自殺がいいか、どれも痛そうだし「芸術家」に相応しい死に方はないものかと…。オレの人生は何だったんだという思いがナセルをよぎります。そもそも、母親の言いなりに好きでもない奥さんと結婚したのが間違いだったのか?、オレは奥さんを愛していたのか?、子供たちには良い父親だったのだろうか?、等など。
 食事も取らずベッドに潜り込んだ夫を心配して、奥さんはナセルの好物を作ります、これが「チキンのプラム煮」、何だかんだ言ってもそれなりに愛されているわけです。

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イラーヌ
 思い出が走馬灯のようにナセルの脳裏をよぎります。音楽に目覚め、二十歳で当代一流の音楽家に弟子入りして技を磨きますが、テクニックは完璧だが心が籠もっていないとか批評され、あれこれ悩むうちにイラーヌ(ゴルシフテ・ファラハニ)に出会います。恋をすると演奏に心が籠もるようになり、師匠からモーツアルトが使ったスラスバリウスを贈られますw、ファンタジーです。この恋は成就して結婚を申し込みますが、彼女の父親に「食えない芸術家に娘はやれない!」と反対されて失恋。という背景もあって、ナセルは「結婚すれば愛は生まれるもの」と母親に説得され今の奥さんと結婚した次第。奥さんは、知ってか知らずか、イラーヌとの思い出のこもるバイオリンを壊したことになります。

 いっこうに死ねないのナセルの元に死神”アズラエル”が現れます。アズラエルはユダヤ教、キリスト教およびイスラム教において死をつかさどる天使だそうで、死神まで多国籍ですw。自殺したいのですから、死神が現れて喜んでいい筈ですがナセルは逃げ出す始末。考え直してイイ? →もう遅い!。
 ストーリはここで冒頭に還ります。ナセルはテヘランの街角で初老の女性に出会いい、イラーヌ!、ボクを憶えていない? →まったく。女性はナセルが見えなくなると涙を流します、イラーヌだったんです。彼女はナセルと別れたのち父親の薦める男性と結婚しますが、ずっとナセルを忘れられなかったのです。バイオリン弾きにはこういう過去があったわけです。

 で、アズラエルに会ったナセルは目出度く亡くなります。誰にも成し得なかった悔恨や失意があります。”C'est la vie.”、せれが人生。そんなテーマをユーモアに包んでサラッとファンタジーに仕上げるのですから、如何にもフランス映画。見ようによっては、けっこう身につまされま。余談ですが、『アメリ』『アンジェラ』のジャメル・ドゥブーズが出演しています。

監督、脚本、原作:マルジャン・サトラピ
出演:マチュー・アマルリック、マリア・デ・メデイロス、ゴルシフテ・ファラハニ、ジャメル・ドゥブーズ

タグ:映画
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