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日韓映画見比べ 『万引き家族』と『パラサイト 半地下の家族』 [日記 (2021)]

万引き家族 通常版DVD(特典なし) [DVD] パラサイト 半地下の家族 [DVD]
 『万引き家族』と『パラサイト 半地下の家族』は、東京とソウルに暮らす「家族」の物語です。『万引き家族』はカンヌ国際映画祭パルム・ドール、『パラサイト』はパルム・ドール+アカデミー賞作品賞、監督賞受賞で、何事につけ日本と比較する韓国世論では「日本に勝った」ということになったんでしょうね。最近「日韓」に凝っているので見比べて見ましたw。

 どちらも「家族」の話です。『万引き家族』は、下町に住む6人の家族が実は「赤の他人」だった→家族とはそもそも何なのかというのがテーマです。『パラサイト』の方は、「半地下」に住む4人の家族が山手の裕福な家族に「寄生する」話で、社会格差がテーマです。人と人の絆が希薄とばった日本、格差が社会に影を落とす韓国、それぞれの今日的な問題を主題にしています。

背景
 『万引き家族』は、治と信代夫婦とお祖母ちゃん、息子の祥太、信代の妹亜紀の5人家族。お祖母ちゃんは年金暮らし、治は建設労務者、信代はクリーニング工場のパート、亜紀はフーゾクでアルバイト、祥太は小学校にも通っていないという家族。治と息子は家族公認の万引常習犯。治が幼いユリを自宅に連れ帰ったことで物語の幕が開きます。ユリは父親からDVを受け母親にはネグレクトされていたことが明らかになり、ソレって誘拐じゃない?という亜紀に、身代金を要求したわけではないから誘拐じゃない、と言う信代の一言でユリは家族の一員となります。

 『パラサイト』は、半地下の住居に暮らすキム・ギテク一家は、主人と妻は失業中、息子のギウと娘のギジョンは大学浪人で誰も生業に就いていないという家族。宅配ピザの箱折の内職をし近所のwifiを無断使用していますから、一家の窮状が伺い知れます。失業したギテクは、台湾カステラや鶏の唐揚げの自営に手を出し失敗した会話があり、半地下とともに韓国の世相を映している様です。

 ギウが友人の紹介で豪邸に暮らす社長パクの娘の家庭教師を始め、ストーリーが動き出します。ギウは、自分一家の暮らしと社長一家の暮らしのあまりの違いに驚き、この落差を埋めるために一計を案じます。ギウは妹をパクの息子の絵の教師として送り込み、パク家の運転手と家政婦を追い出して父親と母親を後がまに据えます。ギテク一家4人は、パク家に潜り込みパク家に「寄生」することで半地下の生活から抜け出そうとしたわけです。ギテクは、警備員の求職に大卒の青年が何十人も殺到する時代に、我が家は4人全員が就職できた、と喜びます。この「パラサイト(寄生)」はコメディとしては秀逸です。

破綻と結末
 『万引き家族』では、息子の祥太が万引きで警察に捕まり、芋づる式に一家の正体が露見します。お祖母ちゃんの不在から、年金目当ての死体遺棄がバレ(床下に埋められいた)、捜索願の出ているユリが発見され、6人は血の繋がりのない他人同士であり、一家はそれぞれの事情を抱えた6人が集う「共同体」だったことが明らかにまります。
 信代は死体遺棄の罪を被って収監、治は執行猶予、祥太は施設、亜紀とユリは家族の元に戻ります。それなりに幸せだった家族は、国家の制度によって解体されたのです。家族揃っての海水浴シーンは、ここに至って全く違った風景となって見えてきます。
 施設を抜け出したと祥太は、治と束の間の「父子」を演じ、翌朝バスで去る祥太と治の別れのシーンは新しい家族の誕生を予感させます。

 『パラサイト』の方も、富裕層に寄生したギテク一家が破綻します。追い出した家政婦がパク家の地下シェルターに夫を匿っていたことがギテク一家にバレ、ギテク一家もパク家に寄生していたことが家政婦にバレます。ここからはスラップスティック、家政婦の夫は刃物を持って折から開かれていたパク家の野外パーティに突如乱入(動機が不明)、娘を殺されたギテクも錯乱してパク社長を刺殺。高利貸から逃れてシェルターに隠れていた男と半地下の住人、抑圧された二人の男の富裕層への反乱なんでしょうか。半地下の住居が豪雨で浸水するエピソードと合わせると、韓国の抱える格差の病理は深刻です。警察に追われるギテクは、家政婦の夫がそうだった様にシェルターに隠れます(これも一種の寄生?)。

東京とソウル
 『万引き家族』と『パラサイト』は、同時期に東京とソウルの家族を描いた映画です。東京では「家族の絆」が問われ、ソウルでは「社会格差」が問われます。
 東京の家族もソウルの家族も貧しいのですが、東京の家族はそれぞれ職業を持って働き(祥太も万引きによって家族に貢献?)それなりに充足した生活を送っています。信代は、家族はDVで行き場を失ったユリを引き取り、お祖母ちゃんの死体を「遺棄」したのではなく一人暮らしのお祖母ちゃんを「拾ってやったの」だ言います。一方ソウルの家族は富裕層のパク家に寄生することで「半地下」の生活からの脱出を図ります。貧しい者は富める者の施しを受けて(寄生して)当然だという儒教の伝統かも知れません。

 ラストのシーンも印象的です。治と祥太の別れのシーンは、新たな家族の再生を予感させます。ソウルの家族は、ジウが富裕層になって父親を取り戻したという成功物語で終わります。

 日本人ですから、「寄生」よりも「絆」に一票。

タグ:映画
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絵日記 アシナガバチ [日記 (2021)]

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  最近ベランダにハチが出没するので探してみるとクーラーの配管に巣を作っていました。アシナガバチだと思われます。駆除しようかと思ったんですが、ハチは芋虫なんかを食べてくれる益虫。人間が攻撃しないと刺すことないので、このまま「飼ってやる」ことにしました、っていうか共存ですw。
 毎日何処へともなく飛んでいって、エサを獲ってくるんでしょうか、また戻って来ます。よく迷子にならないものだと、不思議な気がします。

アシナガバチはおとなしい性格で、巣にいたずらをしなければ、ほとんど刺してくることはない。むしろ蛾や蝶の幼虫を駆除してくれる益虫である。特に、初夏の頃までにこのハチの巣があると、モンシロチョウの幼虫が増えないので、殺虫剤やネットを使用しないでキャベツ等の栽培・収穫ができる。多少の食痕が残るが、無農薬なので、家庭用には最適である。(wikipedia)

タグ:絵日記
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このPCではWindows11を実行できません [日記 (2021)]

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 Windows11がリリースされるようです。「 Microsoft、Windows 11互換性チェックプログラムを公開」だというので試してみました(今すぐチェックをクリック)。去年入れ替えたusedの DELL OptiPlex 3040です。結果は「このPCではWindows11を実行できません」と敗退。ハードウェアの条件は
 ・プロセッサ:1GHz以上で2コア以上の64ビット互換プロセッサまたはSoC
 ・メモリ:4GB
 ・ストレージ:64GB以上の記憶装置
 ・グラフィックスカード:DirectX 12 互換のグラフィックス / WDDM 2.x
 ・ディスプレイ:9インチ以上、HD解像度(720p)

 プロセッサがダメみたいです。コッチで確認すると、OptiPlex 3040はCore i3-6100(第6世代)、Microsoftはi3-8100以上の第8世代以降を要件として提示しています。 グラフィックスはHD グラフィックス 530でDirectX12に対応しているようですから、CPUを入れ替えれば使えるかも知れません。OptiPlex 3040はSSDに入れ替えてけっこう使えているので、Win10の終了2025年まで頑張ってもらうしかないみたいです。Win11ではAndroidのアプリが動くそうですが、そんなもの必要ないし...負け惜しみw。

 Microsoftは、MS-DOSに始まってwindows3.1、95、98 →XP →10と歴代のOSをよくも使ってきたものです。winn11 →12と続くのか、windowsXXとまったく新しいOSが生まれるのか?楽しみと言えば楽しみです。
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【追記】
 win11の要件は、CPMが第8世代以降でトラステッド・プラットフォーム・モジュール(TPM) バージョン 2.0らしい。所有のPCは、ノートが1.2でデスクトップが2.0。i3の第6世代でインストール実績があるそうですから実験してみます(こことかこことかここ)。

【追記2】
 レジストリを修正せずISOファイルを修正する方法もあるようです。コッチのほうが安全?。 →アップデートしました、簡単でしたオススメ。
iso.jpeg 壁紙.jpeg

タグ:パソコン
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映画 ボーダー 二つの世界(2018スェーデン) [日記 (2021)]

ボーダー 二つの世界 [Blu-ray] スェーデン映画は珍しい、『ぼくのエリ 200歳の少女』(リメイク『モールス』)に次いで2本目。原作者は同じヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストだそうです、したがってホラー系のファンタジー。

ティーナ
 主人公はティーナ、国内に持ち込まれる違法薬物等を摘発する女性税関吏。ティーナ(エヴァ・メランデル)は違法薬物を文字通り「嗅」ぎ分けて摘発します。薬物に限らず密輸される酒、児童ポルノが入っている携帯のメモリ!まで嗅ぎ分けます。彼女は「羞恥や罪悪感や怒りを嗅ぎとれる」と言っていますから、人の心を読む超能力です。

 ティーナは人間離れした容貌魁偉なの女性で、人間が犬に変身する手塚治虫の『きりひと讃歌』を連想します。これがキモです。介護施設に入っている彼女の父親はごく普通の容貌ですから遺伝では無さそう。超能力を持った容貌魁偉なティーナは、いったい何者なのか?。

 普通、映画には美男美女や個性的で魅力に富んだ人物が登場し、観客は彼・彼女に自己投影してストーリーを追うわけです。『ボーダー』では、この怪異な容貌が100分間ズッと画面を埋め尽くすわけで、ちょっとティーナに自己投影はできません。当然ティーナの容姿はメーキャップですから表情がよく分からず、心の移ろいみたいなものもうかがい知ることができません。ティーナに自己投影できず無表情、この辺りが映画を分かり辛くしています。もっともそれがこの映画の意図なのかも知れません。

 臭いで人の感情を読む他、素足で森に入る、全裸で湖で水浴びをする、森の野生動物はティーナを警戒しないが飼い犬は吠えたてる等々、怪しさ満点。

ヴォーレ
 百発百中の超能力がヴォーレ(エーロ・ミロノフ)に通用しなかったことでストーリーが動きます。ヴォーレの容貌はティーナとソックリで、この二人は兄妹なのか?。ヴォーレのバッグからは昆虫や昆虫の孵卵器が出てきただけで、違法な物は発見されません(昆虫の孵卵器は相当怪しいですが)。彼を調べた税関吏曰く「あいつにはペニスがない、女性器があった。尾てい骨に傷がある」と、見かけは男性ですからトランスジェンダー?。ヴォーレは虫を食べ、アンタも食べたいだろうとティーナに勧めます。後の話ですが、何とヴォーレは赤ん坊を出産します。いったヴォーレとは何者なのか?。
 ネタバレです。
ボーダー
 ティーナとヴォーレは、実はトロール族の生き残り。トロールとは北欧の伝承に登場する妖精で、映画『ホビットの冒険』で太陽に当たって石になったあの怪物です。ふたりの容貌もトロールの特徴で、尾てい骨の傷はシッポを切断した痕です。『ボーダー』は、伝説の妖精トロールが実在し、人間世界の片隅で生きているという物語です。

 タイトルの「ボーダー」は境界、文字通り人間とトロールの境界を意味しています。人間の世界があり、一方でヴォーレのトロールの世界があり、ティーナはその境界=ボーダーで生きています。タイトルに「二つ世界」とあるように、この映画のテーマは明確です。ヴォーレの存在からLGBTを連想することは容易で、人間とトロールに仮託した二つの世界の対立あるいは融和です。異なった世界とは、LGBTといってといいし、民族や宗教といってもいいし、異なった思想、考え方、認識といってもいいでしょう。世界のあらゆる場所にボーダーは存在します。

 映画はこの対立にどう決着をつけるのか?、対立は融和へと向かうのか?。人と人、人とトロールは理解し合えるのか?。融和はあり得ないというわけにもいきませんから、映画では「答」らしきものは用意されてはいます。

 トロールという発想は北欧映画ならではですが、ティーナの容貌には最後まで馴染めません。ラストで赤ん坊に微笑むティーナは分かるんですが(これが答えです)、やはりヒロインは「スピーシーズ」のシルの如くすべからず魅力的でなければ!w。原作者のヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストは『モールス』で人間世界をさすらう吸血鬼を登場させました。次はどんな「怪物」を創造してくれるのでしょうか。

監督:アリ・アッバシ
出演:エヴァ・メランデル、エーロ・ミロノフ

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テザリング と ChromeのReader Mode [日記 (2021)]

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テザリング
 必要あってwifi環境の無い所に短期滞在することになりました。光回線を引く程のこともなくnetに繋がればいいだけですから、→テザリングです。
・アクセスポイント:huawei20lite →米では認証禁止の中華スマホw
・接続デバイス:ノートPC、Amazon fire、kindle
・接続モード:wifi、USB
 スマホだけでもそう不自由はないのですが、PCを繋げば使い勝手はよくなります。久々にテザリングやってみましたが、自宅の1F→2Fのwifiより快適です。
 
iijギガプラン
 問題は通信容量。iijのギガプランの4G/1,078円/月で何の不自由もしてませんが、さすがこれでは足りない。選択肢は
1)足りなくなったら1G/¥220で必要分をまかなう(月最大20Gまで)。→24Gで1078+4,400=¥5,478
2)20G/¥2,068に変更する。
3)楽天wifi、無制限¥2,980を導入。
様子見で、1)ですかねぇ。1~2ヶ月様子見てまた考えます。
 
テキストブラウザ
 通信容量節約のためには、容量を喰う画像を読み込まなければいいわけです。昔はテキストブラウザがありましたが、調べてみるとchromeにもこの機能があるらしい(テスト版)。で、ココを参考にやってみました。 テスト版で装備されている”Reader Mode  triggering”の設定をonにすれば使えます。
4.jpg 3.jpg 2.jpg 1.jpg
元画面       簡易表示          広告無くなる
 画面下の「簡易表示する」をタップすればテキスト表示となり、余分な広告等が消えます。本文と関係ある画像は表示されるようです。簡易表示ができないサイトもありエラーを起こすこともあります。ニュースのトップ画面は大抵ダメですが、記事本文は途中の広告が消えてテキストだけになるので読みやすいです。どれほど通信容量の節約になるかは?ですが、これは使えます。

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山川出版の『朝鮮史』を読んで →いわゆる歴史認識 [日記 (2021)]

朝鮮史 1: 先史-朝鮮王朝 (世界歴史大系) 朝鮮史 2: 近現代 (世界歴史大系)朝鮮総督府.jpg

 山川出版の『朝鮮史1、2』を読んで来たのですが、読後感はスッキリしません。この本は1、2で2000ページに及ぶ通史で、出版元も山川だからと読み始めたのですが、スッキリしない理由は所謂「歴史認識」です。
 朝鮮史を学習する最大の壁がこれで、朝鮮史の正統な「通説」というものは無いようです。歴史認識のどちら側に立つかによって歴史の姿は全く異なってきます。伊藤博文を暗殺した安重根は、一方では英雄、もう一方では殺人犯となります。高宗の「露館播遷」も、日帝からの独立を目指した英雄的行為なのか国と国民を捨て我が身の安全を優先させた愚行なのか。本書もこの呪縛からは逃れられていません。

 普通、歴史は本から学ぶわけですが、著者の「歴史認識」「史観」によって、朝鮮近代史の実像は大きく異なります。朝鮮史に興味を持ち読んできた李栄薫、呉善花、 金完燮、古田博司などは、いずれも日韓併合を肯定的に捉える「植民地近代化論」です。これは近代史に限ったことではなく古代史で同じことです。例えば「任那の日本府」や半島南部にある「前方後円墳」についても、学術研究よりもイデオロギーが優先されているようです。民族史観に立てば、半島南部に倭の出先機関があってはならず、前方後円墳の被葬者は百済人でなければならないのです。前方後円墳を真ん中で切って円墳と方墳に改竄したり、埋め戻したりという話もありますw。

「世界史体系」の一冊として「史実を客観的に記述した」建前の本書は中立の立場を取っていますが、日本の侵略については歯切れがわるいです。第2章「植民地支配下の朝鮮」では、明らかに民族史観に立っています。

 「補説3 独立と従属の岐路をめぐって」で、著者はなぜ朝鮮は植民地となったのかを「考察」しています。

一に、朝鮮に植民地化される弱点があったというより、日本が要所要所で武力行使、武力威嚇の手段を用いて、勢力拡張や利権獲得をはかり、その結果が積み重なって植民地化にいたったとみるべきである。

日本は一方的に悪者です。大院君から高宗至る李朝末期の政権運営の失敗を実証しながら 、弱点が無かったというのは矛盾でしょう。イザベラ・バードも言うように、朝鮮に自己改革の能力は無かったと思います。植民地化は日本の安全保障の問題だったと思われます。

紛争を外交の手段によって解決しようとせず、朝鮮を弱小国とみて武力行使、武力威嚇をかさねて支配拡大をはかったこと、独立や領土保全の保証を謳いながら、主権をしだいに奪っていたことが、いかに虚偽に満ちた不当不法なことであったのかを認識し、反省しなければならない。

 高宗の外交的裏切りの前に、日本は実力行使しか無かったはずです。

第二に、朝鮮の官民は、自主の志向を強め、内政改革を進めようとしていた。この動きを近隣の日本や清が尊重して、三国間に良好で協力的な関係を築くことも可能であったろう。・・・朝鮮の自主、改革の動きを尊重し、それを妨害せず、求められば支援をおこなうという選択がありえたのである。

 朝鮮は内政改革の芽をことごとく潰してきたのですから、ヤルヤルと言われても誰も信用しません。

第三に、西洋諸国も植民地支配をおこなっていたのだから、日本だけが植民地支配をしたことを非難されるべきではないという議論についてであるが、西洋諸国ではなく日本が近隣の朝鮮を植民地支配したことの問題性をとらえていない議論である。朝鮮総督府の官僚は、日本の朝鮮統治は西洋諸国によるアジア・アフリカ諸国に対する植民地支配とは違うといって、自己の行動を弁護したことがある。しかし、西洋諸国との違いを示そうとするのであれば、西洋諸国と違うから、同じアジアの国を植民地として支配することを選択しない道があったのである。
 「必然」論ではなく、歴史を選択の積重ねとして動態的にとらえることが大事である。

日本が「選択」しなければロシアが選択し、朝鮮はロシアの植民地になったことでしょう。

 数え上げればキリがありませんが、本書は(特に第二章は)民族史観に立った記述が見受けられます。本書に比べれば、wikipediaの方がよほど中立ですw。
 続きはありませんw。

【朝鮮史1】
【朝鮮史2】

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李成市、宮嶋博史『朝鮮史 2』⑨ 解放と南北分断 (2017山川出版) [日記 (2021)]

朝鮮史 2: 近現代 (世界歴史大系) 米ソの分割占領と米軍政
 1945年日本の敗戦とともに、朝鮮半島は日本の植民地支配から「解放」されますが、38度線を挟んで米ソによって分割占領(国際信託統治)され、国家として独立するのは3年後の1948年のことです。3年間、朝鮮半島には米ソの軍政が敷かれます。

 北はソ連→金日成の一体体制ですが、米軍政下の南は複雑。解放を迎えた朝鮮半島に3つのは社会的亀裂(対立)が存在したいいます。

 1)日本の植民地支配に対してどう対応をしたのかによる「親日―反日」という民族的亀裂。
 2)植民地朝鮮は、植民地地主小作制が根強く定着していたために地主・小作人という階級的な亀裂。
 3)日本による工業化が始まっていたため、階級意識を身につけた労働者(日本から帰国した労働者を含む)と資本家の亀裂 。

 解放された朝鮮で、屈辱の日帝支配の35年間、オマエは何をしたのか?しなかったのか?が問われるわけです。独立ために闘った側は(亡命したり、上海、重慶で臨時政府だと気勢を挙げたに過ぎなかったにしても)、(朝鮮近代化のために)総督府仕えた者を「親日」と糾弾します。新生「韓国」をめぐるヘゲモニー争いです。今日の「反日」はこの辺りにも根があるようです。

(解放の後)どのような政治勢力が主軸となってどのような理念のもとで国家を建設していくのかについて、十分な合意が形成されていたとはいいがたかった。国内に残留した勢力と海外で運動を展開した勢力、さらに、イデオロギー的な左右の対立、そして、主導権をめぐる指導者間の権力闘争など、複雑な政治力学が働いた。

その政治力学を担ったのは、
 李承晩:上海臨時政府大統領。アメリカに亡命し海外で独立運動を展開。韓国民主党と連合して独立促成中央協議会を組織 →大韓民国初代大統領。不正選挙を糾弾され→米に亡命
 金九:臨時政府大統領、臨時政府の中心的存在として独立運動に携わった。南北の統一を目指す →1949,暗殺
 宋鎮禹:日韓併合によって力をつけた資本家、地主を基盤とする「韓国民主党」を結成。 →1945,暗殺
 呂運亨:総督府から行政権を引き継いだ「建国準備委員会」を組織し、左派右派を糾合し「朝鮮人民共和国」の建国を宣言するが、占領軍(米軍)に潰される。 →1947,暗殺
 朴憲永:朝鮮共産党(北朝鮮の朝鮮労働党の前身)を再建 →米軍政下で1948,北朝鮮に亡命、1956,金日成によりスパイとして処刑。

 「単独政府樹立路線」を主張した李承晩が、アメリカの支援の下に1948年大韓民国初代大統領となります。1945年時点の政治力学を担った人々の末路は、暗殺、亡命と哀れです。韓国の歴代大統領の末路も同様ですから、士禍の伝統なんでしょうか。

当時の左右両派の対立軸は、イデオロギーの違いや親米か親ソなど外交政策の違いもあったが、それ以上に、農地改革の是非とその内容、「親日派」勢力に対する対応の違いとなってあらわれた。

農地改革については、左派は徹底を主張し、地主層を支持基盤の右派は緩やかな改革を主張します。同様に、左派は親日派への粛清を徹底的におこなうことを、親日派勢力を支持基盤に持つ右派は慎重な姿勢を示します。この亀裂が現在まで韓国の政治に尾を引いていることになります。以下、38度線より南の話です。

左右合作の挫折と大韓民国の独立
 ソ連は、東北抗日聯軍の金日成を支援して1946年2月に「北朝鮮人民委員会」を設立し、「重要産業国有法」を施行して共産主義国家への道を歩み出します。アメリカは、左右合作の親米政権の樹立を画策しますが呂運亨の暗殺によって頓挫。ゼネスト、大邱10月事件が発生し反米機運のなかで、アメリカは、南部のみの「即時独立」と反共を主張する李承晩とそれを支える韓民党勢力を支持せざるをえなかったわけです。
 米軍政右派の支援もあり、李承晩が権力闘争に勝ち残り、1948年8月15日、李承晩を初代大統領とする大韓民国が建国され、9月には朝鮮民主主義人民共和国が成立します。

この米ソ合意に基づく国際信託統治とそれを経過した独立の達成という構想を、朝鮮内部、とくに米軍政下の南朝鮮において受け入れられる政治勢力が主導権を握っていたのであれば、はたしてどうなっていたのであろうか。もし、国際信託統治を受け入れられるような国内体制を、朝鮮半島内部において樹立することができたのであれば、南北分断は回避できたのではないか。

と本書は記しますが歴史のif。金九、宋鎮禹、呂運亨の暗殺、朴正熙かr朴槿恵に至る歴代大統領の末路を見ると、韓国の政治力学に於いては妄想に過ぎません。

 本書を読むと(けっこう民族主義史観で記されていますがそれでも)、今日の日韓関係を決定づけている「日韓併合」の要因は、500年続いた李朝の無為無策にあると思われます。甲申事変や甲午改革など近代化への機会があったにもかかわらず、高宗と取り巻きがすべて潰しています。帝国主義の脅威を認識して金玉均や金弘集の改革に耳を傾けていれば、朝鮮の近代は、したがって韓国の現代はもっと違っていた筈です、歴史のifですが。李朝を相対化出来ない限り韓国の未来はないように思うのですが...。

【朝鮮史1】
【朝鮮史2】

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映画 ジーサンズ はじめての強盗(2017米) [日記 (2021)]

ジーサンズ はじめての強盗 [DVD]  原題はGoing in Style、「カッコよく行こう」「オレ流に行こう」という意味なんでしょうか?。3人の爺さんが登場するので「爺3s」。それでは何のことか分からないので「はじめての強盗」 →「はじめてのお使い」みたいな副題が付きます。なんとも締まらないタイトルです。その3人に爺さんを演じるのが、モーガン・フリーマン、マイケル・ケイン、アラン・アーキンといずれも名優。脇役で マット・ディロン、クリストファー・ロイド(バックトゥーザフューチャーのドク)、何とアン=マーグレットまでご出演。

 銀行強盗、それも完全犯罪の映画はゴマンとありますが、80歳の老人がやるところがこの映画のミソ。高齢化社会で老人が元気ですから、こういう映画が成り立つんですね。面倒なので俳優の名前で書きます。

 冒頭、マイケルは通帳が赤残となり督促状が来たため、銀行に文句を言いに行きます。どうもローンの金利が上がって支払いが増え通帳はマイナスとなったらしい。マイケルは約束が違うとクレーム、行員はちゃんと説明したでしょうとけんもほろろ。このとき3人組の銀行強盗に出くわします。わずか数分の鮮やかな手並み。強盗のひとりはマイケルの督促状を見て、あんたも腐った経済システムの犠牲者らしい、年寄りを敬うのは社会の義務だ、と160万ドルを奪って去ります。これが伏線。

 家の差し押さえの督促状が届き、マイケルは決心を固めます →あの銀行を襲ってやる!。でモーガン・フリーマンとアラン・アーキンに声をかけます。モーガンは、腎不全で生体移植をしないと助からないという設定。3人の勤めていた工場が移転閉鎖で企業年金は消えます。

 失うものはなにも無い
 最悪捕まってもベッドと3食付き、医者もいる
 先日の強盗は未だ捕まっていない
 アイツラは若い
 我々には技や経験、知恵もある
 年金分だけ奪おう、余ったら寄付しよう

で銀行に押し入り、80歳を越える老人3人の「はじめての強盗」の幕が開きますw。

 これだけのスターを揃えた割りには、3人の個性をイマイチ生かし切れていません。アラン・アーキンは、アン=マーグレットに誘惑されて結婚と『リトル・ミス・サンシャイン』の不良老人の面目如実。コメディですからそれなりに楽しめます。お気楽な映画としてはオススメ。それにしても『ジーサンズ はじめての強盗』のタイトルだけはナントカならなかったんでしょうか?。

監督:ザック・ブラフ
出演:モーガン・フリーマン、マイケル・ケイン、アラン・アーキン

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李成市、宮嶋博史『朝鮮史 2』⑧ 内鮮一体、創氏改名、慰安婦 (2017山川出版) [日記 (2021)]

朝鮮史 2: 近現代 (世界歴史大系)2.jpg
内鮮一体、皇民化政策
1937年7月、盧溝橋事件が起こり、日中間の全面戦争が始まると・・・戦争に動員するシステムの構築をはかった。・・・神社参拝、宮城遥拝、学校や職場における「皇国臣民ノ誓詞」の唱和などを強要したほか、陸軍特志願兵令の公布(三八年二月)により「国体観念」を注入し、軍事教練をおこなう制度を設け、また、朝鮮教育令の改正により学校制度を日本と一元化し、それまで必修科目だった朝鮮語を選択科目にし、「国語」(日本語)教育の比重をより高めた。

 植民地というと、大英帝国とインドを思い浮かべます。大英帝国がインドを原料工場且つ市場として経営し、住民を政治的・文化的に抑圧支配する構図です。そもそも朝鮮には日本が必要とする原料があったのかどうかですが、原料も生産物を売る市場も存在しなかったように思われます。在るのは荒れ果てた農地と禿げ山であり、マーケットは絶対王制の下で暮らす貧しい農民と、農民に寄生する支配階級の1700万人(1918)で、植民地としてのメリットは殆どありません。日清日露の2度の戦争までして朝鮮が欲しかったのは、幕末からの仮想敵ロシアに対する橋頭堡です。この大国に挟まれた半島という地政学上の「位置」が日韓併合の根本原因です。
 日露戦争で手に入れた朝鮮を経営するために、山に木を植え土地を改良し、ダムを造って電力を起こし、窒素肥料を生産することから始めねばならなかったわけです。

 「内鮮一体」「皇民化」などのスローガンを考えると、日朝の関係は19世紀の帝国主義と植民地の関係とは少し違うように思われます。日本民族が朝鮮民族を支配しようとする「植民地主義」には違いありません。植民地化したわけではない「併合」だ自己弁護しても、朝鮮を土足で踏みにじった野蛮で暴力的な国だと言っても仕方がありません。帝国主義はそういうものです。列強の餌食にされるのが嫌だったら大院君や高宗は朝鮮の近代化(富国強兵)を進めればよかったのです、アヘン戦争の情報も入っていた筈ですから。日本はアヘン戦争に震え上がって開国に舵を切り、維新への道を突っ走ったわけです。
 中国の唱える「一帯一路」は、見方によっては新たな植民地主義です。19世紀に李朝が大国の間で揺れ動いたように、現在の韓国もこの新たな植民地主義に翻弄されているように見えます。

 例えば国籍。韓国併合によって朝鮮人は日本国籍を持つことになりますが「国籍法」は適用せず、朝鮮戸籍令(1922)を制定し、朝鮮戸籍から内地戸籍への転籍を禁止します。「内鮮一体」を謳いながら、朝鮮戸籍令を用いて朝鮮人と日本人を法的に峻別したわけです。ちなみに満州帝国には国籍法が無く、「暫行民籍法」を制定し、満州国の「民籍」に記載された者は満州国人民ととなり、日本人であっても、満州国の「民籍」に記載されれば、日本人であると共に満州国の国民でもあったようです。

創氏改名
1940年2月には、「朝鮮民事令改正ノ件」「朝鮮人ノ氏名ニ関スル件」が施行され、「創氏改名」がおこなわれた。「創氏」は日本式の「氏」を創設し、社会生活上の呼称を転換させて、日本式の家族制度を導入しようとする政策であった。・・・朝鮮の従来の家族制度では、父方の祖先の「姓」が子に継承され、夫妻間では姓を異にした。つまり朝鮮人の姓は血統を中心とした称号であった。しかし、総督府はそれに対し、家系の称号である氏を創設し夫妻と子どもにすべて同じ名字を名乗らせることで、家族制度の改変を迫ったのである。

 有名な「創氏改名」は「内鮮一体」の象徴的な政策でしょう。男女の結婚を基本とした日本的「家族制度」によって、父系の血統を重んじる儒教社会を壊そうとしたわけです。朝鮮の社会改造と民族の思想改造を狙ったわけです。日韓併合は、朝鮮の植民地化ではなく、民族の同化だったのです。
 自ら氏を届ける(設定創氏)か、期限までに創氏の届けが無かった場合は自動的に戸主の姓を氏とした(法定創氏)ようです。

 所謂「徴用工」と「従軍慰安婦」はどうかというと、

徴用工
戦争の長期化にともない、日本での労働力がおおいに不足することになった。そこで、日本政府は国家総動員法や1939年の国民徴用令公布によって内地・外地における労務動員計画を立てた。当初朝鮮人労務者は「募集」形式で動員する計画となっていたが、「募集」とはいえ、実際には行政や警察などが強く「勧誘」していた。日本に連れてこられた朝鮮人労務者はおもに土木、炭鉱、鉱山などで苛酷な労働に従事させられた。42年には「募集」形式から「官斡旋」形式へと変更され、対象業種も金属、化学、航空機、運輸などにまで拡大された。また、国民徴用令は公布時には朝鮮人は除外されていたが、44年9月から朝鮮人にも適用された。45年10月の厚生省の調査では、39年から45年までの間で、内地へ割り当てられた朝鮮人の数は約91万人、実際に動員された朝鮮人労務者は約67万人であったとされる(厚生省勤労局「朝鮮人集団移入状況調」1945年10月)。

 募集→勧誘→官斡旋→1944年9月より徴用ですが、「「募集」とはいえ、実際には行政や警察などが強く「勧誘」していた。」、「朝鮮人労務者はおもに土木、炭鉱、鉱山などで苛酷な労働に従事させられた」と記されます。どう読んでも、日本の官憲が朝鮮人を徴発し過酷な労働に従事させた、と読めます。
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私の散歩コースにも朝鮮人労働者の慰霊碑が建っています。1930年の光明池築造工事に300人の朝鮮人労働者が動員され、10数人が犠牲となったようです。

慰安婦
日中戦争以降、日本、中国、東南アジアに軍が直接・間接的に関与するかたちで設けられた軍慰安所で将兵たちの性の相手をさせられる日本軍「慰安婦」も存在した。彼女たちは、多くの場合、経済的な貧困にあえぐ未婚女性であって、警察や軍隊と繋がった朝鮮人の徴集業者を介在して就業詐欺や人身売買などによって「慰安婦」とさせられた。慰安所は軍や業者の経営する軍専用のものもあれば、民間の遊郭を指定する場合もあった。「慰安婦」とされた女性は女性差別のほか衛生管理や待遇の面で民族差別を受けるなど重層的な差別を受けた。

 さすがに官憲によって「拉致」されたという表現、「従軍」という形容はありませんが、「警察や軍隊と繋がった朝鮮人の徴集業者を介在して就業詐欺や人身売買などによって」とありますから、警察、軍隊が詐欺と人身売買に携わったということになります。

 本書と同じ出版社(山川出版)の中学教科書にも 「多くの朝鮮人や中国人が日本に徴用され、鉱山や工場などで過酷な条件の下での労働を強いられた」「戦地に設けられた『慰安施設』には、朝鮮・中国・フィリピンなどから女性が集められた(いわゆる従軍慰安婦)」とあるそうです。

【朝鮮史1】
【朝鮮史2】

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絵日記 ラズベリー と ラズベリー・パイ と 桑の実 [日記 (2021)]

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ラズベリー、桑の実          ラズベリー・パイ(食べられませんw)
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 ご近所の庭にラズベリーの実が沢山なっています。で、一時凝っていたワンボードコンピューターのラズベリー・パイを思い出しました。appleは林檎だし、blackberryはブラックベリーだし、コンピューターは果物が好きなようです。ラズベリー・パイはお菓子ですが。
 ラズベリーだと思ったのですが、どうも桑の実(マルベリー)らしい。『赤とんぼ』で小カゴの摘んだ「山の畑の桑の実」。この歳になって初めて桑の実を見ましたw。

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