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BSシネマ 武士の一分(2006日) [日記(2012)]

武士の一分 [DVD]
 『たそがれ清兵衛』『隠し剣 鬼の爪』に続く山田洋次の時代物三部作だそうです。原作は藤沢周平の海坂藩もの。
 藤沢周平、山田洋次ですから、観客の涙と拍手を取るツボは心得たものです。海坂藩の下級武士を主人公に、つましい暮らしの中で若い武士とその妻との愛を、適当に立ちまわりも入れて人情ものに仕立て上げます。
 山田洋次の三部作をみると、三本とも共通の「型」から成り立っています。

・観客の目線に近い冴えない下級武士を主人公にとり、庶民の哀感を前面に押し出す
・この何処にでもいそうな武士が、実は隠れた才能=剣の腕を持っている
・妻または武士の恋人を配置し、最後はhappy endになる悲恋を用意
・武士にとっては災難でもある事件を用意し、実は隠れた才能=剣の腕で乗り切る
・最後は、よかったよかった
 主人公は三十石取りの「お毒味役」三村新之丞(木村拓哉)。妻加世(檀れい)と新之丞が幼い頃から仕えている中間の徳平(笹野高史)とつましく暮らしているという設定。新之丞も加世も幼くして両親を亡くした天涯孤独の境遇。
 この「お毒味役」とは、文字通り藩主の食事を事前に毒味する役です。藩主と同じ食事が食べられると云ういい仕事だと思ったら、さにあらず。数人の同役がいて、1品ずつ毒味をするようです。新之丞が毒味をした刺身が季節によって毒を持つ貝だったために、中毒をおこし高熱で失明するという災難にあいます。
 絶望のあまり死ぬの何のと加世と徳平を困らせるわけで、この辺りが第1の見せ場。失明すれば仕事もできないわけで、三十石と士分を失い路頭に迷うと親戚一同おお騒ぎとなります。仕事上の事故ですから、江戸時代といえど普通労災がきく筈だと思うのですが。

 何処にでもお節介はいるもので、盛り場で加世が侍と歩いているのを見たという話しが新之丞の耳に入ります。加世は失明した夫をかいがいしく世話するけなげな妻として描かれていますから、新之丞も観客も加世の不貞など信じられません。失明で落ち込み自信を失っていますから邪推して、徳平に加世の後を付けさせます。ところが、加世は出会い茶屋に入り後から立派な武士が...オイオイそれは無いだろう。

 出会い茶屋に入ったところを徳平に見られた加世は、自らの不貞を新之丞に告白することを徳平に伝えます。このシーンは泣かせます。徳兵は、出会い茶屋に入る加世を見たが、あれは加世では無い、加世を小さい頃から知っているが不貞をはたらくような女ではない、と。加世は、ます。加世は徳平につけられていることを承知で出会い茶屋に入ったわけですから、その時覚悟が出来ていたことのなります。

 加世の不貞には当然に事情があり、最後は『武士の一分』を賭けて新之丞の盲目の剣が一閃します。

 徳平を演じる笹野高史は、寅さんや『釣りバカ日誌』の常連で私でも知っています。今回、改めてこの俳優さんの芸のうまさを堪能しました。“さりげない”と云うのはこういうことなんですねぇ、達者なものです。木村拓哉もうまいものですね。失明して妻に不貞をはたらかれたという新之丞を、テキトーにユーモもある“キムタク”の地で演じて違和感が無いのですから、立派。まぁ山田洋次の腕の冴えもありますが。

監督:山田洋次
出演:木村拓哉 檀れい 笹野高史

タグ:BSシネマ
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