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映画 裏切りのサーカス(2011英仏独) [日記(2014)]

裏切りのサーカス スペシャル・プライス [DVD]ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ (ハヤカワ文庫NV)
 原題は、Tinker Tailor Soldier Spy。ジョン・ル・カレ『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ(1974)』の映画化です。
 東西冷戦が厳然として存在した時代の、イギリス諜報部(MI6、通称サーカス)に潜り込んだ‘モグラ’(二重スパイ)を炙り出す映画です。MI6が舞台ですが、ドンパチも無いし(少しはある)アクションもありません。プロットと会話で成り立っている映画なので、しっかり見ていないと何が何だか分かりません。
 2012年の公開当時この映画には「リピーター割引」という制度があって、2回目以降は1000円で見られたそうです。2回3回と見ないと分からない、2回3回見るほどに面白いということでしょう。

 モグラというのが、下っ端の工作員であれば問題ないわけですが、サーカスの幹部5人のうちのひとりです。諜報部の幹部が二重スパイというと一見荒唐無稽な話ですが、キム・フィルビーの例があり、イギリスでは現実的な話だろうと思われます。

 サーカスのチーフであるコントロール(ジョン・ハート)は、もぐらの正体をバラすという東側の将軍と接触させるためにプリドー(マーク・ストロング)をブダペストに送り込みます。モグラから情報が漏れ、プリドーは銃で撃たれ東側に捕まります。この単純な事件が、ラストで謎解きされアアそういうことか、となります。

 事件の責任をとってコントロールとその右腕のスマイリー(ゲイリー・オールドマン)はサーカスを去ります。コントロールは、モグラの被疑者にコードネームを付け、死んでしまいます。

ティンカー(鋳掛け屋、パーシー・アレリン)サーカスの新しいチーフ
テイラー(仕立屋、ビル・ヘイドン)サーカスのロンドン本部長
ソルジャー(兵隊、ロイ・ブランド)ロンドン本部長補佐
プアマン(貧乏人、トビー・エスタヘイス)点灯屋(後方支援部隊)の長
ベガマン(乞食、スマイリー)サーカス退職者
 
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 ティンカー(トビー・ジョーンズ)          テイラー(コリン・ファース
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 ソルジャー (キーラン・ハインズ)         プアマン(デヴィッド・デンシック
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 ベガマン(ゲイリー・オールドマン)        コントロール(ジョン・ハート)
 
 スマイリーも疑われていたわけです。これが、「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」の謂われです。イギリスの童謡、“Tinker, Tailor, Soldier, Sailor, Rich Man, Poor Man, Beggar Man, Thie”に由来するらしいです。

 サーカスの工作員からモグラの情報がもたらされ、サーカスを辞めたスマイリーに非公式に調査が依頼されます。スマイリーはピーター・ギラン(ベネディクト・カンバーバッチ)と警視庁の元警部メンデルとともにモグラ狩りを開始します。モグラ狩りを命じられた時、このふたりの名前がスッと出てきますから、どうも昔からの仲間のようです。

 一方、コントロールが辞めた後、パーシーがサーカスの新しいチーフとなります。パーシーはソ連大使館の書記官から情報を取る「ウィッチクラフト作戦」を指揮し、アメリカにも情報を流し華々しい成果を挙げています。
 このうますぎる「ウィッチクラフト作戦」に疑問を感じたスマイリーは、情報提供者の大使館員の背後に「カーラ」というKGBの大物スパイがいることを突き止めます。カーラこそ、スマイリーが西側に引きこもうとして失敗した因縁のスパイであり、モグラをあやつるスパイマスターだったというわけです。モグラ狩りが、いつしかスマイリーvs.カーラの対決に変わります。 

 主人公のジョージ・スマイリーは、くたびれた初老のスパイで、サーカスの元同僚アンを妻にしています。調査のため訪問したサーカス退職者に、「アンはまた家を出たそうね、アンタに相応しくない女だ」と言われています。後に分かるのですが、アンとヘイドンは不倫関係にあり、スマイリー自身それを知っているという、どうにも絵にならないスパイです。
 スマイリーの弱点がアンだと見抜いたカーラは、モグラのヘイドンを使ってアンを誘惑させ、サーカスの切れ者スマイリーに揺さぶりをかけていたのです。ヘイドンこそモグラだったのです。

 スマイリーは罠をかけてヘイドンを炙り出しし、ヘイドンはプリドーによって暗殺されるという結末を迎えます。ブダペストで捕まったプリドーは、捕虜交換か何かでロンドンに舞い戻り、プリドーはカーラの指示でモグラを始末したのでしょう。と言うほど単純な結末かどうか。この暗殺シーンの前に、プリドーとヘイドンがパーティーで微笑みを交わすシーンがあります。ヘイドンは、カーラと掛け合ってプリドーを取り戻したとスマイリーに話しています。よく分からない結末です。
 
 ウィッチクラフト作戦の欺瞞が暴かれてパーシーはサーカスを去り、その席にはスマイリーが座ることになって幕。

 で、お薦めかと云うとこれは難しい。スパイ映画は大好きだが、007のようなアクション映画には物足りない、という方にはお薦めですが、地味な映画なので楽しめるどうかは保証できません。
 スマイリーがカーラの亡命を説得する回想シーンです

長年互いの体制の弱点を探る仕事をしてきた
どちらの体制であれ 大した価値はないと認める潮時だろ?

 スマイリーは、東西に別れて祖国のためにしのぎを削るスパイ活動も、大した価値はないと考えています。カーラの妻を説得材料にしながら、自分の妻アンとのゴタゴタが頭をよぎるというきわめて人間的なスパイとして描かれます。片や自由主義、片や共産主義の国家に忠誠を誓い、暴力と謀略にまみれたスパイも、つまるところ孤独な弱い人間に過ぎない。パーシーにしろ、ヘイドンにしろ、ブランド、エスタヘイスも、ギランもプリドーもそうした人間として描かれ、この辺りが映画の魅力となっています。
 そうした文脈で見ると、プリドーが小学校の教師となり、孤独な転校生と心を通わすエピソードも、スマイリーに身辺整理をしておけと言われたピーターが、自宅へ帰って同居の友人との分かれに泣くシーンも、主人公のスマイリーがモグラを狩りながら、若い妻の浮気に悩まされ設定も、納得がゆきます。

 過去と現在が交差し登場人物の関係が複雑で、これは「リピーター割引」が必要な映画です。実は2回見ましたが、2回見ても未だよく分かりません。原作を読んでみます。→読んでみました

監督:トーマス・アルフレッドソン
出演:ゲイリー・オールドマン コリン・ファース トム・ハーディ ジョン・ハート トビー・ジョーンズ

タグ:映画
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