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藻谷 浩介、NHK広島取材班 里山資本主義 [日記(2015)]

里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)
 副題は、" 日本経済は「安心の原理」で動く .."。
 本書は、NHKの取材班が里山の元気な人、組織、企業を取材し、日本総研のエコノミストがそれに解説を加えるという二部構成をとっています。広島放送局ですから、取材地は主に中国地方です。
 「里山」とは地方の山(農)村のことで、晴耕雨読のノンビリした里山暮らしはTVの向こうに見る分には理想郷です。豊かな自然が残る一方、高齢化が進んだ過疎の村であり、集落そのものの消滅が危ぶまれる 限界集落もあります。

 まず、そんな里山にある岡山県真庭市の製材会社が紹介されます。輸入材に押され凋落の林業のなかにあって、この会社は製材の廃棄物である木クズで木質バイオマス発電を行い、年間4億円の利益を産み出していることが紹介されます。さらに木クズはペレットに加工販売され、真庭市では石油に変わるエネルギーとして利用されています。衰退産業といわれる林業も発想の転換でという話ですが、東日本大震災、原発の文脈で語られると説得力があります。
 真庭市で生産される木材が真庭市で消費されるわけですから、地産地消。重要な点は、お金が地域で循環し外へ出て行かないということです。自家発電による電力で工場動を動かし、市民はペレットのストーブを使うことで、電気と石油に払うお金が真庭市に留まり、新たな消費と雇用を生んでいます。そして、この財は里山に眠っている、これが「里山資本主義」の根幹です。
 さらに、この里山資本主義を国を挙げて取り組み、 原発を憲法で禁止したオーストリアの事例が紹介されます。

 里山資本主義はハードウェア、エネルギーの話に限った話ではありません。生産者と直結した周防大島の「島のジャム屋さん」、耕作放棄地を利用した島根の「日によって味の変わる牛乳」、「耕すシェフ」、八頭の「ホンモロコ共和国」、地域の老人の生き甲斐を創造し「無縁社会」克服を目指す福祉法人など、里山に眠る力を引き出す事例がいくつか紹介されます。

 真庭市を日本という国に置き換えれば、つまり日本が地産地消すれば、産油国に払う金が減り、お金は国内で循環して新たな消費と雇用を生み、貿易収支は改善されるということになります。真庭市の発電とペレットは、産業廃棄物の木くずが前提となっています。木を切って木くずを生産すれば採算に乗らないため、この真庭モデルを日本全国のどの町や村にも適用することはできませが、真庭市のように、先祖が築いてきた里山(に象徴される日本の自然)に目を向ければ、まだまだ活用できる資本が眠っているということです。
 マネーゲームはリーマンショックを引き起こし、東日本大震災は化石燃料に頼ってきた生活を一気に突き崩しました。そろそろ、経済成長を唯一の指標とする景気絶対論の「マネー資本主義」を止めて、「里山資本主義」でゆきませんか?というのが本書の主張です。

 田舎暮らしの薦めという話ではありません。

「里山資本主義」とは、お金の循環がすべてを決するという前提で構築された「マネー資本主義」の経済システムの横に、こっそりと、お金に依存しないサブシステムを再構築しておこうという考え方だ。(p121)

 じゃあ都会に住んでいる我々はどうすればいいのか?。家庭菜園でも始めるか、キッチンでエコストーブを使うのか?。そうもゆきませんから、毎日の生活の意識のなかに、何らかのサブシステムを組み込むこと(それが何だと言われても困りますが)、できることはせいぜいその程度です。このサブシステム=保険=安全弁という考え方は気に入りました。
 「人生の楽園」というTV番組があります。 この番組を欠かさず見ている私には面白い一冊でした。本書に登場する「エコストーブ」は是非作ってみたい。

タグ:読書
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