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映画 ある天文学者の恋文(2016伊) [日記(2017)]

ある天文学者の恋文 [DVD] 原題はcorrespondence、手紙、通信。『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ最新作です。前作『鑑定士と顔のない依頼人』では、オートマタ(機械人形)や絵画オークションという幾分ゴシック的な小道具、背景を使ったラブストーリー?でしたが、本作は恋文がパソコンやスマホで交わされるラブストーリーです。
 天文学教授のエド(ジェレミー・アイアンズ)と親子ほどの年の離れた学生エイミー(オルガ・キュリレンコ)の恋です。初老の男と若い女の恋は、『鑑定士』では女が仕掛けた偽物の恋でしたが『天文学者』では本物の恋。エイミーはエドの教え子ですから、ホテルで別々の部屋を取って密会する道ならぬ恋?。エドの奥方は登場しませんから、不倫かどうかは謎。
 エドとエイミーの"correspomdence"はスマホによるSNS、eメールとPCのTV電話。電話が通じなくなり、やがてエイミーはエドが脳腫瘍で死んだことをを知ります。ところが、エドの最後のメールのタイムスタンプは彼が死んだ後。そして、エイミーの行動を見ているかの様なタイミングで次々にメールが届き、エドの登場するDVDが配達されて来ます。エドは生きているのか、それともメールはあの世から送られてくるのか、誰かがエドの名前を騙っているのか?。映画は観客をこの謎で後半まで引っ張っていきます。

 エドが死んでいることは、電話は通じない、SNS、メールが一方通行などで察しがつきます。若い娘と初老の男の恋、女性の方がゾッコンなのですからとやかく云う話ではないのですが、頻繁にメールやDVDが届くのはストーカーすれすれ。しかも男は死んでいるのですから怖いです。では何故死後にメールやDVDが届くのか。何のことはない協力者がいるわけです。
 この映画のポイントは、現代の恋愛にITを持ち込んだこと、死後も女性との繋がりを保とうする男の恋の執念(妄執)でしょう。エドを天文学者であることも象徴的です。地球で観測される何万光年も離れた超新星は、最早存在していないのです。エドもメールという光を放っていますが、この世には存在しない星だというわけです。

 かつてはエイミーの試験に合わせてタイムリー届いたエドのメールは、次第にズレてきま。つまり、死後までエイミーと繋がろうとしたエドの目論見は脆くも崩れます。つまり、エイミーがエドの軛から自由なる時です。

 といろいろ工夫された映画ですが、いまいちピンと来ません。『鑑定士』は初老の男の視点、『天文学者』はエイミーの視点で描かれています。見ているコッチが老人ですから、エイミーが如何に恋い焦がれようがシラケ、エドの妄執だけが空恐ろしい。60歳を超えたトルナトーレの自戒の映画でしょうか。
 トルナトーファンとしては不満の残る作品です。


監督:ジュゼッペ・トルナトー
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:オルガ・キュリレンコ ジェレミー・アイアンズ


【当blogのジュゼッペ・トルナトーレ】

マレーナ(2000年伊) 
ある天文学者の恋文(2016) →このページ

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