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映画 特捜部Q―カルテ番号64-(2018デンマーク独) [日記 (2020)]

特捜部Q カルテ番号64 [DVD] 特捜部Q―カルテ番号64―(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)  特捜部Qは、小説で8冊、『檻の中の女』『キジ殺し』『Pからのメッセージ』『カルテ番号64』と4本が作映画化されているデンマークの人気シリーズです。シリーズの面白さは、コペンハーゲン警察の迷宮入り事件専門の「特捜部Q」のメンバー、リーダーのカール、シリア移民のアサド、秘書で多重人格者ローセの3人の魅力です。特捜部と言っても、ハミ出し刑事の烙印を押されたカールを隔離するために、警察署の地下に設けられた「追い出し部屋」。従って捜査する事件は迷宮入りばかり。その特捜部Qが、事件を次々と解決するというよくある話です。

 『カルテ番号64』はアサドの異動から始まります。アサドが異動?、特捜部Qファンには寝耳に水で、カールとアサドのコンビが解消されれば面白さが半減します。まずアサドの異動で驚かせ、ストーリーは1961年と2018年の過去と現在が交差する本題に進みます。
 アパートの隠し部屋から、3体のミイラが発見され、カールとアサドが出動します。ミイラは内臓が抜かれ、側にはペニスや女性器のホリマリン漬けがあるという猟奇的な事件。死後10年以上の3体はテーブルを囲んで椅子に座り、犯人が座ったと思われる椅子が1脚。部屋の住人のギテが容疑者として指名手配され、残された免許証等から3体のミイラは、ニーデ、リタと弁護士ナヴィーと身元が判明します。ナヴィーがスプロー島の女子収容所に関わる訴訟に携わっていたことで、ニーデ、リタはとギデは1961年の女子収容所で接点を持っていたことが明らかになります。ニーデ、リタは収容者、ギデは収容所の看護師と判明し不妊手術をし訴えられナヴィーが弁護した収容所の医師クアトが捜査線上に浮上します。

 この女子収容所がいかなるものであったのか、ユッシ・エーズラ・オールスンの原作から引用すると、

本書に描かれている女子収容所は、1923年から1961年まで、大ベルト海峡に浮かぶスプロー島に実際に存在し、法律または当時の倫理観に反したか、あるいは”軽度知的障害”があることを理由に行為能力の制限を宣告された女性を収容していた。
 また、無数の女性が不妊手術の同意書にサインしなければ、施設すなわちこの島を出られなかった・・・

 福祉国家デンマークの行き過ぎた福祉政策が生んだ収容所です。ローセも「スプロー島に送るぞ」と父親に脅されたと言いますから、この女子収容所はデンマーク国内ではポピュラーな存在だったようです。
 死体の一人と考えられるニーデは、従兄弟と関係して妊娠したためこの収容所に送られ、ギデ、リタと出会ったのです。看護師ギデは何故ニーデとリタ、弁護士を殺しミイラとしたのか?、3体のミイラがテーブルを囲んでいた意味とは?…。

 『特捜部Q』シリーズは、シリア移民のアサドが登場する様に、デンマークの社会を映し出したミステリです。なかでも、『カルテ番号64』は福祉国家の闇を浮き彫りにした一編です。シリーズですから、『檻の中の女』『キジ殺し』『Pからのメッセージ』を先に観るとカール、アサド、ローセの関係が分かって面白いですが、『カルテ番号64』だけでも楽しめます。
 書籍の方もアサドの謎が明かされる第8作『アサドの祈り』が刊行されました、読んでみます。

監督:クリストファー・ボー
出演:ニコライ・リー・コス ファレス・ファレス ポール・スヴェーレ・ハーゲン

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