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映画 国家が破産する日(2018韓) [日記 (2021)]

国家が破産する日 [DVD]  原題、default、債務不履行。昨今、韓国では中央銀行(韓国銀行)が政策金利引き上げをアナウンスし、借金で株価と不動産価格が高騰するバブルに警鐘を鳴らしています。1997年の韓国の通貨危機が再びやってくるのか?という興味で観てみました。
 映画は、タイに始まるアジアの為替下落に巻き込まれ、IMF管理に陥った韓国を描いたドラマです。

 1997年当時の韓国は、鉄鋼、造船、半導体に支えられた好景気で、政府は経済成長率7%を予測し、外貨準備高158億ドル。OECDへの加盟を果たし、1人あたり国民所得は1万ドル、85%の国民が中間層だと感じています。1997年11月に、この韓国にウォン下落による金融危機が訪れます。この未曾有の危機を3つの局面で描きます。1)金融危機に警鐘を鳴らす韓国銀行の通貨政策担当者、2)危機を予測しこれを機に一攫千金を狙う金融コンサルタント、3)金融危機の波をもろに被る町工場の経営の3人。

●韓国銀行通貨政策チーム長=ハン・シヒョン(キム・ヘス)
 金融危機をいち早く予測し警鐘を鳴らしますが、彼女(そう女性なんです)のレポートは10日間店晒しに会い、韓国銀行トップに届いたのは国家破産まで1週間に迫った時。早速大統領(ちなみに金泳三)に報告となります。

今、大統領は機嫌が悪い、難解な話をすると怒る(大統領秘書室長)
平易に説明しろ!(中央銀行総裁)
数字を使わずに?(中央銀行幹部)
借金の返済を遅らせて、浪費していたら、「おおごと」になりました、と言えば?(ハン・シヒョン)

 ハンは事態の被害を最小限に食い止めるため国民に知らせるべきだと主張し、財務局次官パクは知らせるな、とふたりは衝突します。1997年は大統領選挙を翌年に控えた年であり、経済政策失敗の公表は選挙に影響するというわけです。ハンは、後のIMF救済についてもこの次官と激しく対立します。

財務局次官=パク・デヨン(チョ・ウジン)
 国家破産を避けるためにMF管理下に入る道を選択します。中小企業の倒産と大量解雇を厭わず、手形決済の繰延で大企業救済の政策を主張。

●金融コンサルタント=ユン・ジョンハク(キム・ヘス)
 ノンバンクの課長ユンは、金融危機を察知し「難破船では先に逃げ出したヤツが助かる」と辞職し、金融コンサルタントとなります。ユンもまたバブルの崩壊を予測し、ウォンを売ってドルを買いウォン下落によって差益を稼ぎ出すことを顧客に提案します。投資家のひとりは、政府が市場経済の崩壊を防ぐだろうと言い、ユンは、

政府は沈黙する、国が滅びつつあることが明らかなのに、連中は知らないフリをする

●町工場の経営者=ガプス(ホ・ジュノ)
  ガプスに百貨店との大口取引が舞い込み、ガプスは手形決済で製品を納入します。納入代金の手形が不渡りとなり自殺一歩まで追い詰められます。

 ユンを狂言回しに、「国家破産」を中央銀行、政府、中小企業の構図として描きます。

 外資の韓国逃避がはじまりウォンは下落、外貨準備高158億ドル(実質は90億ドル)は見る間に減り、国家は破産寸前 →政府はIMFに救済を要請します。ハンとパク、IMF理事(ヴァンサン・カッセル)の交渉がこの映画の山場です。IMFは融資の条件に政府に要求を突きつけます。

 ・ノンバンクを営業停止にする(韓国の中小企業はノンバンクに依存しているらしい)
 ・政策金利を12.5%から30%の引き上げ
 ・資本市場の開放
 ・労働市場の改革(レイオフと非正規雇用の推進) などなど

 IMFの要求を飲めば、企業は倒産し、外国資本を呼び込み敵対的買収が起こり、失業者が増大し韓国経済はボロボロ。多大な犠牲をはらって国家破産を回避するか、自立再建の道を選ぶかの分かれ道です。交渉の最中に韓国の信用格付けがB-になったニュースが入り、選択の余地は無くなります。
 IMF理事の宿泊するホテルにアメリカの財務省次官が同宿していたことで、ハンはIMFの背後にアメリカの市場解放圧力があることを見抜きます。交渉の途中に韓国の信用格付けが大巾に下げられ(格付け機関はアメリカの民間会社)、IMF理事はB-はジャンクボンド一歩手前だ、次はウォンが紙クズになると圧力をかけます。

 IMF管理よりモラトリアム(支払猶予、破産)を選択し、中小企業と雇用と経済の自立性(独立)を守ろうとするハン。中小企業を切り捨て、大企業には手形不渡りの免責を与えてでも倒産から守ろうという経済官僚パク、金融危機に乗じて韓国の経済を解体し市場に食い込もうと画策するIMF(とアメリカ)。アメリカの圧力と国内保守勢力(経済官僚)を向こうにまわし、ヒロイン中央銀行のハン・シヒョンが孤軍奮闘 →絵になります。
 韓国はIMF融資によって破産を免れます。『国家が破産する日』は、国はバブルの責任をとって破産すべきであり、安易な延命は問題を先送りしただけだという映画です。2008年にも通貨危機が起き、今また、株価と電子マネーが高騰し家庭債務が膨張していますから、この映画の警告は国民に伝わったのかどうか?。もっとも、国家債務が1000兆円を超える日本も他人事ではありませんが...。
 硬派のドラマですが、骨太で面白いです。

監督:チェ・グクヒ
出演:キム・ヘス、ユ・アイン、ホ・ジュノ、チョ・ウジン、ヴァンサン・カッセル

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密偵(2016韓)、新感染 ファイナル・エクスプレス(2016韓) タクシー運転手(2017韓)、哭声/コクソン(2016韓) 、パラサイト 半地下の家族(2019)、暗殺(2015韓)

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