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伊藤正一 定本 黒部の山賊 アルプスの怪 (2014 山と渓谷社) [日記 (2023)]

ヤマケイ文庫 定本 黒部の山賊 山渓のサイトに要領よく纏まった本書の紹介があります、そちらをご参照。初版は昭和39年。

 目次
Ⅰ   山賊たちとの出合い
Ⅱ  山賊との奇妙な生活
Ⅲ 埋蔵金に憑かれた男たち―別派の山賊
Ⅳ 山のバケモノたち
Ⅴ  山の遭難事件と登山者
Ⅵ 山小屋生活あれこれ
Ⅶ その後の山賊たち

 著者は、昭和22年、北アルプスの最奥地にある山小屋”三俣蓮華小屋”の経営を引き継ぎます。

そのころ、三俣に入るには二日以上もかかって、アルプスの高峰をいくつも越え行かなくてはならなかった。
まず大町方面からは、濁小屋を通り、アルプスの三登りといわれるブナ立尾根の急坂をよじて烏帽子小屋に出る。つぎに三ッ岳、野口五郎岳、赤岳、鷲羽岳を越えて行く。もう一つの道は上高地から槍ヶ岳の肩へ登り、西鎌尾根をつたって樅沢岳、双六岳を過ぎて行かなくてはならない。有峰または薬師を通っていく富山側の道のりは四日かかった。

著者は、湯俣温泉から湯俣川沿いに三俣山荘に至る「伊藤新道」(1956年開通、現在廃道)を開削した人物です。
黒部ダムができる前で、三股は北アルプスの秘境だった様です。終戦後間もなくの頃ですから、登山者も少なく小屋は荒れ放題。三俣小屋には、食い詰めた男達が住み着き、登山者から金品を奪う山賊だと噂されます。

 明治以前から長いあいだ、 黒部は遠山一家の猟場であり、すみかでもあった。そしてカモシカを獲ることは彼らにとっては正当な生活手段だった。 
 私は富士弥(山賊のひとり)に、「いままでに熊やカモシカを何頭くらい獲ったか」と聞いたことがある。彼は”そんな数はぜんぜん数えられない"といった面持ちだったが、それでも「熊は五~六〇〇頭、カモシカ二〇〇〇頭は下らないだろう」と言った。
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 熊やカモシカを狩り、毛皮や”熊の胆”を売る山賊はいわゆる”マタギ”でしょう。山で事件が起こると異界の住人の仕業とされ、山賊神話を生んだのでしょう。三俣蓮華小屋の主人の著者と、彼等の交情と山の不思議を綴った一書です。尺イワナを80匹釣った話、熊撃ち、佐々正成の埋蔵金、カッパ、人を化かす狸の話などの山の怪談 などなど。さながら黒部の「遠野物語」です。

タグ:読書
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