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映画 最後の決闘裁判(2021英米) [日記 (2023)]

最後の決闘裁判 [DVD]
 原題、The Last Duel。舞台は14世紀の百年戦争下のフランス。騎士カルージュ(マット・デイモン)の妻マルグリット(ジョディ・カマー)は夫の友人の従騎士ル・グリ(アダム・ドライバー)にレイプされたと告白したことから始まります。

 映画は、カルージュ、ル・グリ、マルグリットの証言の三部構成です。
マルグリットはル・グリが家に押し入って凌辱されたと証言し、ル・グリは、マルグリットは不倫を受け入れ、レイプではなく合意の上だと言い、カルージュはル・グリとの因縁を述べ、ル・グリは、マルグリットをレイプしたのか? →真実は『藪の中』。

 妻を凌辱されたカルージュは、決闘裁判を申請します。決闘裁判とは、「証人や証拠が不足している告訴事件を解決するために、原告と被告の両当事者が決闘を行うゲルマン法の一つの方式」(wikipedia)で、カルージュが決闘に勝てばル・グリは有罪となり、もし負ければ、妻マルグリットも偽証の罪で火あぶりの刑を受けます。

領地争い
 この映画で面白いのは、『藪の中』だけではなく、カルージュの跡継ぎ問題、カルージュとル・グリの領地争いが関わっていることです。カルージュは由緒ある家柄ですが没落して地租も払えず、ル・グリは領主(ベン・アフレック)に取り入って地租を取り立てます。カルージュは、持参金目当てで、一時イングランドに寝返った(フランスを裏切った)貴族の娘マルグリットと結婚します。ル・グリは、カルージュからマルグリット持参金の土地を地租として取り上げ、領主は報酬としてこの土地をル・グリに与えます。おまけに世襲の城主の地位もル・グリに奪われる始末。

跡継ぎ
 マルグリットと結婚しますが5年経っても跡継ぎに恵まれません。当時、妊娠は妻のオルガスムと関係があると考えられ、跡継ぎを待ち望むカルージュの母親は、オルガスムを感じているのかとマルグリットに問います。ストーリーにセックスが加味されます。

レイプ
 マルグリットに横恋慕するル・グリは、カルージュの母親が召使いを連れて外出した隙にカルージュの館に押し入りマルグリットをレイプします。マルグリットは凌辱されたと考え、ル・グリはこれは恋なのだマルグリットも私を愛している、合意の上の「和姦」だと考えます。ル・グリの「後朝の別れ」の捨て台詞は、ふたりは激情に溺れた、カルージュには言うな、言えば彼に殺される。プレーボーイらしい言葉です。
 この「レイプ」の後マルグリットは妊娠して男の子を産みます。レイプによって妊娠したとするなら、彼女はレイプによって快楽を得たことになりますW。赤ん坊の父親はカルージュなのかル・グリなのか?。

決闘裁判
 馬上槍試合による決闘裁判が行われます。この決闘裁判はなかなか迫力がありこの映画のハイライト。勝ちを制したのはカルージュで、”cocu(寝取られ夫)”のカルージュは名誉を回復し、カルージュから土地と世襲の地位を奪いその美貌の妻まで手中にした勝者ル・グリは殺され敗者として吊るされます。

 ラストは、生まれた子供を慈母の眼差し見守るマルグリット。「カルージュは数年後十字軍の遠征で死去、マルグリットは女主人として30年間、裕福で幸せに生きた、生涯 再婚はしなかった」という テロップが流れて幕。

 「神は見ていた」わけですが、リドリー・スコットがそんな映画を作るわけはありません。カルージュとマルグリットは勝者なのか?。もうひとり隠れた勝者がいます、カルージュの母親です。彼女は、召し使いを連れて外出し、無人の館にル・グリ迎え入れマルグリットの妊娠を演出したわけです。目論み通り跡継ぎが生まれます。生まれた子供の髪はブロンドで、ル・グリの髪は黒。子供の父親を知っているのはマルグリットだけというオチです。

 他人の妻を寝取った男と妻を寝取られた男のふたりが命をかけて決闘裁判をする物語ですが、実はその妻と義理の母親の物語でもあります。リドリー・スコットの最新作、83歳にして意気軒昂です。オススメ。

監督:リドリー・スコット
出演:マット・デイモン、アダム・ドライバー、ジョディ・カマー、ベン・アフレック

タグ:映画
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