SSブログ

タランティーノ(1)『ヘイトフル・エイト(2015米)』 [日記 (2024)]

ヘイトフル・エイト [DVD]
賞金稼ぎ
 クエンティン・タランティーノの西部劇です。『ジャンゴ 繋がれざる者』は、奴隷制度下のアメリカ南部で、黒人の賞金稼ぎジェイミー・フォックスが荘園領主レオナルド・ディカプリオを「やっつける」話でした。西部劇ならジョン・フォードの『駅馬車』だろうと言うわけで、黒人の賞金稼ぎを主人公に『駅馬車』を換骨奪胎、笑える西部劇に仕立てます。『ジャンゴ』同様、今回もアメリカの常識に抗うように「ニガー」という言葉が連発されます。『駅馬車』は、産気付いた乗客のため立ち寄った宿駅で起こる、医者、娼婦、ギャンブラー、脱獄囚等乗客の人間模様の描いています。『ヘイトフル8』は、猛吹雪で避難した宿駅「ミニーの紳士服飾店」でヘイトフル・エイトの8人が惨劇を繰り広げます。

ヘイトフル8
 舞台はワイオミングの雪深い山中、「首吊り人」の異名を持つ賞金稼ぎのジョン・ルース(カート・ラッセル)が駅馬車でお尋ね者ドメルグ(ジェニファー・ジェイソン・リー)を護送しています。吹雪で馬を失った黒人の賞金稼ぎマーキス・ウォーレン(サミュエル・L・ジャクソン)が3つの死体と共に駅馬車に乗り込みます。2人とも馬車が目指すレッドロックで懸賞金を得ようというわけです。ウォーレンに続いて、これも雪で馬を失ったマニックス(ウォルトン・ゴギンズ)が馬車に乗り込みます。マニックスは、保安官になるためレッドロックに向かう途中。ルースによって、ウォーレンは南軍に捕まり47人を焼き殺して脱獄し騎兵隊を追い出された元・北軍少佐で、マニックスは南軍を騙った「マニックス略奪団」の元一味だったことが明かされます。「首吊り人」のルース、1万$の懸賞首ドメルグ、脛に傷持つ元北軍少佐ウォーレン、略奪団の一員マニックスと一癖も二癖もある面々が馬車に同乗したことになります。

 馬車は吹雪のためレッドロックの途中にある宿駅「ミニーの紳士服飾店」に避難します。店主のミニーは不在で(これは伏線)、店には留守番のメキシコ人ボブ、吹雪のため足止めされた巡回死刑執行人モブレー(ティム・ロス)、クリスマスのため故郷帰るカウボーイのゲージ、息子の墓を建てるためがレッド・ロックにむかう元南軍の将軍サンディ・スミザーズの4人。これに馬車の4人が加わり「ヘイトフル8」が揃います。

惨劇
 『ジャンゴ』の背景は奴隷制度でしたが、『ヘイトフル・エイト』は南北戦争。南北戦争で奴隷制度は廃止されますから、同じテーマを扱っていることになります。リンカーン大統領と文通し彼の手紙を持っているウォーレンは元北軍少佐、マニックスは南軍の名を騙った強盗団の一味、スミザーズは元南軍将軍。スミザーズは黒人兵虐殺の疑いがあり、ウォーレンは息子を殺した顛末を語って煽り、銃口を向けたスミザーズを撃ち殺します。タイトルの”hate”はアメリカ南北の分断なんでしょうが、南北戦争もリンカーンの手紙もタランティーノ版『駅馬車』の味付けに過ぎません。

 ヘイトフル8の誰かがコーヒーに毒を入れそれを飲んだルースがあっけなく死に、ストーリーが一挙に動き出します。実は、留守番のボブ、巡回死刑執行人モブレー、カウボーイのゲージの3人はドメルグの仲間で、「ミニーの紳士服飾店」の主人と従業員を殺して舞台を作り、ルースからドメルグを奪い返すために待ち受けていたわけです。ウォーレンとマニックスの出現が想定外で毒殺が計画されたのです。
 ウォーレンはこれを見抜くのですが、これが映画のサスペンス部分、続いて起こるお決まりの派手な銃撃戦がアクション部分。この銃撃戦が無いとタランティーノらしくないわけです。かろうじて生き残ったウォーレンとマニックスによって『映画・ヘイトフル・エイト』の謎が解かれます。リンカーンの手紙は、黒人が白人社会で生きる世渡りの道具で、、ウォーレンの「作り話し」だったと。タランティーノは、ジョン・フォード『駅馬車』の人情噺を、黒人と白人、犯罪者と賞金稼ぎの対立に置き換えたのです。
 クエンティン・タランティーノは苦手でどこが面白いんだろうと思っていました。久々に『ジャンゴ』を観て、視点を変えれば意外と面白いことに気づき、タランティーノを観てみます。

監督;クエンティン・タランティーノ
音楽;エンニオ・モリコーネ
出演; サミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、ジェニファー・ジェイソン・リー、ティム・ロス、チャニング・テイタム

タグ:映画
nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。