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タランティーノ(4) ジャンゴ 繋がれざる者(2012米) [日記(2018)]

ジャンゴ 繋がれざる者 [DVD]
 5年ほど前にblogに書いた感想文の全面改訂です。原題、Django Unchained。「ジャンゴ」といえばフランコ・ネロの『続・荒野の用心棒(原題Django、1966)』です。フランコ・ネロに敬意を表して本作にも御本人が登場します。映画の主題は、棺桶を引きずったジャンゴではなく「繋がれざる者」にあります。ジャンゴを繋いでいる鎖はアメリカの奴隷制度。

賞金稼ぎ
 時代は南北戦争の少し前、歯科医で賞金稼ぎのドクター・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)と彼に助けられた黒人奴隷のジャンゴ(ジェイミー・フォックス)の話です。シュルツは賞金首のナントカ三兄弟を追っていますが顔を知りません。三兄弟を首実験させるために、彼等が働いていた牧場の奴隷ジャンゴを探し出し、ジャンゴを自由の身にして賞金稼ぎの相棒とします。
 ジャンゴには同じ牧場で働いていた奴隷ブルームヒルダ(ケリー・ワシントン)という妻があり、ふたりとも売り払われて生き別れという設定です。ブルームヒルダはドイツ語が話せ、名前の謂われは『ニーベルンゲンの指輪』。シュルもまたドイツ移民だったことで、賞金稼ぎをしながらアンタの奥さんを探そうということになります。ストーリーは、シュルツの賞金稼ぎの話にジャンゴの妻探しにが絡むことになります。シュルツはジャンゴを白人同様の服を着せ拳銃を帯びさせ馬に乗せます。この「黒人の賞金稼ぎ」は次作『ヘイトフル・エイト』に引き継がれます。
 クリストフ・ヴァルツが演じるシュルツは、前作『イングロリアス・バスターズ』のナチス親衛隊大佐ハンス・ランダ同様に軽妙洒脱で且つ果断。ジャンゴは沈着且つ大胆。クリストフ・ヴァルツとジェイミー・フォックスの絶妙のコンビがレオナルド・ディカプリオをやっつける話です。

 ふたりは、南部の農園で働く三兄弟を見つけ出して撃ち殺します。シュルツは手配書を持つ自称「合衆国 刑事司法制度の代理人」=賞金稼ぎですから、らこの殺人は正当な行為。だが治まらないのは使用人の三兄弟を殺された農園主。使用人や近隣を集め、K・K・Kの三角帽を被せシュルツとジャンゴを襲撃しますが、当然の如く返り討ち。ここまでが導入部で、黒人を虐待する白人、K・K・Kと、型通り奴隷制度の残虐さが披露され、元黒人奴隷が鉄槌を喰らわせる痛快譚。

ディカプリオ登場
 ジャンゴの妻ブルームヒルダがミシシッピの農園にいることが分かり、ふたりは農園主キャンディ(レオナルド・ディカプリオ)を訪ねます。レオナルド・ディカプリオの登場です。悪役ですが、なかなか決まってます。ここからが本編。大農園を経営し多くの使用人、奴隷に君臨するキャンディの悪辣振りはなかなかのもの。奴隷は人間ではなく所有物に過ぎず、逃げ出そうとした奴隷を犬に喰わせるような悪辣振り。
 正面からブルームヒルダを譲ってくれと言っても足元を見られる、と考えたシュルツは作戦を立てます。キャンディが拳闘用の奴隷(グラディエーター?)を訓練していることに目を付け、この奴隷を12,000ドルで買う交渉を隠れ蓑にブルームヒルダを買おうという作戦です。キャンディは12,000ドルに釣られてこの作戦に乗りますが、キャンディの奴隷で老僕スティーブン(サミュエル・L・ジャクソン)にブルームヒルダとジャンゴの関係を見抜かれます。サミュエル・L・ジャクソンの演技はクリストフ・ヴァルツと双璧。見破られたシュルツは12,000ドルでブルームヒルダを買うはめになり、何だかんだでシュルツはキャンティを撃ち殺し、ここから「タランティーノ劇場」となり、ガンマン・ジャンゴが大活躍。最後はキャンディの屋敷が大爆発、ジャンゴとブルームヒルダは手を携えて自由の天地へ →TheEnd。

 タランティーノは、ナチスvs.連合軍(自由主義陣営)を、白人vs.黒人アメリカ南部vs.北部と対立を描きます。第二次世界大戦では連合軍が勝利し南北戦争では北軍が勝利して奴隷は解放されるわけですが、タランティーノの面白さはこの対立する両者を「ドッチもドッチ」と平等に見る視点にあります。『バスターズ』の連合軍中尉ブラッド・ピットが、ナチスをバットで殴り殺し頭の皮を剝ぐ残虐非道がその典型。そして対立を止揚する、乗り越えるのが暴力のカタルシスです。『バスターズ』ではプレミア上映会でナチスを虐殺し映画館を爆破、『ジャンゴ』では荘園主キャンディの屋敷を爆破、『ヘイトフル・エイト』でも派手な銃撃戦、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』では火炎放射器が登場します。タランティーノは、このカタルシスのために映画を作っているのでしょうかw。この項お終い。

監督:クエンティン・タランティーノ
出演:ジェイミー・フォックス クリストフ・ヴァルツ レオナルド・ディカプリオ ケリー・ワシントン サミュエル・L・ジャクソン フラン・コネロ

【当blogのクエンティン・タランティーノ】

タグ:映画
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