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タランティーノ(3) ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019米) [日記 (2024)]

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]  『ジャンゴ 繋がれざる者』→『ヘイトフル・エイト』→『イングロリアス・バスターズ』とクエンティン・タランティーノを観てきました。今度は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』、『ジャンゴ』のレオナルド・ディカプリオと『バスターズ』のブラッド・ピットの2大スターの競演です。
 『ジャンゴ』で白人と黒人、『ヘイトフル・エイト』で南部と北部、『バスターズ』ではナチスと自由主義陣営の二項対立が描かれましたが、この映画ではTVスターとそのスタントマンという陰とが描かれます。舞台は1969年のハリウッド、TVの西部劇で人気を博したリック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)=陽と、彼のスタントマン、クリフ・ブース(ブラッド・ピット)=陰の話です。

 「ミセス・ロビンソン」「サークル・ゲーム」「夢のカリフォルニア」などの当時のヒット曲をバックにハリウッドの風俗が描かれ、スティーブ・マックイーンやブルース・リー、シャロン・テートなど当時のスターも登場します。映画では触れられていませんが、1969年は、アポロ11号が月に着陸し、ベトナム戦争は泥沼化、市民権運動が拡大し若者の間にカウンターカルチャーが浸透した時代です(ウッドストックもこの年)。
 冒頭、ダルトンとクリフ格差(陰陽)が描かれます。ダルトンはビバリーヒルズ?のプール付き豪邸に住み、リックの住まいはトレーラーハウス。そのダルトンは、TVの西部劇で人気を得るものの、その後はパッとせず脇役に甘んじています。落ち目のカウボーイ小説を読んで、自分の境遇に涙を流す始末。ダルトの仕事が減った為かリックはスタントの仕事はせずダルトンの送り迎えと雑用に甘んじています。「TVのアンテナが壊れたようだ、直しておいてくれ →アイヨ」と言うような。ダルトンとリックはハリウッドという世界の光と影ですが、二人の関係はと云うと至って良好。

 もう一つが、ダルトンの邸の隣に住むロマン・ポランスキー監督とシャロン・テートの世界。ポランスキーは『ローズマリーの赤ちゃん』で成功し、自作に出演したシャロン・テートと結婚します。ダルトンに比べると彼等はハリウッドの成功者。この二項対立があるのかと思ったのですが、これは狂信的なヒッピーが引き起こす「シャロン・テート事件」を描くための前振り。
 落ち目のダルトンにイタリアからマカロニウェスタンのオファーがかかります。ダルトンに『荒野の用心棒』で成功した『ローハイド』のクリント・イーストウッドが重ねられますが、ストーリーには直接絡んで来ず、これも時代の雰囲気を伝える「飾り」です。

 リックがヒッチハイクの少女をヒッピーのコミューンに送って行ったことで、「シャロン・テート事件」が起こります。リックの車をパンクさせたヒッピーを殴り倒し、これを恨んだコミューンのチャーリー(チャールズ・マンソン)など男女3人が、(シャロン・テートではなく)ダルトンの邸を襲い、リックとダルトンが反撃。ダルトンは映画の撮影に使った火炎放射器を持ち出してヒッピーを焼き殺します。タランティーノは派手な銃撃戦では満足できなかったのでしょう。

 話はこれだけです。“Once Upon a Time”とは「昔々」と云う意味です。’60年代を描くに、ウッドストックもブラック・パワー運動もベトナム反戦運動も無く、当時の歌に合わせてハリウッドの風俗を描き、TVスターとスタントマン、落ち目のTV俳優とハリウッドの成功者、ビバリーヒルズのスターとヒッピーという対立軸を持ち出して最後は火炎放射器。何なんだと思うのですが、アメリカ人ならノスタルジアを掻き立てられるのでしょうか?。ハリウッドは、今の世界は21世紀になってもシャロン・テート事件に至ったカウター・カルチャーを引きずっている、タランティーノはそれを火炎放射器で焼き尽くしたかった、そう言うことなんでしょうか?。『ジャンゴ』→『ヘイトフル・エイト』→『バスターズ』までは面白かったのですが、この映画はどうも…。

監督:クエンティン・タランティーノ
出演:レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット

タグ:映画
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