コロナウィルと図書館 [日記 (2020)]
緊急事態宣言で、3/2に休館となった図書館も5/6まで休館延長となりました。本が借りられないので困った話には違いなのですが、一つ疑問が。2/28に借りた本の返却期日が延長を重ね、5/13となりました。返却ポストがあるので、平常通り2週間で返却できるのですが、借りる本も借りれないので足が遠のき、ついズルズルと返却を怠っています。
で疑問というのは、私が感染者であった場合に本は「濃厚接触」物に当たるわけで、図書館は返却された本を消毒するんでしょうか?。数百ページの間に潜むウィルスと消毒は大変だと思うのですが。返却期日が伸び伸びになっていることは、この問題が絡んでいるのではないか?、とまぁ思うわけです。本を媒介にクラスターが発生したなんてことにならないといいのですが。ウィルスは宿主が無いと生きられないので、死滅するんでしょうね。
ETV特集「パンデミックが変える世界~海外の知性が語る展望~」 [日記 (2020)]
今回のコロナウィルスのパンデミックについて、イアン・ブレマー(米、国際政治学者)、ユヴァル・ノア・ハラリ(イスラエル、歴史家)、ジャック・アタリ(仏、経済学者)の3人の著名な学者にインタビューした番組です。インタビューは、アメリカ、ヨーロッパでパンデミックが起こり、日本が緊急事態宣言を出した、4月1日、2日、7日に行われ、11日に放送されました。まさにベストタイミングの企画です。
イアン・ブレマー(4月2日)
「Gゼロ世界」の提唱者であるブレマーは、9.11でブッシュ支持率が92%とアメリカは団結し、敵対するロシアもアメリカを支持した。2008年の金融危機でも米EUは結束してG20が生まれ、中国もアメリカのリーダーシップを支持し世界恐慌を回避した。2020年のコロナ危機でアメリカ国民は団結していない、トランプの支持率は46%に過ぎない。今回、トランプは事前通告無しにEUからの入国を禁止し、G7、G20でも協調はみられない。「アメリカファースト」を奉じるアメリカはリーダーシップを発揮せず世界各国の協調は見られない。
アメリカの経済支援はGDPの10%だがインドは1%。日本、アメリカ、ヨーロッパは国内経済の停滞に対応する資力があるが、新興国、途上国は国民への必要な経済支援はできない。ロックダウンが長期化すれば新興国、途上国は、サプライチェーン、製造業、サービス業に打撃を受け社会不安が起こる。社会不安は過激派の温床でもある。
各国が自国の利益を第一に行動し、グローバリゼーションの分裂が加速する。米中のテクノロジーの分野で始まった分裂が、サプライチェーン、製造業、サービス業に広がり、この先人類は、気候変動といった地球的規模の危機に対して以前のようなグローバルな対応はできない。
ヨーロッパに医療支援を行っている中国の存在感が増す。国際的リーダーシップという点でアメリカの存在感はゼロ、トランプは何もしていない。コロナ以後の世界秩序は、国家間の格差、国内では貧富の格差が広がる。
「Gゼロ世界」の提唱者であるブレマーは、9.11でブッシュ支持率が92%とアメリカは団結し、敵対するロシアもアメリカを支持した。2008年の金融危機でも米EUは結束してG20が生まれ、中国もアメリカのリーダーシップを支持し世界恐慌を回避した。2020年のコロナ危機でアメリカ国民は団結していない、トランプの支持率は46%に過ぎない。今回、トランプは事前通告無しにEUからの入国を禁止し、G7、G20でも協調はみられない。「アメリカファースト」を奉じるアメリカはリーダーシップを発揮せず世界各国の協調は見られない。
アメリカの経済支援はGDPの10%だがインドは1%。日本、アメリカ、ヨーロッパは国内経済の停滞に対応する資力があるが、新興国、途上国は国民への必要な経済支援はできない。ロックダウンが長期化すれば新興国、途上国は、サプライチェーン、製造業、サービス業に打撃を受け社会不安が起こる。社会不安は過激派の温床でもある。
各国が自国の利益を第一に行動し、グローバリゼーションの分裂が加速する。米中のテクノロジーの分野で始まった分裂が、サプライチェーン、製造業、サービス業に広がり、この先人類は、気候変動といった地球的規模の危機に対して以前のようなグローバルな対応はできない。
ヨーロッパに医療支援を行っている中国の存在感が増す。国際的リーダーシップという点でアメリカの存在感はゼロ、トランプは何もしていない。コロナ以後の世界秩序は、国家間の格差、国内では貧富の格差が広がる。
ユヴァル・ノア・ハラリ(4月7日)
この緊急事態において、自由市場に頼ることができないのは誰の目にも明らか。経済システムと雇用市場を作り変える変えるいい機会である。選択肢は数多くあり、それは政治の仕事であり、政治を監視する市民の仕事でもある。
コロナウィルスを口実にハンガリーでは政権が独裁的とも言える権力を握り、イスラエルでも議員をウィルス感染から護るという名目で議会を閉鎖しようとした。民主主義が崩壊するのは緊急事態の時である。位置情報システムなどのハイテク技術を使た国民の監視が進行し、私権の制限が起こりつつある。
アメリカは2.2兆ドルの交付を決めたが、貰えるのは誰で貰えないのは誰かを監視する必要がある。緊急時だからこそ民主主義が機能しなければならず、チェック&バランスが維持されなければならない。ポピュリズムや陰謀論を排し、グローバルな連帯、民主的で責任ある政治を選び科学を信じれば、コロナ危機は、後になって振り返れば、人類にとって悪くない時期だったと思えるはず。
この緊急事態において、自由市場に頼ることができないのは誰の目にも明らか。経済システムと雇用市場を作り変える変えるいい機会である。選択肢は数多くあり、それは政治の仕事であり、政治を監視する市民の仕事でもある。
コロナウィルスを口実にハンガリーでは政権が独裁的とも言える権力を握り、イスラエルでも議員をウィルス感染から護るという名目で議会を閉鎖しようとした。民主主義が崩壊するのは緊急事態の時である。位置情報システムなどのハイテク技術を使た国民の監視が進行し、私権の制限が起こりつつある。
アメリカは2.2兆ドルの交付を決めたが、貰えるのは誰で貰えないのは誰かを監視する必要がある。緊急時だからこそ民主主義が機能しなければならず、チェック&バランスが維持されなければならない。ポピュリズムや陰謀論を排し、グローバルな連帯、民主的で責任ある政治を選び科学を信じれば、コロナ危機は、後になって振り返れば、人類にとって悪くない時期だったと思えるはず。
ジャック・アタリ(4月1日)
コロナ危機をコントロールできないとしたら、市場と民主主義という2つのメカニズムは崩壊する。最悪のシナリオは、世界的な恐慌、失業、インフレ、ポピュリストによる政府の誕生、長期不況による暗黒の時代が到来する。新しいテクノロジーを使った国民の管理と独裁主義が生まれる可能性もある。
パンデミックという深刻な危機に直面した今こそ、「他者のために生きる」という人間の本質に立ち返らねばならない。協力は競争よりも価値があり 人類は一つであることを理解すべきだ。「利他主義」という理想への転換こそがサバイバルの鍵である。利他主義は合理的利己主義であり、自分が感染の脅威にさらされないためには、他人の感染を確実に防ぐ必要があり、利他的あることはひいては自分の利益になる。
経済を全く新しい方向に設定し直す必要がある。長期的な視野に立ち、生きるために本当に必要な医療機器、病院、住宅、水、良質な食料などの生産を行う「ポジティブな経済」に向かうチャンスである。利他的な経済や社会、ポジティブな社会を目指すべきである。
私たち全員が次の世代の利益を大切にする必要がある。誰もが、親として消費者として労働者として一市民として次世代の利益となるよう行動をとることができれば、それが希望となる。
イアン・ブレマーが指導者なき(Gゼロ)世界の混迷に、ユヴァル・ノア・ハラリが民主主義の危機に、警鐘を鳴らし、ジャック・アタリが処方箋を提示するという構成です。3人が3人とも、ポピュリズムを排し国際的連帯を訴えるという主張を展開しています。当たり前といえば当たり前の話ですが、世界的な危機である今、当たり前の主張が意味を持ってくるということでしょう。コロナ危機を脱した時、はたして人類は、ユヴァル・ノア・ハラリの言う「以前よりずっと強く団結した種」となれるのかどうか。
4/11に放送された番組をNHKプラスの「見逃し再生」で見ましたが、NHKプラスはけっこう便利です。
コロナ危機をコントロールできないとしたら、市場と民主主義という2つのメカニズムは崩壊する。最悪のシナリオは、世界的な恐慌、失業、インフレ、ポピュリストによる政府の誕生、長期不況による暗黒の時代が到来する。新しいテクノロジーを使った国民の管理と独裁主義が生まれる可能性もある。
パンデミックという深刻な危機に直面した今こそ、「他者のために生きる」という人間の本質に立ち返らねばならない。協力は競争よりも価値があり 人類は一つであることを理解すべきだ。「利他主義」という理想への転換こそがサバイバルの鍵である。利他主義は合理的利己主義であり、自分が感染の脅威にさらされないためには、他人の感染を確実に防ぐ必要があり、利他的あることはひいては自分の利益になる。
経済を全く新しい方向に設定し直す必要がある。長期的な視野に立ち、生きるために本当に必要な医療機器、病院、住宅、水、良質な食料などの生産を行う「ポジティブな経済」に向かうチャンスである。利他的な経済や社会、ポジティブな社会を目指すべきである。
私たち全員が次の世代の利益を大切にする必要がある。誰もが、親として消費者として労働者として一市民として次世代の利益となるよう行動をとることができれば、それが希望となる。
イアン・ブレマーが指導者なき(Gゼロ)世界の混迷に、ユヴァル・ノア・ハラリが民主主義の危機に、警鐘を鳴らし、ジャック・アタリが処方箋を提示するという構成です。3人が3人とも、ポピュリズムを排し国際的連帯を訴えるという主張を展開しています。当たり前といえば当たり前の話ですが、世界的な危機である今、当たり前の主張が意味を持ってくるということでしょう。コロナ危機を脱した時、はたして人類は、ユヴァル・ノア・ハラリの言う「以前よりずっと強く団結した種」となれるのかどうか。
4/11に放送された番組をNHKプラスの「見逃し再生」で見ましたが、NHKプラスはけっこう便利です。
カズオ・イシグロ 忘れられた巨人 ③ (2017ハヤカワ文庫) [日記 (2020)]
続きです。
かつて地中に葬られ、忘れられていた巨人が動き出します
ブリトン人は北方ケルト系、サクソン人はドイツ系ですからこのふたつは別の民族、言葉も違います。ブリテン島に北から来たブリトン人が住み着き、そこへ南?(東)からきた民族サクソン人が侵入して両者の争いとなります。アーサー王はサクソン人と戦いブリトン人の国を作りますが、サクソン人の反乱の芽を摘むことは出来ず、ガウェントと魔法使いマーリンに命じ、竜の息に魔法をかけてブリトン島の住民の記憶を奪うことで平和(ブリトン人の支配)を実現しようとします。これが竜と「記憶の喪失」の真相です。竜と魔法をプロパガンダや宗教に置き換えれば、これは現実に起こりうる、既に起こっている世界です。ガウェンは言います、
あの日だけは、アーサー王の意志とともに神の意志をも行ったのだ。
あの日だけは、アーサー王の意志とともに神の意志をも行ったのだ。
この雌竜の息なしで、永続する平和が訪れただろうか。この息が止まったとき、いまでも国中で何が起こりうるかを考えてみよ。われわれは多くを殺した。認める。強き者弱き者の区別なく殺した。あのときのわれらには神も決してほほえまなかったであろう。だが、この国から戦が一掃されたのも事実だ。
「神の意志」に従ったのだと言います。神をイデオロギーに置き換えれば、これも現実の世界でしょう。ウィスタンは反論します、
悪事を忘れさせ、行った者に罰も与えぬとは、どんな神でしょうか。虐殺と魔術の上に築かれた平和が長つづきするでしょうか。・・・昔の恐怖が塵となり、飛び散ることを願っておいででしょう。
この神はキリスト教のことです。ウェスタンの使命は、竜を退治してサクソン人に惨劇の記憶を取り戻させ、ブリトン人に復讐を果たしサクソン人の国を作るというものです。
かつて地中に葬られ、忘れられていた巨人が動き出します。遠からず立ち上がるでしょう。そのとき、二つの民族の間に結ばれた友好の絆など、娘らが小さな花の茎で作る結び目ほどの強さもありません。
「神の意志」に従ったのだと言います。神をイデオロギーに置き換えれば、これも現実の世界でしょう。ウィスタンは反論します、
悪事を忘れさせ、行った者に罰も与えぬとは、どんな神でしょうか。虐殺と魔術の上に築かれた平和が長つづきするでしょうか。・・・昔の恐怖が塵となり、飛び散ることを願っておいででしょう。
この神はキリスト教のことです。ウェスタンの使命は、竜を退治してサクソン人に惨劇の記憶を取り戻させ、ブリトン人に復讐を果たしサクソン人の国を作るというものです。
かつて地中に葬られ、忘れられていた巨人が動き出します。遠からず立ち上がるでしょう。そのとき、二つの民族の間に結ばれた友好の絆など、娘らが小さな花の茎で作る結び目ほどの強さもありません。
正義と復讐が、いまや大急ぎでこちらへやってきます。
『忘れられた巨人』とは恐怖と憎しみの記憶にほかなりません。竜をめぐってガウェンとウェスタンが戦いウェスタンが勝利し、竜退を治します。どんなドラゴンが登場するのかと思ったら、
まるで蚯蚓(みみず)によく似た水生爬虫類だ。それが何かの拍子に誤って陸上に這い上がり、そのまま脱水症状を起こしつつあるところに見えた。
映画『ホビット』の竜を創造していたのですが、脱水症状を起こしたミミズ!。竜は死に人々に記憶が戻り、憎悪と復讐の連鎖が始まります。
わが軍(サクソン軍)は進軍をつづけ、怒りと復讐への渇きによって勢力を拡大しつづけます。あなた方ブリトン人にとっては、火の玉が転がってくるようなものです。逃げるか、さもなくば死です。国が一つ一つ、新しいサクソンの国になります。
霧のおかげで傷が癒えたのかもしれない
『忘れられた巨人』とは恐怖と憎しみの記憶にほかなりません。竜をめぐってガウェンとウェスタンが戦いウェスタンが勝利し、竜退を治します。どんなドラゴンが登場するのかと思ったら、
まるで蚯蚓(みみず)によく似た水生爬虫類だ。それが何かの拍子に誤って陸上に這い上がり、そのまま脱水症状を起こしつつあるところに見えた。
映画『ホビット』の竜を創造していたのですが、脱水症状を起こしたミミズ!。竜は死に人々に記憶が戻り、憎悪と復讐の連鎖が始まります。
わが軍(サクソン軍)は進軍をつづけ、怒りと復讐への渇きによって勢力を拡大しつづけます。あなた方ブリトン人にとっては、火の玉が転がってくるようなものです。逃げるか、さもなくば死です。国が一つ一つ、新しいサクソンの国になります。
霧のおかげで傷が癒えたのかもしれない
歴史は、サクソン人がブリトン人を駆逐し「七王国」の時代となりますが、本書では描かれません。竜が死ぬと、物語りはアクセルとベアトリスに戻ります。ブリトン人とサクソン人、ガウェンとウェスタンという「共同体の記憶」に対置されるのが、アクセルとベアトリスの「個」の記憶とその喪失、回復です。二人は記憶を取り戻し、息子を訪れる旅を再開します。
島に夫婦を渡す「船頭」が再登場し、アクセルとベアトリスの「夫婦の絆」を試します。二人の大切な記憶が一致しないと夫婦の絆が疑われ、夫婦は揃って息子のいる「島」に渡して貰えません。アクセルは、息子が疫病で亡くなったこと、さらにはベアトリスに「不貞」があったことまで思い出します。不貞!、竜が死ぬとファンタジーは終わり、何やらシリアスな話になります。船頭に問われるままアクセルは語り出します、
ほんの一瞬、妻はわたしに不実でした。ですが、そもそもわたしのした何かが、妻を別の男の腕の中に追いやったのかもしれません。わたしが多くの責任を負わねばなりますまい。
島に夫婦を渡す「船頭」が再登場し、アクセルとベアトリスの「夫婦の絆」を試します。二人の大切な記憶が一致しないと夫婦の絆が疑われ、夫婦は揃って息子のいる「島」に渡して貰えません。アクセルは、息子が疫病で亡くなったこと、さらにはベアトリスに「不貞」があったことまで思い出します。不貞!、竜が死ぬとファンタジーは終わり、何やらシリアスな話になります。船頭に問われるままアクセルは語り出します、
ほんの一瞬、妻はわたしに不実でした。ですが、そもそもわたしのした何かが、妻を別の男の腕の中に追いやったのかもしれません。わたしが多くの責任を負わねばなりますまい。
ただ愚かだっただけです。それと自尊心。そして人間の心の奥底に潜む何か。もしかしたら罰したいという欲望だったかもしれません。わたしは許しを説き、実践していました。しかし、復讐を望む小さな部屋を心の中につくっていて、そこに、長年、鍵をかけてきました。つまらないことで妻にひどいことをしました。
「わたしは許しを説き、実践していました」とは、アーサー王の下でブリトン人とサクソン人の間を周旋し、協定を結んで平和を実現したことを指すと思われます。部族間の争いでは「許し」を説いたアクセも、家庭では妻を不貞に追いやり、息子の家出の原因を作り息子を亡くしていたのです。アクセルは記憶に鍵をかけ、ベアトリスに息子の墓に行くことを禁じたのです。それがなぜ(島に行く)墓参を思い立ったのか?
いま思うのは、何か一つのきっかけで変わったのではなくて、二人で分かち合ってきた年月の積み重ねが徐々に変えていった、ということです。結局、それがすべてかもしれません。ゆっくりしか治らないが、それでも結局は治る傷のようなものでしょうか。
「二人で分かち合ってきた年月の積み重ね」とは共に暮らした「記憶の積み重ね」のことであり、これがふたりの関係を修復します。アクセルは、ある朝ベアトリスの寝顔を見ている時に「最後の闇」は去り旅に出る決心がついたと言います。
霧にいろいろと奪われなかったら、わたしたちの愛はこの年月をかけてこれほど強くなれていただろうか。霧のおかげで傷が癒えたのかもしれません。
記憶の喪失がアクセルとベアトリスの絆を強くしたというのです。人は過去に拘っていては暮らしてゆけません。記憶が薄れ忘れることによって日々に平安が訪れるのだということでしょう。アクセルは、霧によって妻の不貞の記憶と息子の死の記憶を風化させ、ベアトリスとの絆を深めていったようです。
ふたりは息子の墓を探すため船で島に渡ろうとします。船頭は、まずベアトリスを渡し続いてアクセルを渡すこととなります。ベアトリスが船に乗る最後のシーンです。
いるの、アクセル
まえの目の前だよ、お姫様。わたしたちは、いま、ほんとうに別れ別れになる話をしているんだろうか
じゃ、さようなら、アクセル
さようなら、わが最愛のお姫様
「二人で分かち合ってきた年月の積み重ね」とは共に暮らした「記憶の積み重ね」のことであり、これがふたりの関係を修復します。アクセルは、ある朝ベアトリスの寝顔を見ている時に「最後の闇」は去り旅に出る決心がついたと言います。
霧にいろいろと奪われなかったら、わたしたちの愛はこの年月をかけてこれほど強くなれていただろうか。霧のおかげで傷が癒えたのかもしれません。
記憶の喪失がアクセルとベアトリスの絆を強くしたというのです。人は過去に拘っていては暮らしてゆけません。記憶が薄れ忘れることによって日々に平安が訪れるのだということでしょう。アクセルは、霧によって妻の不貞の記憶と息子の死の記憶を風化させ、ベアトリスとの絆を深めていったようです。
ふたりは息子の墓を探すため船で島に渡ろうとします。船頭は、まずベアトリスを渡し続いてアクセルを渡すこととなります。ベアトリスが船に乗る最後のシーンです。
いるの、アクセル
まえの目の前だよ、お姫様。わたしたちは、いま、ほんとうに別れ別れになる話をしているんだろうか
じゃ、さようなら、アクセル
さようなら、わが最愛のお姫様
陸で待っていてくれたまえ、友よ。おれ(船頭)はぽつりと言う。だが、爺さんは聞いておらず、先へ進んでいく。
この会話はどう考えても最期の別れです。ふたりが渡ろうとする「島」はあの世のことで、船頭は三途の川の渡守。ベアトリスが持病を持っていたことを考えると、これは、ベアトリスが死にアクセルは生き残ると理解する他はありません。ここで小説は終わります。
『忘れられた巨人』とは何か?。巨人とは、ブリトン人とサクソン人の民族、部族(共同体)の「記憶」であると思われます。小説の重要なパートはアクセルとベアトリスの老夫婦が担いますから、これはブリトン人とサクソン人の物語ではなく、アクセルとベアトリスの物語だといえます。ブリトン人とサクソン人の戦いの記憶は憎しみのと復讐の連鎖に至りますが、アクセルとベアトリスの記憶は夫婦の愛と絆を強めます。 また、ウェスタンはサクソン人の少年エドウィンにブリトン人の所業を忘れるな、ブリトン人を憎めと教えますが、そのウェスタン自身アクセルとベアトリスには好意を抱いています。別れ際にベアトリスはエドウィンに呼びかけます、
「エドウィン、わたしたち二人からのお願い。これからも、わたしたちを忘れないで。あなたがまだ少年だったころ、老夫婦と友達になったことを思い出して」
それを聞いたとき、ほかにもよみがえってきたものがある。戦士との約束があった。ぼくにはすべてのブリトン人を憎む義務がある。でも、このやさしいご夫婦も含めろとは、ウィスタンさんも言わないだろう。
この会話はどう考えても最期の別れです。ふたりが渡ろうとする「島」はあの世のことで、船頭は三途の川の渡守。ベアトリスが持病を持っていたことを考えると、これは、ベアトリスが死にアクセルは生き残ると理解する他はありません。ここで小説は終わります。
『忘れられた巨人』とは何か?。巨人とは、ブリトン人とサクソン人の民族、部族(共同体)の「記憶」であると思われます。小説の重要なパートはアクセルとベアトリスの老夫婦が担いますから、これはブリトン人とサクソン人の物語ではなく、アクセルとベアトリスの物語だといえます。ブリトン人とサクソン人の戦いの記憶は憎しみのと復讐の連鎖に至りますが、アクセルとベアトリスの記憶は夫婦の愛と絆を強めます。 また、ウェスタンはサクソン人の少年エドウィンにブリトン人の所業を忘れるな、ブリトン人を憎めと教えますが、そのウェスタン自身アクセルとベアトリスには好意を抱いています。別れ際にベアトリスはエドウィンに呼びかけます、
「エドウィン、わたしたち二人からのお願い。これからも、わたしたちを忘れないで。あなたがまだ少年だったころ、老夫婦と友達になったことを思い出して」
それを聞いたとき、ほかにもよみがえってきたものがある。戦士との約束があった。ぼくにはすべてのブリトン人を憎む義務がある。でも、このやさしいご夫婦も含めろとは、ウィスタンさんも言わないだろう。
サクソン人で有ることを離れ個人に戻れば、エドウィンはブリトン人に憎しみを抱くことはありません。エドウィンの憎しみはサクソン人という共同体の憎しみに他ならないわけです。国や民族といった共同の記憶(幻想)を戴く集団を離れて個人に戻れば憎しみの連鎖は起こらない、と言っているわけです。また、アクセルは「(竜の)霧のおかげで傷が癒えたのかもしれません」言います。「霧」とは、人に備わった忘却という治癒能力かも知れません。文学が(概ね)「個」に関わる精神世界を描くとするなら、作者は共同体の幻想、政治の上に文学(記憶)を置いたことになります。
老化の進んだ頭でノーベル賞文学に挑んでも、所詮はこの程度のものです。それにしても「脱水症状を起こしたミミズ」には参った...。『忘れられた巨人』読了。
タグ:読書
季節外れの 凧あげ [日記 (2020)]
花桃の発芽 [日記 (2020)]
NHKプラス(2) 追いかけ再生、見逃し再生 [日記 (2020)]
NHKプラスの話です。”追いかけ再生” ”見逃し再生”ですがこれが意外と便利で、録画しなくてもこの2つが出来ます。9時のnewsを9時過ぎても最初から見ることが出来(通勤途上スマホで最新ニュースがチェック可能)、昨日の「チコちゃんにしかられる」が録画しなくても見ることが出来ます。1周間はOKらしく、録画→消去の手間が要りません。今後TVはこの方向に進むと思われますが、音楽の著作権が問題となってきます。
「常時同時配信」のはずですが、時々ドーモ君が登場して「配信してません」となり何故。見逃し配信で1週間は観ることができますが、それを過ぎるとNスペなどはオンデマンドに入るようです。オンデマンドは、見放題990円/月か1時間番組なら220円、30分番組なら110円取られます。再放送があるので、こまめにチェックしてそれを観たほうがベターです。
【追記】
追いかけ再生、見逃し再生、けっこう便利です。TVのスクリーンショットです。あまり必要ないとは思いますが、図表やレシピなどは活用できそうです。ニュースは音声が中心ですからラジオの代用として使えます。”らじるらじる”のニュースにこの機能はありません。
タグ:絵日記
カズオ・イシグロ 忘れられた巨人 ② (2017ハヤカワ文庫) [日記 (2020)]
続きです。
クエリグの息がこの地を満たし、私たちの記憶を奪います
ベアトリスの診察と悪鬼に噛まれたエドウィンの傷の治療のため、一行は修道院に赴きます。ローマ帝国の征服とともにキリスト教はブリトン人の間に広まり、アクセルとベアトリスもキリスト教徒で、5~6世紀のブリトンにも修道院があったのでしょう。
ウィスタンによると、この修道院はかつてサクソン人の古い砦であり、その頃多くのサクソン人が虐殺されたと言い、修道院ではその贖罪のため、修道僧を鳥についばませる苦行が行われていると言います。ウィスタン(非キリスト教徒)は、苦行がキリスト教徒≒ブリトン人の行った侵略や虐殺の贖罪とはならない、と神父を非難します。またアクセルは、エドウィンの傷を診察した僧の顔に「勝利の表情」が浮かぶのを見たと言います。エドウィンの傷は脇腹にありますから、磔刑で死んだキリストの「聖痕」ということになります。砦も聖痕も人間の「記憶」であることには違いありません。
また、サクソン人のウェスタンは小さい頃ブリトン人の兵士に拉致され兵士として訓練されたこと、アクセルはその頃出会った人物ではないかと言います。物語当時のブリテン島(イギリス)は、ローマ帝国の撤退後アングロ・サクソン人が侵入し、アーサー王がこれと戦ってブリテン人による支配をなしとげます。『忘れられた巨人』は、このブリトン人とサクソン人の戦いが人々の記憶に残る時代の物語です。
第二部では、「霧」と「記憶の喪失」の謎が明かされます。竜の息が霧となってこの地を満たし、人々の記憶を奪ったのです。さらに竜は修道院の僧らによって護られているといいます。キリスト教(修道院)は、竜に加担して人々の記憶を奪っているというのです。宗教は、悪は贖罪によって許されその所業は記憶から消される、と言っているかのようです。竜の息は、ブリトン人とサクソン人の戦いの惨劇の記憶を人々から消し去っています。その竜を退治すれば戦いの記憶がブリトン人とサクソン人に蘇るはずです。蘇ればどうなるのか?。
この「集団、民族(人種?)の記憶」に対して、「個人の記憶」を担うのがベアトリスです。霧はすべての記憶を覆い隠していますから、竜を退治して霧が晴れれば、よい記憶だけでなく悪い記憶も蘇ります。それでもいいのか?と問う神父に、ベアトリスはこう答えます、
悪い記憶も取り戻します。仮に、それで泣いたり、怒りで身が震えたりしてもです。人生を分かち合うとはそういうことではないでしょうか。
アクセルとわたしは一緒に人生を思い出します。どんな形だったにせよ、二人の大切な人生ですもの。
ここでも「記憶」が人と人との絆の基であることが繰り返されます。
ウィストンを捕らえに来た兵隊が修道院に現れ、アクセル、ベアトリス、エドウィンの三人は神父の助言で森に通じるトンネルに逃げ込み、そこで3人を待っていた騎士ガウェインと出会います。神父は3人を始末するために獣の住むトンネルに閉じ込めたのです。『指輪物語』で、オークに支配されたドワーフの地下宮殿「モリア」を通過するホビット一行と似ています。このトンネルは墓場であり、おびただしい人骨が地を覆い、戦争の惨劇の記憶です。
殺戮の循環は途切れることがなく、復讐への欲望は途絶えることがありません
第三部では、アクセルとガウェインの関係と、竜の息によって人々が記憶を失った真相が明らかになります。ガウェンによると、アクセルはアーサー王の外交官としてサクソン人との間に協定を結び平和を実現させます。後に協定は崩れ、戦争が起きブリトン人が勝利します。ガウェンはアクセルに言います、
アクセル殿が心を痛めておられるサクソンの少年たちは、やがて戦士となり、今日倒れた父親の復讐に命を燃やしていたはず。少女らは未来の戦士を身籠ったはず。殺戮の循環は途切れることがなく、復讐への欲望は途絶えることがありません。
負の連鎖に絶望したアクセルは、アーサー王と袂を分かち野に下り、竜の息とともにこの記憶を消し去ったようです。
貴殿は、戦争だの平和だのという大層な議論から離れ、人を神に近づけるあの法からも離れ、アーサー王さえ思い切って放り捨てて、その身のすべてをよき妻(ベアトリス)に捧げた。
わしもまた、この身に従ってくれるやさしい影を望んだ日々があった。
つまり、アクセルは政治の世界捨てて妻を選び、ガウェンは政治の世界を選択したようです。
アクセルは、ガウェンがアーサー王から竜退治を命じられたのではなく、竜を護る使命を与えられたことに気づきます。ガウェンは仲間5人と竜を倒しに行ったのではなく、魔法使いマーリンとともに竜の息に記憶を消し去る魔法をかけに行ったのです。この世界に霧を生じさせ人々から記憶を奪ったのは、実はガウェンだったです。
魔法使いマーリンも登場して、ファンタジーは佳境に入ります。続きます。
クエリグの息がこの地を満たし、私たちの記憶を奪います
ベアトリスの診察と悪鬼に噛まれたエドウィンの傷の治療のため、一行は修道院に赴きます。ローマ帝国の征服とともにキリスト教はブリトン人の間に広まり、アクセルとベアトリスもキリスト教徒で、5~6世紀のブリトンにも修道院があったのでしょう。
ウィスタンによると、この修道院はかつてサクソン人の古い砦であり、その頃多くのサクソン人が虐殺されたと言い、修道院ではその贖罪のため、修道僧を鳥についばませる苦行が行われていると言います。ウィスタン(非キリスト教徒)は、苦行がキリスト教徒≒ブリトン人の行った侵略や虐殺の贖罪とはならない、と神父を非難します。またアクセルは、エドウィンの傷を診察した僧の顔に「勝利の表情」が浮かぶのを見たと言います。エドウィンの傷は脇腹にありますから、磔刑で死んだキリストの「聖痕」ということになります。砦も聖痕も人間の「記憶」であることには違いありません。
また、サクソン人のウェスタンは小さい頃ブリトン人の兵士に拉致され兵士として訓練されたこと、アクセルはその頃出会った人物ではないかと言います。物語当時のブリテン島(イギリス)は、ローマ帝国の撤退後アングロ・サクソン人が侵入し、アーサー王がこれと戦ってブリテン人による支配をなしとげます。『忘れられた巨人』は、このブリトン人とサクソン人の戦いが人々の記憶に残る時代の物語です。
第二部では、「霧」と「記憶の喪失」の謎が明かされます。竜の息が霧となってこの地を満たし、人々の記憶を奪ったのです。さらに竜は修道院の僧らによって護られているといいます。キリスト教(修道院)は、竜に加担して人々の記憶を奪っているというのです。宗教は、悪は贖罪によって許されその所業は記憶から消される、と言っているかのようです。竜の息は、ブリトン人とサクソン人の戦いの惨劇の記憶を人々から消し去っています。その竜を退治すれば戦いの記憶がブリトン人とサクソン人に蘇るはずです。蘇ればどうなるのか?。
この「集団、民族(人種?)の記憶」に対して、「個人の記憶」を担うのがベアトリスです。霧はすべての記憶を覆い隠していますから、竜を退治して霧が晴れれば、よい記憶だけでなく悪い記憶も蘇ります。それでもいいのか?と問う神父に、ベアトリスはこう答えます、
悪い記憶も取り戻します。仮に、それで泣いたり、怒りで身が震えたりしてもです。人生を分かち合うとはそういうことではないでしょうか。
アクセルとわたしは一緒に人生を思い出します。どんな形だったにせよ、二人の大切な人生ですもの。
ここでも「記憶」が人と人との絆の基であることが繰り返されます。
ウィストンを捕らえに来た兵隊が修道院に現れ、アクセル、ベアトリス、エドウィンの三人は神父の助言で森に通じるトンネルに逃げ込み、そこで3人を待っていた騎士ガウェインと出会います。神父は3人を始末するために獣の住むトンネルに閉じ込めたのです。『指輪物語』で、オークに支配されたドワーフの地下宮殿「モリア」を通過するホビット一行と似ています。このトンネルは墓場であり、おびただしい人骨が地を覆い、戦争の惨劇の記憶です。
殺戮の循環は途切れることがなく、復讐への欲望は途絶えることがありません
第三部では、アクセルとガウェインの関係と、竜の息によって人々が記憶を失った真相が明らかになります。ガウェンによると、アクセルはアーサー王の外交官としてサクソン人との間に協定を結び平和を実現させます。後に協定は崩れ、戦争が起きブリトン人が勝利します。ガウェンはアクセルに言います、
アクセル殿が心を痛めておられるサクソンの少年たちは、やがて戦士となり、今日倒れた父親の復讐に命を燃やしていたはず。少女らは未来の戦士を身籠ったはず。殺戮の循環は途切れることがなく、復讐への欲望は途絶えることがありません。
負の連鎖に絶望したアクセルは、アーサー王と袂を分かち野に下り、竜の息とともにこの記憶を消し去ったようです。
貴殿は、戦争だの平和だのという大層な議論から離れ、人を神に近づけるあの法からも離れ、アーサー王さえ思い切って放り捨てて、その身のすべてをよき妻(ベアトリス)に捧げた。
わしもまた、この身に従ってくれるやさしい影を望んだ日々があった。
つまり、アクセルは政治の世界捨てて妻を選び、ガウェンは政治の世界を選択したようです。
アクセルは、ガウェンがアーサー王から竜退治を命じられたのではなく、竜を護る使命を与えられたことに気づきます。ガウェンは仲間5人と竜を倒しに行ったのではなく、魔法使いマーリンとともに竜の息に記憶を消し去る魔法をかけに行ったのです。この世界に霧を生じさせ人々から記憶を奪ったのは、実はガウェンだったです。
魔法使いマーリンも登場して、ファンタジーは佳境に入ります。続きます。
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映画 ベロニカとの記憶(2017英米) [日記 (2020)]
原題”The Sense of an Ending”。「終わりの感覚」?。小さなカメラ店を営むトニー(ジム・ブロードベント)の元に、弁護士から遺産相続の知らせが舞い込みます。遺産は、500ポンドと彼の古い友人エイドリアンが遺した日記で、被相続人はトニーが40年前の大学時代に付き合っていた恋人ベロニカの母親。何故元恋人の母親がトニーに500ポンドと日記を遺贈するのか?、というミステリアスな話がテーマなのですが、トニーの現在が重要な背景となります。トニーは妻と別れ気ままな一人暮らし、年金暮らしで半分趣味のようなライカ(フィルムカメラ)のカメラ店を営んでいます。一人娘は出産間近で、トニーはもうすぐ”父親のいない”孫を持つことになります。元妻との関係は良好で、ふたりでシングルマザーに挑戦する娘を支えています。
ベロニカが日記の引き渡しを拒んだため、トニーは40年前の自分とベロニカ、友人エイドリアンとの三角関係を元妻に話し始め、映画はトニーの現在と過去が交差しながら進行します。
【パブリックスクール】
トニーはパブリックスクール(高校)でエイドリアンと出会います。エイドリアンは早熟の秀才で、歴史の授業で「歴史が生まれるのは 不完全な記憶と文章が出会うときだ 歴史とは勝者の嘘だ」と学者の説を持ち出します。自殺した級友の自殺を例に、本人が語れない以上自殺の真相は不明であり、恋人を妊娠させたことが自殺の要因だ云うのは周囲の憶測に過ぎない、同様に歴史もまた想像の産物に過ぎない、と自説を展開します。
【ケンブリッジ】
トニーとエイドリアンはケンブリッジへ進学し、トニーはパーティーでベロニカと出会い彼女の自宅に宿泊するまでにその仲は発展します。この時ベロニカの母親はトニーを歓待し、「ベロニカに振り回されるな」と忠告します。ベロニカは、デートはするが決して一線は越えず他の男とも付き合い、トニーは振り回されます。エイドリアンからベロニカとの関係を知らされたトニーは、嫉妬から悪意に満ちた手紙をエイドリアンに書き送ります。「彼女は人を操る女だ、彼女の母親にも忠告された、一度母親と話してみろ、いい女だぜ」と。その後エイドリアンは自殺し、トニーは、パブリックスクールの思い出から、エイドリアンはベロニカを妊娠させ行き詰まった果てに自殺したのだと推測します。
【現在】
40年後、トニーは、不可解な遺産相続によって”ベロニカとの恋”を回想することになります。それはベロニカに翻弄され、エイドリアンの自殺まで絡むという青春の「ひとこま」です。トニーは、あれは「恋ではなかった」と元妻に告白します。
トニーはベロニカ(シャーロット・ランプリング)に会いに行きます。ベロニカは日記を燃やしたことを告げ、トニーに一通の手紙を渡します。手紙は、トニーが嫉妬にかられてエイドリアンに送った悪意に満ちあの手紙でした。トニーはベロニカに知的障害を持つ青年がいることを知り、この青年がエイドリアンの息子だと考えます。ところが青年はベロニカの弟であり、ベロニカの母親とエイドリアンの子供だったのです。この事実はトニーに衝撃を与えます。
トニーの手紙がベロニカとエイドリアンの恋に如何なる影響を及ぼしたのか?、エイドリアンとベロニカの母親をどう結びつけたのか?、映画では一切説明されません。ベロニカの母親がエイドリアとの間の子供を産んだ事実は何を意味するのか。ベロニカは何故手紙をトニー返したのか?、ベロニカの母親は何故エイドリアンの日記をトニーに遺贈しようとしたのか、日記には何が書かれていたのか。何一つ明かされませんが、いずれにしろ、青春の「悔悟」の物語であることは確かなようです。人は悔悟を重ねることによってしか成熟し得ないのかも知れません。歴史が勝者によって書かれるように、「記憶」もまた
人は人生を語る時、過去を装飾し都合よく編集する、長生きすれば異を唱える証人も減る、それは事実と言うより”物語”だ、自分を納得させるために書き変えた物語。
1970年代?の青春をノスタルジックに描き、アンタの思い出は自分に都合よく編集した思い出だと冷水を浴びせ、まぁそれでも終わりよければ全てよし、みたいな映画です。
監督:リテーシュ・バトラ
出演:ジム・ブロードベント シャーロット・ランプリング
タグ:映画
LINE、新型コロナ調査 [日記 (2020)]
3/31にLINE+厚労省から”新型コロナ調査”が来ていました。
中身は、1)発熱などの症状があるか? 2)感染防止策をとっているか? 3)年齢性別居住地域など簡単なものです。事前に知っていたので回答しました。8300万アカウトに発信して約30%の回答があったらしいです。発熱、喉の痛み≠コロナウィルスにしても、分析結果には興味が湧きます。驚くのは、8300万の数字。国民の70%がLINE使っているわけで、凄いものです。
3月末のnet通信量が40%増えたそうで、テレワーク、Youtubeによる授業などもあり、社会の変化が加速しそうな雰囲気です。たぶん人間の意識も。
タグ:絵日記