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映画 ロブスター(2015ギリシャ、仏、愛蘭ほか) [日記 (2023)]

  • ロブスター スペシャル・プライス [Blu-ray]
     原題は”The Lobster”そのママ。何とも即物的なタイトルです。監督は『聖なる鹿殺し』のヨルゴス・ランティモス。

  •  男女は結婚して子供を作らなければならないと云う掟(法律)のある世界の話です。で、独身の男女は施設に入れられパートナーを探すわけです。施設では衣食住が保証され、プール、テニスコート付き、メイドが食事の世話をしてくれるホテル。出会いを演出するダンスパーティーまで用意されています。シングルの間は個室、カップルが見つかると二人部屋が与えらます。自慰が禁止され、見つかると右手をトースターで焼かれますw。

     施設の入所期限は45日で、期限が過ぎると動物に変えられると云うファンタスティックな設定。施設の方も、何時までも居座られてはたまらないので動物に変えて追い出してしまうわけです。生まれ変わる動物は自由に選べるそうで、世界は犬で溢れているという魔法の世界です。主人公デヴィッド(コリン・ファレル)が選んだのが「ロブスター」。ロブスターは百歳まで生きられ、死ぬまで生殖能力があるからだそうです。
     施設の外の森には結婚を嫌う独身者が棲み、この独身者を「狩る」と1人に付き滞在日数が1日加算される仕組み。なかなか面白い設定です。
     45日の間にカップルにならないと動物に変えられますから、必死にパートナーを探します。ブロンドの長い髪の女性は、美しいタテガミの馬に変えられ、デヴィッドに秋波を送っていた女性は、45日が迫って自殺します。

     面白いのはカップルである要件。足の悪い青年(ベン・ウィショー、007のQだ!)は、鼻血の出る持病の女性を見付け、顔面を机に打ちつけ鼻血を流して彼女とカップルとなります。つまり、男女は愛ではなく欠落を共有する(同じマイナスカードを持つ)ことによってカップル(結婚)となると云うわけです。これをヒントに、デヴィッドは施設で一番(独身者)狩りが上手く、冷酷だと言われる女性に「冷酷カード」を使って近づきます。まんまと成功するのですが、彼女がデヴィッドの愛犬(45日過ぎて犬となった彼の兄)を蹴り殺し、デヴィッドは女性を銃で撃って施設から逃亡します。ここまでは、なかなか良くできています。

     デヴィッドが逃げ込んだのは、独身者が棲む森のコミュニティー。そこは独り者の天国かと思ったところ、リーダー(レア・セドゥ)が仕切り、「施設」とは反対に恋愛禁止、セックス禁止、破ると罰せられます。
     デヴィッドは、近視の女性レイチェル・ワイズと恋に堕ちます。ここでも互いに近視という「マイナスカード」によってふたりはカップルとなります。レイチェル・ワイズ、レア・セドゥが登場する後半が映画のメインだと思いますが、前半の設定の鮮やかさに比べ、やや鈍重。この作品にリアルを求めても仕方が無いのですが、レア・セドゥは、レイチェル・ワイズが恋愛禁止のルールを破ったため視力を奪います。デヴィッドは、レイチェル・ワイズとカップルを続けるために盲目という「マイナスカード」を切ります。
     顔面を机に打ちつけて鼻血を流したベン・ウィショーの様に、自らの眼を潰します。正確には潰そうと席を立ち、デヴィッドが戻るのを待つレイチェル・ワイズの「68秒のカット」で幕。デヴィッドはレイチェル・ワイズのために(谷崎潤一郎『春琴抄』の様に)自分の眼を潰したのか?、それとも逃げたのか?。

     頭の体操のような、なかなか面白い映画です。

    監督:ヨルゴス・ランティモス
    出演:コリン・ファレル、レイチェル・ワイズ、レア・セドゥ

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