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映画 ピアノ・レッスン(1993仏ニュージーランド豪) [日記 (2023)]

ピアノ・レッスン DVD HDリマスター版
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 原題、”The Piano”。19世紀中頃のスコットランド。口のきけないシングルマザーが、写真で見合いをして、ピアノを持って遥か彼方のニュージーランドに嫁ぐというドラマです。冒頭、ヒロインのエイダ(ホリー・ハンター)の独白があります。彼女は6歳で話すことを止め以来一言も言葉を発しません。父親は、これを「息を止める決心もしかねない”暗い才能”だ」と言います。自らの意思で話すことを止めたほどの強い女性という設定です。何故話すこと止めたのかは描かれませんが、そちらの方が気になります。エイダは話せないだけで耳は聞こえ、手話で意思を伝え、娘のフローラ(アンナ・パキン)が通訳します。『クワイエット プレイス』『コーダ あいのうた』で聴覚障害者(ろう者)の登場する映画を観ましたが、表情や身振り手話の演技は見応えがあります。この映画でホリー・ハンターとアンナ・パキンはオスカーを受賞しています。

 口のきけない口をきかないエイダにとって、ピアノは言葉に代わる重要な表現手段。そのためスコットランドからはるばるニュージーランドまでピアノを運んだわけです。ところが、夫のスチュアート(サム・ニール)は重いからと云う理由でピアノを浜辺に置き去りにします。
 開拓民のスチュアートはピアノより土地が重要だと、原住民マオリ族に混じって暮らすヘインズ(ハーヴェイ・カイテル)に土地と交換にピアノをレッスン付きで売り払ってしまいます。
 エイダはピアノが弾ける嬉しさ、表現できる喜びでヘインズの住居を訪れレッスンが始まります。ヘインズはレッスンなどそっちのけでエイダにセクハラ、これが目的でピアノと土地を交換したわけです。黒鍵の数だけ来ればピアノはアンタのものだ →レッスンの回数が重なると共にエイダは次第にヘインズに傾斜し遂には不倫に至ります。この辺りの心理は分かり難いですが、エイダは自分の言葉=ピアノの演奏に耳を傾けてくれるヘインズと、ピアノを浜辺に置き去りにし挙げ句の果てに土地と交換に売ってしまうスチュアートの間で、ヘインズを選択したのでしょう。

 やがて二人の関係はスチュアートにバレます。バラしたのは娘のフローラで、フローラは母親とヘインズの間に割って入ったわけです。スチュアートはエイダを監禁しエイダは鍵盤に刻んだラブレターを娘に届けさせます。フローラはこれもバラし、怒ったスチュアートはピアノを弾けないようにエイダの指を切り落とします。

 最後はエイダの”暗い才能”が勝利します。父親が”暗い才能”を恐れて彼女をニュージーランドに嫁がせた様に、スチュアートもまたエイダとヘインズをピアノと共に北の町へ送り出します。町へ向かう船上、エイダは自分の分身でもあるピアノを海に捨てます。ピアノを縛っていたロープに絡め取られ海の中に引きずり込まれますが、ロープを外して生還するエピソードが描かれます。ピアノを捨てると云う行為は、”暗い才能”からの脱却を意味しているでしょう。フローラによると、エイダは新しい町で密かに話す訓練を始めたいうことです。

 ニュージーランドと云うと草原と人間の数より多いと言われる羊の群れを想像しますが、19世紀の英国領ニュージーランドは原住民のマオリ族と開拓者が混在する未開の地。純朴なマオリ族と「天使の羽」のコスチュームを付けた6歳のフローラを背景に男女の愛憎劇が進行し、”暗い才能”からの脱出で幕を閉じます。この暗喩に満ちた映画が面白いかと云うと?ですが、ホリー・ハンターの演技は一見の価値があります。アカデミー賞、カンヌ国際映画祭パルム・ドール、ゴールデングローブ賞など獲得の名画らしいです。

監督:ジェーン・カンピオン
出演:ホリー・ハンター、ハーヴェイ・カイテル、サム・ニール、アンナ・パキン

タグ:映画
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