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映画 スポットライト 世紀のスクープ(2015米) [日記 (2023)]

スポットライト 世紀のスクープ[DVD]
 原題、Spotlight。2002年にボストンのカトリック司祭による児童への性的虐待事件を暴露した、ボストン・グローブ社の調査報道の話です。この手の映画にはウォーターゲート事件でニクソンを辞任に追い込んだ『大統領の陰謀』、ベトナム戦争の機密文書を暴く『ペンタゴン・ペーパーズ』が有名です、いずれも面白い。調査報道と云う地味な話ですが、新聞記者たちが教会という聖域の犯罪を追い詰める過程は、なかなか迫力に満ちています。

 ボストンの地方紙グローブ社がニューヨーク・タイムズに吸収され、新しい報道局長バロン(リーヴ・シュレイバー)が赴任します。編集会議でバロンは、6つの教区で30年間虐待を繰り返し教会がもみ消した「ケーガン事件」の続報を提案し、「スポットライト」のチームが動き出します。スポットライトはグローブ誌のコラムで、ロビー(マイケル・キートン)をデスクにマイク(マーク・ラファロ)、サーシャ(レイチェル・マクアダムス)、マット(ブライアン・ダーシー・ジェームズ)の計4人が専従。

 訴訟を扱った弁護士、被害者団体、被害者に直接インタビューと調査を進め4人の神父が浮かび上がり、被害者からは生々しい証言が得られます。弁護士は守秘義務の壁に阻まれますが、被害者団体の幹部は問題の神父はボストンだけで13人に上ると証言します。4人→13人となります。取材したマイクは、

神父は貧困、父親不在、家庭崩壊に付け込み、羞恥心が強く寡黙な子を選ぶ、彼らは「捕食者だ!」

と言います。13人の神父を追跡すると、教会は虐待がバレると神父を病気、休職、転属となって教会組織の奥に隠します。問題を起こした神父は療養施設に収容され、スポットライトは施設で働いた心理療法士の証言を得ます。心理療法士の30年の調査によると、彼ら小児性愛者は神父の6%に上ると言います。ボストンの聖職者は1,500人、6%の90人の捕食者がボストンにいることになります。ボストン全神父の在籍状況を調べ、87人が病気休暇、休職となっていることを突き止めます。これは心理療法士の6%という数字に該当します。これを聞いた記者は”shit!、クソッタレ”とつぶやきますが、まさにshit!です。

 スポットライト4人は87人の神父を追跡します。住民は、アメリカで最も歴史の古い街の1つであり、世界有数の大学都市のボストンに愛着を持ち、これが調査の壁ともなります。ボストンの恥部を暴くロビーは非難され、新任のバロンはよそ者と見なされます。弁護士のガラベディアンはアルメニア系のため生き難いと言い、君は?とマイクに問い彼はポルトガル系だと答えます。さりげない会話ですが、アメリカの「リベラル」の奥に潜む「本音」を言っているんですね。
 事件が聖職者の犯罪であることも問題を複雑にしています。アメリカ人にとってキリスト教は生活に根付いた宗教です。そのキリスト教の悪を暴くことは、人々の信仰と日常を揺るがす事に他なりません。教会と住民は隠したがり時には敵意を剥き出しにします。

 調査が実り、教会が組織的に神父の性的虐待を隠蔽していた証拠が発見されます。グローブ誌は、個々の神父の犯罪ではなく、カトリック教会の隠蔽システムそのものを暴きます。

2002年、スポットライトは600本近い虐待の記事を掲載。(全米で)249人の神父が性的虐待で告発された。被害者の数は推定1,000人以上にのぼる。2002年12月、ロウ枢機卿はボストン大司教を辞任、ローマにあるカトリック教会最高位の教会に転属した。
この記事の後、虐待が判明した主な都市は・・・

と、おびただしい数の都市がテロップで流れ、幕。地味な映画ですが面白いです。

監督:トム・マッカーシー
出演者:マーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムス、リーヴ・シュレイバー、ジョン・スラッテリー、スタンリー・トゥッチ

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