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映画 かくも長き不在(1961仏) [日記 (2023)]

かくも長き不在 デジタル修復版 [DVD] スクリーンショット 2023-04-29 21.51.49.png
 第二次世界大戦で行方不明となり、16年ぶりに帰ってきた夫は記憶喪失。果たして男は夫なのか?、妻は共に暮らした記憶を取り戻すことが出来るのか?という話です。脚本は『二十四時間の情事』『愛人/ラマン』のマルグリット・デュラス、けっこう有名な映画です。

 カフェ「アルベール・ラングロワ」の女主人テレーズ(アリダ・ヴァリ)は、ヴァシー政権下で夫が行方不明となり、以後16年パリ郊外のカフェを守り続けています。近所のオヤジ連中が集まりワイワイガヤガヤ、カフェがどんなものかよく分かります。バカンスが話題となっていますから季節は夏。テレーズは常連のトラック運転手に故郷に帰ろうかと言い、運転手は乗っけて行ってやるよ、と。どうやら運転手は彼女に惚れているらしい、運転手はテレーズの部屋を訪れていますから恋人同士なのかも知れません。
 テレーズと言うと、これも仏映画マルセル・カルネの『嘆きのテレーズ』を連想します。

 そんな設定で、テレーズは夫とよく似た浮浪者と出会います。彼女は男を店に呼びビールを振る舞い、男はロベール名の身分証を示し記憶喪失だと言います。
 テレーズは、男が夫であることの確証を得るため男の住むバラックを訪ねます。男はクズ拾いをして暮らしているようで、子細に観察しますが夫なのかどうかは不明。

 彼女は、夫の叔母と甥を故郷から呼びます。テレーズの浮き浮きした表情からは、16年振りに夫が帰ってきた喜びが見て取れます。アリダ・ヴァリの喜びと不安に揺れる演技が見どろころの一つです。

 男が口ずさむ、オペラ『セリビアの理髪師』のアリア「陰口はそよ風のように」を流し、三人は、夫の妹の噂話、故郷の話をして彼の記憶を呼び戻そうとします。3人の会話から、夫の名がアルベールであること、アルベールが行方不明となった経緯が明らかになります。カフェ「アルベール・ラングロワ」はテレーズ夫の店だったのです。アルベールは1944年にゲシュタポに逮捕されてそれきり戻らず、テレーズは再婚もせず16年間店を守り夫の帰りを待っていたのです。
 戦後に勲章を貰ったといいますから彼はレジスタンスだった様です。ここから、映画は夫の帰りを待つ妻の物語、記憶喪失の男の物語に、戦争の傷跡が加わります。この話を聞いても男は反応を示しません。テレーズは夫だと確信し、叔母は別人だと言います。

 テレーズは男を自宅に食事に招きます。男の好きだったブルーチーズを用意し、オペラのアリアを流し、ふたりの思い出の曲でダンスを踊ります。テレーズは男の後頭部に古い傷跡を発見します。男は、ゲシュタポに逮捕されドイツの強制収容所で拷問を受け、人体実験の被験者となりアルベールの記憶を失ったのかも知れません。
 帰って行く男に、カフェの馴染み客達は、記憶を呼び戻すかのように「アルベール、アルベール・ラングロワ」と大声で呼び掛けます。男は、逮捕されるのを恐れるかの様に両手を挙げ走り出し、そこへ車が...。馴染み客は、テレーズに男は無事であること、去ってしまったことをつげます。テレーズは呟きます、

冬が来れば帰ってくる 夏は時期が悪いの
厳しい冬なら 日が短くて 行く当てがなくなるもの
・・・冬を待つの 冬を待ちましょう fin

古き佳きフランス映画です。

監督:アンリ・コルピ
脚本:マルグリット・デュラス
出演:アリダ・ヴァリ、ジョルジュ・ウィルソン

タグ:映画
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