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アキ・カウリスマキ 敗者三部作(フィンランド) [日記 (2023)]

愛しのタチアナ/浮き雲 HDニューマスター版(続・死ぬまでにこれは観ろ!) [DVD]スクリーンショット 2023-11-19 20.38.51.png
浮き雲(1996)
 英語タイトル、Drifting Clouds。ロシアと国境を接するフィンランドは、政治経済においてもロシアと密接な関係にあり、ソ連の崩壊によって経済は打撃を受けたようです。そんな不況下にあるヘルシンキの中年夫婦、給仕長のイロナ(カティ・オウティネン)と夫で市電の運転手ラウリ(カリ・ヴァーナネン)の物語です。

 ラウリはリストラに会って失職、イロナも勤めていたレストランが買収されこれも失業し夫婦揃って無職。再就職もままならず、ローンで買った家具もTVも持っていかれる始末。ラウリはバス運転手の職を見つけるも健康診断でハネられ、イロナも小さなレストランでコック兼ウェーターの職を見つけますが給与を踏み倒されと散々。どう結末を付けるんだろうと思ったんですが、イロナは、これも職の見つからない昔のメンバーを集めレストランを開店します。資金は閉店したレストランの元オーナー。そんな上手い話しは無いだろうと思うんですが、お客が入れば観ている方も嬉しくなります。

 セリフが少なくおまけに感情のこもらない棒読み、しかも無表情、絶対に笑わない。観客が想像して見ろ、聴けというわけです。ハリウッドでは絶対に作られな映画で、こういう映画わりと好きです。

 余談。ヘルシンキでレストランと言えば日本映画、荻上直子の『かもめ食堂』があります。検索すると、コック役のマルック・ペルトラは『かもめ食堂』の珈琲を美味しく淹れるマジナイのオジサンです。

出演:カティ・オウティネン、カリ・ヴァーナネン、マルック・ペルトラ、

過去のない男 [DVD]
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過去のない男(2002)
 暴漢に襲われ記憶を無くした男(マルック・ペルトラ)の話です。周囲の善意に支えられ最後には幸せを掴むというわりとベタな映画で、シリアスに描くと絵にならないのでコメディ仕立てす。

 善意の人々とは、例えば男を助けたコンテナに住む女性は「恵まれてるわ 住む所も夫に職もあって 石炭置き場の夜警よ 週に2日だけど 公営アパートに申し込むわ」と男に告げる、そんな人達です。もう一人、男を助けるのが救世軍の女性イルマ(カティ・オウティネン)。救世軍はキリスト教慈善団体で、彼女は男に食事をさせ衣服を与え、男は社会復帰の第一歩を踏み出します。名前も思い出せない男は工事現場でやっと職にありつきます。銀行口座を作れと言われ、銀行に行くと(笑うんですが)銀行強盗に出くわし、名前が無いため警察に捕まります。救世軍から弁護士が派遣され無事釈放、イルマの気遣いです。男はコンテナを借りゴミ捨て場から家具を拾ってきて住まいを整え、イルマを招待して食事を振る舞います。男とイルマのラブストーリーでもあります。
 と言う、男と女と彼等を取りまく人々の日常が適度なユーモアを織り混ぜて進行するだけです。

 出演は『浮き雲』のカティ・オウティネン、マルック・ペルトラで「アキ・カウリスマキ組」のメンバーなんでしょう。男になつく犬ハンニバルが登場します。wikiのキャストによると、本名タハティだそうですw。『浮き雲』にも犬が登場したところをみると、アキ・カウリスマキの映画にとって犬は重要な存在なんでしょうね。

出演:カティ・オウティネン、マルック・ペルトラ、タハティ(犬)
街のあかり [DVD] スクリーンショット 2023-11-20 13.26.37.png
街のあかり(2006)
 敗者三部作の三作目になると、余分なものはますます削ぎ落とされ磨き?がかかります。セリフが少ない、無表情、笑わないに加えて、シーンひとつひとつがぶっきら棒に投げ出されドラマ性が排除されます。
 
 警備員コイスティネン(ヤンネ・フーティアイネン)がブロンドの女性ミルヤ(マリア・ヤルヴェンヘルミ)に惚れます。ミルヤは強盗の一味で、コイスティネンに睡眠薬を飲ませ寝ているスキに鍵を奪い強盗は宝石店に押し入ります。強盗のひとりはコイスティネンがミルヤを売ることは無いと断言し、ミルヤはコイスティネンのに奪った宝飾を隠し警察に通報。コイスティネンはミルヤについては一言も喋らず刑務所へ。この自分を陥れた女性を裏切らなかったことが映画の唯一のドラマです。コイスティネンは出所して落ちるところまで落ちますが、彼を助ける女性がいます。キッチンカーでスナックを売る女性(マリア・ヘイスカネン)でそう言えばそんな女性もいた、という程度。女性が差し出した手をコイスティネンが握る手のクローズアップで幕。前2作では希望が垣間見えましたが本作では見えたような見えないような...。
 カティ・オウティネンはレジのオバサンでチラと登場します。犬も登場するのですがストーリ(元々無い)に絡んできません。

出演:ヤンネ・フーティアイネン、マリア・ヤルヴェンヘルミ、マリア・ヘイスカネン、パユ(犬)

 『浮き雲』『過去をなくし男』『街のあかり』は「敗者三部作」と名付けられています。「労働者三部作」「難民三部作」まであるらしい。最新作『枯れ葉』が12月15日に公開されるようです。

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