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新型コロナウィルスの影響 (1) 図書館 [日記 (2020)]

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 新型コロナウィルスで日本中が混乱の極みです。晴耕雨読の生活ですから、休校になった子供たちが遊びに来る他はこれといって変化のない生活ですが、思わぬところから伏兵が。図書館が休館になってしまい、予約していた本を借りれなくなりました。数週間待っていた本が、”ご用意できました”とメールが来て、取りに行ことした途端、休館。”待て!”とお預けをくらった駄犬の心境です(笑。積ん読が沢山あるので、これの消化に励みます。春休みのドラえもんも楽しみにしていた子供たちも、公開延期でガックリ。

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司馬遼太郎 ロシアについて-北方の原形- (2)  日露 (1986文藝春秋) [日記 (2020)]

北方の原形 ロシアについて (文春文庫)

続きです。
シベリア
(ウラル山脈の西には)巨大な凍土、湿原、草原、森林が、もう一つの青い天体のようにひろがっている・・・やがて(毛皮採集の)探険家たちがその東端のカムチャツカ半島を発見し、・・・ひとびとはこの陰鬱なシベリアにも、ついには東方に出口があることを知った。・・・カムチャツカ半島の南端の海に数個の島がうかんでいることを望見し、さらに、それを伝ってゆくうちにそれが列島であることも知った。そのはてに蝦夷島という大島があり、日本人が住んでいることまで知ったのである。

 ロシアは主要交易品である黒貂を追ってシベリアを西へ行き、日本を発見します。毛皮を得るためには商人、毛皮採取の労働者に食料や生活物資の供給が必要となりますが、当地で手に入れることは出来ず欧露から送るには余りに遠い。そこで目を付けたのが日本です。

「日本」という、海洋のなかにある文明圏が、大きくロシアの為政者やシベリア関係者に、期待という光とともに浮かび上がってくるのは、以上のような必要性からである。ロシアにとって、日本はその広大なシベリアを保有するために必要--もしくは必要だという熱っぽい幻想--があったということを、十九世紀までのこの隣国を思うときに考えざるをえない。

 この「熱っぽい幻想」によってピョートル1世は漂流民・伝兵衛と謁見し(1702)、サンクトペテルブルクに日本語学校を創設し(後イルクーツクに移転)伝兵衛を教師とします。女帝エカチェリーナ2世は大黒屋光太夫と謁見し、ラクスマンとともに日露外交のためにお繰り返します。漂流民を謁見するという破格の待遇を与え、日本語学校まで作ってしまうわけですからその「熱っぽい幻想」は相当なものです。ピョートル1世は、大使節団を率いてヨーロッパ文明を吸収し、自ら職工となって造船技術を学び海軍を創設した皇帝ですから、日本に対する好奇心から日本語学校を作ってしまったのでしょう。エカチェリーナ2世はクーデターで夫(ピョートル3世)から帝位を奪い、オスマン帝国と戦争して領土を広げた女傑。啓蒙主義者だったようですから、大黒屋光太夫を厚遇したのでしょうが、ロシアのなみなみならぬ熱意を感じます。
 ロシアの毛皮採取は千島列島、択捉島・国後島などにおよび、1739年、伊豆下田にロシア船が来航、1778年には国書を携えた使節が松前藩に通商を求めるなど蝦夷地をめぐる情勢は緊迫します。工藤平助が『赤蝦夷風説考』を著し述し、田沼意次が最上徳内に蝦夷地を探検させたのもこの頃です。

露米会社
 1804年、レザノフがクルーゼンシュテルンの世界周航の船で長崎に来航し、通商、日本にとっては開国を迫ります。レザノフは一種の政商で、エカチェリーナ2世やパーヴェル1世に取り入って、自分の毛皮生産会社の株を皇帝に持たせ、国策会社「露米会社」に発展させます。露米会社は、ロシア人を送り込み原住民を使って当時ロシア領だったアラスカ、リューシャン列島、千島列島で海獣を獲っています。恒常的に不足する食糧問題解決のため日本に来るわけです。レザノフは自分の露米会社のために皇帝を動かし、世界就航を企画し、親書まで出させて来航します。クルーゼンシュテルンは、バルト海の軍港クロンシュタットを出港し、大西洋を横断してホーン岬を回って太平洋を横断して日本に来るのですから、まさに世界周航の壮挙です。日本はこれを拒否し、レザノフは腹いせ?に樺太の松前藩番所を襲撃、1807年には択捉島の幕府会所を攻撃するなどの事件が起こります。

クルーゼンシュテルンは、その手記で、レザノフを露骨にいかがわしいとは書いていないが、そのいかがわしさを読み手が察しうるように、事実だけを述べている。
「レザノフは、之より先き、かの商業家シェリコフの娘と結婚して居り、それとともに相当の資産を譲り受けて居たが、この資産とは全部株券より成り、その株の価値はかのアメリカ貿易の継続の成功または不成功にかかっていた。」
つまり、かれは国益を代表するものではない。政治的なからくりで、勅使という肩書を得ることで日本をだまし、利益のみを得ようとするのである。
(このたびの企てが成功すれば、この男は大もうけするだろう。それだけのことだ)

クルーゼンシュテルンは、不愉快だったにちがいない。

と司馬さんはクルーゼンシュテルンの口を借りてレザノフを「いかがわしい」とこき下ろしています。ペリーの来航(1853)も捕鯨船の寄港地確保が目的だったのですから、レザノフといい勝負です。

露米会社の露骨かつ執拗な意図は、「武装船(二隻)の威容を背景に日本と交渉し、国を開かせる」というところにあった。
これについては、のちの世のアメリカのペリーの乱暴さを連想すべきである。ペリーもまたレザノフに似た立場にあった。当時、アメリカの捕鯨業界は日本に寄港地をもとめていた。が、日本は鎖国をしていた。これを開国させるべく、捕鯨業界はロビィストを使って議会に働きかけ、やがてペリーとその艦隊を派遣させることになる。ペリーが、そういう、いわば卑しいとまでいえるほどの実利的な背景でもって日本に来ながら、変にたかだかと高邁な顔をしていたのは気にくわない。

 レザノフのついでにペリーを持ち出して「気に食わない」と言う、こういうナマの感情が出ているところが愉快です。クルーゼンシュテルンの後、1807年のゴローニン、1853年のプチャーチンとバルト海からはるばる日本を目指すという世界周航が実施されます。 ロシアにとってシベリアと日本の価値がどれほど大きかったかが想像できます。
 「恐露病」と言われるロシアへの恐怖には、こうした背景があったわけです。1855年に日露和親条約を締結してロシアと国交を開き、南下するロシアと朝鮮半島で角を突き合わせ、日露戦争へと至ります。『坂の上の雲』の前史が、おぼろげながらイメージできました。

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今年最初のタンポポ [日記 (2020)]

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映画 アナイアレイション -全滅領域-(2018米英) [日記 (2020)]

アナイアレイション-全滅領域- [AmazonDVDコレクション]  原題、Annihilation、消滅。『エクス・マキナ』が面白かったので、引き続きアレックス・ガーランド監督作品です。「(スポアンサーが)より幅広い観客に受けるような作りに変更するよう求めてきた。しかし、ガーランドとスコット・ルーディンはその要求を拒絶した」(wikipedia)だということで、確かに一般受けする映画ではありませんが、『エクス・マキナ』より分かりやすいです。ストーリーはwikipediaにゆずり、ここでは映画の「個人的な」謎解きをします。当たっているかどうかは?。

がん細胞
 『アナイアレイション』を解く鍵は、冒頭にあります。ヒロインの生物学者レナ(ナタリー・ポートマン)が細胞分裂の動画を学生に見せるシーンがあり、これがガン細胞であることが明かされます。つまり、映画全編が、「人体に巣食うガン」を「人類という種を襲うガン」に敷衍し、このガン化した領域を「シマー」あるいは「全滅領域」と呼び、がん細胞(シマー)と人間の戦いが描かれます。

 がん細胞とは何かというと、

人間の体は細胞からできています。がんは、普通の細胞から発生した異常な細胞のかたまりです。
正常な細胞は、体や周囲の状態に応じて、ふえたり、ふえることをやめたりします。例えば皮膚の細胞は、けがをすれば増殖して傷口をふさぎますが、傷が治れば増殖を停止します。一方、がん細胞は、体からの命令を無視してふえ続けます。
がん細胞は、正常な細胞の遺伝子に2個から10個程度の傷がつくことにより、発生します。・・・傷の種類として、DNAの暗号に異常が生じる突然変異と、暗号自体は変わらなくても使われ方が変わってしまう、エピジェネティック変異とがあることがわかってきています。(国立がん研究センター)

 冒頭で、宇宙から何かが飛来し灯台に衝突します。この灯台を中心に「全滅領域」シマーが広がりますから、「エイリアン映画」のヴァリエーションです。通常のエイリアンは実体を持ったモンスターですが、『アナイアレイション』にエイリアンは登場しません。全滅領域が地球上に発生したガンであり、ガンが正常細胞の突然変異であるなら、飛来したエイリアンは地球の生態系(DNA)に突然変異をもたらす何かです。レナたちが遭遇するのも、地球上の動植物、人間が突然変異を起こしたモンスターたちです。同じ株に咲く異種の花々、歯が同心円に生えたワニ、体内で腸が蛇状になった人間、異様な熊などもすべ突然変異です。

がん細胞キラー
 全滅領域の調査に多くの研究者、兵士が向かいますが、いずれも未帰還。レナの夫ケイン(オスカー・アイザック)は絶滅領域に向かった調査隊の唯一人の生き残りで、多臓器不全を起こして研究所に収容されます。レナは、夫がこの危険な任務に就いたのは自分の不倫が原因であると自責の念を持っています。レナがヴェントレス博士(ジェニファー・ジェイソン・リー)をリーダーとする女性5人の調査隊に加わるのは、これが動機。ヴェントレスがガンに罹っているのも象徴的で、娘を白血病で失った女性、自殺未遂の女性などそれぞれが実生活で問題を抱えた女性たちです。これが何を意味するか不明ですが、彼女たちが、困難を克服しようという意思を持った女性たちだとれば、人体の持つ「免疫」の象徴かもしれません。いずれにしろ、5人はガン細胞キラーです。

 人間の身体は、細胞が日々死滅し再生することによって成り立っています。胃の細胞が死滅すると、胃は自分の細胞をコピーすることで失った細胞を補填します。コピーに失敗すると胃がんが発します、すなわち遺伝子の突然変異によるミスコピーです。このコピーが映画で重要な意味を持っています。
 終盤、灯台に到達したシーンです。レナは灯台にあるエイリアンの「核」に入り、夫ケインが自撮したビデオで彼が手榴弾で自殺したことを知ります。では、レナが会った全滅領域の調査から戻ったケインとは何者なのか?。コピーです。レナはこの核に入りヴェントレスと再会し、彼女は、全滅領域は世界中に広がり世界は破滅すると話し、炎を吐き出して核と一体化します。レナもまた、細胞が悪しきコピー=がん細胞を生み出すように自分のコピーを生み出してしまいます。灯台から脱出しようとするレナをコピーが邪魔し、レナは手榴弾(白リン弾)を使ってコピーを焼き殺し、灯台は炎に包まれて崩れ落ち全滅領域は消滅します。地球はガン化から救われたことになります。

 多くのメタファーがストーリーに埋め込まれています。ケインの多臓器不全、これも末期ガンを連想します。レナが出会う2匹のアルビノ(遺伝子異常)の鹿はシンクロするかのように逃げ去りますが、これは灯台でレナが自分のコピーとシンクロするシーンの伏線です。廃棄された村で熊のモンスターに襲われますが、熊の口からは食い殺された隊員の助けを求める声が聞こえます。また人の形をした植物と出会いますが、隊員のひとりは、分析すればヒトのHOX遺伝子(体の構造を決定する遺伝子)が発見される筈だと言い、全滅領域では、あらゆるものがDNAさえ屈折すると推理し、自身が植物化しつつあることを知った彼女は森に消えます。レナは自分の血液の中で何者か(シマー)が細胞分裂を起こしていることを(顕微鏡で)知ります。

 全滅領域が消滅しケインも回復します。めでたしめでたしかというと、ケインはコピーであり、レナもまたコピーなのかも知れません。灯台で焼け死んだのは、本物だったのかコピーだったのか?(右利きだったレナは左利きに変わっている)。DNAを屈折させるシマーは、ケインとレナの中で生き続けていることになります。続編があるのでしょうか?。
 Amazonなどの評価は今ひとつですが、着想の妙に一票!、の映画です。

監督:アレックス・ガーランド
出演:ナタリー・ポートマン ジェニファー・ジェイソン・リー オスカー・アイザック

* ザ・ビーチ(2000年) - 原作
* 28日後... (2002年) - 脚本
* 28週後... (2007年) - 製作総指揮
* わたしを離さないで(2010年) - 脚本・製作総指揮
* エクス・マキナ(2015年) - 監督・脚本
* アナイアレイション -全滅領域(2018年) - 監督・脚本・・・このページ

タグ:映画
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司馬遼太郎 ロシアについて-北方の原形- (1) タタールのくびき (1986文藝春秋) [日記 (2020)]

北方の原形 ロシアについて (文春文庫)  『坂の上の雲』を読んでロシア(帝国)が気になったので読んでみました。作者は10年にわたってロシアに関わる『坂の上の雲』『菜の花の沖』を書いてきた、その余話です。「北方の原形」とあるように、内容はロシア史と日露関係史です。著者は、ロシアも革命後のソ連も、体制がどうあれ、「その国が固有の国土と民族と歴史的連続性を持っているかぎり、原形というものは変わりようがない」と考えます。


 『坂の上の雲』に、ロシアの南下は「タタールのくびき」と「毛皮」だという話がありました。ロシアというと、西はバルト海から東はベーリング海に及ぶ、シベリアを含む広

大な領土を思い浮かべます。ロシア人がシベリアに入ったのはせいぜい16世紀。従ってロシアの歴史は、ウクライナ、モスクワなどヨーロッパに近い西部(欧露)が中心で、ロシア人が侵入する以前のシベリアは、イヌイットの祖先、ツングース系民族、モンゴル系民族(ブリヤート人)が点として存在していた、ということになります。

 9世紀、「海賊を稼業とする」ノルマン人が先住のスラブ農民を支配してキエフ国家などのルーシ諸国を建てます。ノルマン人はビザンティン文化を導入し、ギリシア正教によってスラブ人を統制します。このロシア=ギリシア正教の体制は、西欧社会と不可分であったローマ・カトリックとは無縁な体制として、ロシア帝国終焉まで続くことになります。著者はこの体制を、西欧の文明についての「不導体」と表現します。モンゴルは宗教に関しては寛容であったらしくギリシア正教はこの地に根付き、カトリック世界でおこっている緒現象、たとえばルネッサンスの流入などが阻まれます。この辺りもロシアというものの「原風景」と考えていいといいます。

外敵を異様に恐れるだけでなく、病的な外国への猜疑心、そして潜在的な征服欲、また火器への異常信仰、それらがキプチャク汗国の支配と被支配の文化的遺伝だと思えなくはないのです。

 13世紀にわずか1万人のモンゴル人(バトゥ)がこの地に侵入しキプチャク汗国を建て、スラブ人は以後250年モンゴルの支配を受けることになります。後に、わずか数百万のモンゴル人(女真族)が億の人口を持つ中国を支配して異民族国家を建てますから、騎馬を駆使した彼らの機動性と武力は凄いものです。ロシア人の「外敵を恐れる」「外国への猜疑心」は支配された建てたのスラブ民族から、「潜在的な征服欲」はタタール人から受け継ぎ、「火器への異常信仰」は弓矢に固執する支配民族を銃で排斥した記憶を指しています。

武力のみが国家を保つという物騒な思想を、ロシア帝国は、かつて自分たちを支配したキプチャク汗国から学び、引き継ぎました。また武力を失えば、クリム汗国のような最後をとげるという教訓を得た・・・

これが「タタールのくびき」です。

 キプチャク汗国はシビル汗国など4国に分裂し、イヴァン四世のモスクワ公国がタタール人の国を飲み込み勢力を持ち始めます。15世紀になるとヨーロッパで鉄砲(火縄銃)が発明されます。この鉄砲がスラブ人を「タタール人のくびき」から解き放ったといえます。農民や放牧民を支配した源である弓は、タタール人の謂わばアイデンティであり、シビル汗国は弓を捨てて銃に替えることはできなかったでしょう。結果、銃で武装したイヴァン四世はシビル汗国を滅ぼします。イヴァン四世と結んだストロガノフ家とその傭兵であるコサックがシビル汗国滅亡に大いに働きます。コサックは、ロシアの農奴制から逃亡した農民や貴族で構成されたいわば盗賊、ならずもの集団。コサックは、騎馬のタタールに対して城塞(クレムリ)を築き銃で応戦する戦方を取ったといいます。1583年、コサックの首長イェルマークがはイスケルを陥しシビル汗国は滅亡します。滅亡したというより、騎馬の機動性で征服した土地から、今度はその機動性で「潮が引くように」モンゴルの地に帰っていった、という風景でしょう。

 日露戦争で日本軍を苦しめたベトンで塗り固めた堡塁、銃砲への信仰というのは、タタール人に勝ったこの成功体験に根ざしていると著者は言います。

 それまでのロシア人の居住世界は存外狭いものだったであろう。ウラル山脈を壁として、その山麓から西がロシアであるにすぎなかった。シビル汗国という長大な壁が倒れてはじめてロシア人の現実の地理的世界としてシベリアが湧出したといっていい。

 ここからロシアのシベリア開発が始まり、「日本」と出会うことになります。 続きます

タグ:読書
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