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李栄薫 反日種族主義 日韓危機の根源 ① (2019文藝春秋) [日記(2019)]

反日種族主義 日韓危機の根源反日種族主義 日韓危機の根源 (文春e-book)  話題の本です。李栄薫前ソウル大学教授ら6人の研究者が執筆した本書は、日本(日帝)の米や土地の搾取、徴用工問題、日本軍が女性を連行して「性奴隷」とした慰安婦問題など韓国の「反日」の元なっている「悪行」に反論を加えたものです。日本では嫌韓本が幅をきかせていますが、韓国で、しかも韓国人の書いた嫌韓本?が2ヶ月で10万部売るベストセラーとなったというのは面白いです。
 「種族」というのが分かりにくいのですが、英語の”tribalism、トライバリズム”で。

 1.部族制[組織,社会];部族の風習と信仰
 2.部族主義;種族[仲間]への忠誠心;部族[仲間]意識

 検索すると、「同じ主張の人々がまるで“部族”のようにまとまり、他のグループと対話するのが難しい状態や現象のこと」という解説があり、トランプの「アメリカ第一主義」もその中に含まれるらしい、これで分かります。また「自分たちの人種、民族、宗教、国家、政治信条というものを第一に考え、そうでないものとの歩み寄りを拒否して、むしろそうした人たちを強引に屈服させていこうというのが特徴的だと思います。互いが歩み寄らないのが特徴的です」(ここの解説)。
 反日種族主義とは「反日第一主義」と理解していいのではと思います。

 プロローグ から過激です。韓国を「嘘の国」とし、国民にも、政治家にも、大学教授(学問)にも、裁判官(司法)にも嘘があると言います。一人当たりの偽証罪は日本の430倍、誣告件数は500倍で1人当たりにすれば日本の1250倍,保険詐欺の総額は4兆5000億ウォンを超えると推定されアメリカの100倍,知的財産権に対する政府支援金の33%が詐欺にあい、他人が信用できるかというアンケートで、yesと答える人はわずか26%だと書きます。

 著者は、この嘘と他人を信用できないという国民性?を、「物質主義」とシャーマニズムに求めています。

物質主義の根本を追究して行くと、韓国の歴史と共に長い歴史を持つシャーマニズムにぶつかります。シャーマニズムの世界には善と悪を審判する絶対者、神は存在しません。シャーマニズムの現実は丸裸の物質主義と肉体主義です。シャーマニズムの集団は種族や部族です。種族は隣人を悪の種族とみなします。客観的議論が許容されない不変の敵対感情です。ここでは噓が善として奨励されます。噓は種族を結束させるトーテムの役割を果たします。韓国人の精神文化は、大きく言ってこのようなシャーマニズムに緊縛されていますより正確に表現すると、反日種族主義と言えます。

 土俗のシャーマニズムは物質主義、肉体主義(快楽主義?)、同族(本貫?)で結束し他族を悪と見なし敵対する。同族を擁護するためには嘘が善と奨励され、嘘は同族を結束させるトーテムの役割を果たす。慰安婦像 →トーテム →シャーマニズムという帰納のような気がしないでもありません。著者の主張は、今日の日韓問題の根はシャーマニズムに根ざした「反日種族主義」だと言います。
 「国民情緒法」という言葉があります。法律の上に国民情緒=世論があり、法は世論の従属物に過ぎないという風刺です。バーグ条約を無視して大使館前に慰安婦像というトーテムが建ち、大法院の元徴用工に対する判決を見ると、なるほどと思わないでもありません。

 本書は、反日の根拠となっている土地調査事業、鉄杭騒動、朝鮮会社令、竹島領土問題、徴用工、慰安婦など、実証的に検証し反論します。

  朝鮮総督府が土地調査事業を通し全国の土地の40%を国有地として奪った、という教科書の記述はデタラメな作り話とします。朝鮮を植民地化した日本が全土の土地調査をすること当然でです。もし40%の土地が収奪されたのであれば解放後に訴訟が起きたはずですが、そうした事例は無く、40%という根拠の無い数字が第一次資料も無しに(気分で)捏造されたらしい。「白髪三千丈」の世界です。著者の言う「学問の嘘」です。
土地調査事業に関して持っていた自身の幼い頃からの先入観を、学術の形式で包装しただけです。そんな本を韓国の学界とメディアは歓喜して迎えました。日帝の土地収奪が具体的に証明された、と言ってです。そうして慎鏞厦には輝かしい学術賞を授与しました。

 世最初の誰かが40%という数値を出し、それが引用され、そうやって歳月が流れて歴史の真実となって教科書に載り、学生は全国の土地40%が総督府の所有地として収奪された、と教えられたのです。論が「真実」を作り出すわけです。

そのように世代間に憤りの涙で受け継がれ伝承されて来たものが、私が批判しようとする反日種族主義の歴史観です。

ちなみに、この土地調査事業によると、全人口の85%が農民であり、3%地主の下に77%農家が存在するという20世紀初頭の朝鮮の実像が明らかになります。

 日帝が風水思想によって朝鮮の伝統文化の「気」の流れを止めるために打ち込んだ鉄杭は、測量のための三角点の杭だったというのは笑い話ですが、朝鮮会社令、徴用工問題、慰安婦問題などの検証は、統計を使い資料を掘りおこした実証的なものです。
 4章の「日本の植民地支配の方式 金洛年」はこの典型です。日本の植民地支配は、貨幣と市場による日本との統合、法制度が朝鮮に移植「同化主義」であり、「朝鮮の四国・九州化」だと分析します。韓国の統計資料により

日本の同化主義は、(李朝、大韓帝国の)政治的権利を抑圧しながら経済面では同化を指向する、便宜主義的接近だったと言えます。
輸出入GNP比.png 産業構造.png
工場数.png 1人あたり所得.png

1)輸出入の依存度は、植民地期に10%から30%まで急速度で高くなった。
2)農林水産業の比率は70%から40%にまで下落し、鉱工業やサービス、電気及び建設業などの比率が急速に上がっている。
3)日帝が朝鮮人資本が成長できないように抑圧したとされる1911年施行の「朝鮮会社令」も、会社数で見ると、日本人が優位にある構図ですが、朝鮮人会社数も急速度で増え続け、日本人との格差を縮めている。
4)国民一人当たり所得の増加率も、解放後の、全体の期間の増加率を出すと4.9%になります。それに比べ解放前の一人当たり所得は、推計期間の間に1.8倍に増え、年平均2.2%増加したことが分かり、すなわち解放後の二分の一程度の水準。解放前は上位1%が全体所得の20%前後を占めるほど不平等だったが、1970年代には7%程度に急落し、最近また上昇して12%の水準となった。と分析し、

要約すると、解放前の朝鮮経済は日本を中心にした地域統合体制に編入されており、そのため域内貿易が活性化され、産業構造も急速に変わって行きました。この過程は当初、資本と技術で先行していた日本人が主導していましたが、朝鮮人が排除されたわけではなく、朝鮮人の工場と会社も急速に成長していたことが分かります。解放後と比べると、日本人と朝鮮人の間、または朝鮮人内部では地主と小作人の間に、甚だしい不平等があった社会であり、経済成長率もまた解放後の二分の一の速度と遅かったため、その成長の効果が底辺にまで行き渡ってはいなかったと言えます。

教科書は、個人の財産権まで 蹂躙 し、朝鮮人が持っていた土地や食糧を手当たり次第に「収奪」したかのように記述していますが、それは事実ではありません。

 日韓併合肯定論に聞こえます。朝鮮労働者が、強制徴用され劣悪な環境で奴隷のように働かされ賃金を搾取されたたという「徴用工」も、実態は朝鮮半島からの「出稼ぎ」。ある炭鉱の「賃金台帳」によると、基本給は日本人も朝鮮人も同じであり、差は時間外勤務、扶養家族の有無、宿舎・食費だそうです。給与水準は、1940年ソウルの男子と比較すると、紡績工の5.2倍、教師4.6倍、会社員の3.5倍、銀行員の2.4倍。日本にいる日本人の賃金と比較しても高水準で、1944年の朝鮮人炭坑夫の賃金は、日本人大卒事務職の2.2倍、巡査の3.7倍にもなります。

 「陸軍特別志願兵」も徴兵ではなく志願兵。無理やり志願させたということになっていますが、1938~1943年の競争率は、募集16,500に対し48.7倍。本書には、韓国人でなければできない分析が見られます。志願者の72%は南韓の中農の次男で,少なからぬ学費を負担しなけれならない普通学校の卒業者たち。志願の根底には、

当時「常民の社会」として広く知られていた北韓(韓半島の北半分)地域と違って、「班常の社会(両班と常民)」を特徴とした南韓地域の郷村社会で横行していた身分差別

があり、彼らにとって

陸軍特別志願兵制は、時代錯誤的な郷村社会の身分差別からの脱出であり、立身出世のための二つと無い絶好の近道

だったわけです。(慰安婦を含め)これらの日帝の暴挙が、釜山の「国立日帝強制動員歴史館」に展示されていると言います。「国立」ですから、教科書同様に国としてこれらの(反日種族主義の)嘘を認めていることになります。
 著者たちを「親日」として弾劾するためには、これらを論駁しなければなりませんが、そうした論を呼んでみたいものです。
続きます。

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