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読書感想文 司馬遼太郎 故郷忘じがたく候 [日記 (2022)]

新装版 故郷忘じがたく候 (文春文庫)
 夏休みの宿題・読書感想文第二弾です。 『故郷忘じがたく候』は短いのですぐ読めます。本書は、秀吉の朝鮮侵攻(文禄・慶長の役)で、薩摩の島津義弘が朝鮮の陶工を鹿児島に拉致し、その陶工の家系が現代まで400年続いているという話。司馬遼太郎がその陶工=第14代・沈壽官氏を訪ね、小説というより、『街道をゆく』系列の歴史随筆です。

以下感想文本文、13690字原稿用紙3枚強です。

 好太王碑の碑文、任那の日本府、朝鮮半島南部にある前方後円墳等々、古代から日本と朝鮮は深い関係にあり、人の交流も活発だったと考えられます。16世紀末の秀吉の朝鮮侵攻もそのひとつですが、この侵攻で朝鮮人が鹿児島に連れて来られ、薩摩焼きの名工としてその家系が400年以上続いています。

 慶長2年(1597)8月の南原城の攻防で、沈壽官氏の先祖を含む70人ほどの韓人が島津軍の捕虜となり鹿児島に連れて来られます。戦国時代には茶道が流行し渡来物の茶器が珍重されていた時代ですから、島津氏はこの茶器を鹿児島で焼くために陶工を連れて来たのです。秀吉の朝鮮侵攻で動員のかかった島津義弘は、最初から陶工拉致を目論んでいたのでしょう。

 鹿児島に着いた韓人達は、故郷の南原に似た苗代川(東市来町美山)に住み着きます。島津藩の役人は、韓人に城下に住むことを薦めますが、ココが良いと言います。
 彼等が言うには、山侍楽という丘にのぼれば我々がやってきた東シナ海が見える、その海の水路はるかかなたに朝鮮の山河が横たわっている、われわれは天運なく朝鮮の先祖の墓を捨ててこの国に連れられてきたが、しかしあの丘に立ち、祭壇を設け、先祖の祀りをすれば遙かに朝鮮の山河が感応し、かの国に眠る祖先の霊をなぐさめることができるであろう、と涙を浮かべて答えたと言います。
 島津義弘は、彼らを「朝鮮筋目の者」として士分に取り立て、苗代川に土地と屋敷を与え陶磁器を焼かせます、薩摩焼の始まりです。

 作者はこの韓人の一人、第14代沈壽官氏を訪ねます。作者の訪問より遡ること200年前、江戸天明期の医師がこの韓人陶工達を訪ねています。その訪問記に、

 薩州鹿児島城下より七里西の方、ノシロコ(苗代川)といふ所は、一郷みな高麗人なり。(中略)朝鮮の風俗そのままにして、衣服言語もみな朝鮮人にて、日を追ふて繁茂し、数百家となれり。・・・「いまも帰国のこと許し給うほどならば、厚恩を忘れたるにはあらず候えども、帰国致したき心地に候」と言い、故郷忘じがたしとは誰人の言い置きけることにや。

老人は語りおさめた、とこの医師が共感した様子が語られます。

 作者と第14代沈壽官氏の対談は弾んだようです。幻の「黒薩摩」を甦らせた話、朝鮮でも潰えた神祝歌オノソリが苗代川だけに伝承されている話、1967年に韓国を訪れ大統領の朴正煕と会った話が続き、圧巻は沈壽官氏が学生に向けた講演の話です。

 韓国に来て、36年間の日本の圧制(日韓併合)について何度も聞いた。もっともな話だが、もう後ろ向きなこと言うな、

あなた方が三十六年をいうなら、私は三百七十年をいわねばならない。

 拉致されて370年日本で暮らした韓人陶工の歴史の重みに聴衆は圧倒された聴衆の間からは『 黄色いシャツ着た男』の大合唱が起こったそうです。
 司馬遼太郎は、『韓のくに紀行』で古代~中世の日韓をこんなイメージで捉えています、

「おまえ、どこからきた」と、見知らぬ男にきく。
「カラからきたよ」と、その男は答える。こういう問答が、九州あたりのいたるところ行われたであろう。

朝鮮半島南部、対馬、壱岐、九州北部が一体の生活圏、文化圏にあったというイメージです。最悪と言われる昨今の日韓関係について作者・司馬遼太郎の意見を聞いてみたいものです。

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司馬遼太郎 『故郷忘じがたく候』

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Leland

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by Leland (2023-09-17 00:52) 

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