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映画 上海特急(1932米) [日記 (2021)]

上海特急《IVC BEST SELECTION》 [DVD] 1.jpg
 北京から上海に向かう〈上海特急〉に乗り合わせた、英国軍医と娼婦のラブストーリーです。1930年の、外人部隊兵士(クラーク・ゲーブル)とクラブ歌手(マレーネ・ディートリヒ)の『モロッコ』がヒットしていますから、舞台を中国大陸に移した同じ様な映画です。

 時代は1931年の中国。劇中に「内乱」というセリフがあるように、当時の中国は中華民国が左派と右派に分かれ、これに共産勢力が加わって覇権を競う混乱の時代。また、イギリスはアヘン戦争で香港を割譲し、米仏独など西欧列強は上海の租界を拠点に中国全土に勢力を広げ日本は満州に進出します。巨大中国は帝国主義に蚕食され身内では争っているという時代です。

 これら西欧列強の人々が、北京駅で上海行特急に乗り込みます。牧師、寄宿学校を経営する婦人、アメリカ人賭博師、フランスの退役将校、中国人と白人の混血であるビジネスマンのチャン、ドイツ人の商人、イギリスの軍医、中国人の若い娼婦フェイ、そして豪華な衣装に身を包んだ<上海リリー>の9人。
 見送りに来たイギリス軍人は軍医に告げます

  アンタはラッキーだ
  この列車には<上海リリー>が乗っている
  男に体を売って中国を渡り歩いている女だ

 車内で軍医ハーヴェイ(クライヴ・ブルック)はかつての恋人マデリン(マレーネ・ディートリヒ)と出会います。あなたは変わったと言うハーヴェイに、マデリンは名前を変えたことを告げます、

  一人の男のためだけに”上海リリー”には変えない
  悪名高き中国の白い花
  噂には聞いたでしょう

<上海リリー>とはマデリンだったわけです。ハーヴェイは裏蓋にマデリンの写真を貼った彼女から贈られた時計を持っています。5年振りの再会。マデリンは別れて5年と4週間だと言い、ハーヴェイはマデリンを忘れたことは無いと言います。別れた恋人同士は、5年間お互いを想っていた、未だに愛していることを告白します。ハーヴェイとの恋に破れた(と思った)マデリンは高級娼婦となり、娼婦となったが今もハーヴェイ愛しているというわけです。娼婦の恋です。

 という舞台設定で事件が起きます。列車が中国の「反政府勢力」に乗っ取られます。この乗っ取りを指揮したのは乗客のひとりであるビジネスマンのチャン。チャンは、政府に囚われた同志を救うため、列車の乗客を人質に取ったのです。この反政府勢力は、毛沢東の共産勢力、蒋介石の国民政府ではなく、汪兆銘の武漢国民政府と思われます。チャンは、上海総督の手術のために上海に向かうハーヴェイを捕虜交換のために拘束します。
 チャンの胡散臭いところは、上海リリーに「オレのアジトで一緒に暮らそう」と言い寄るところ。反政府勢力の指導者とはいえ、この時代の中国の軍閥、馬賊と変わりませんw。リリーに拒絶されると、乗客のひとり若い娼婦フェイ(アンナ・メイ・ウォン)をどうも暴力でモノにした模様(1932年の映画ですからその辺りの描写はありません)。

 列車乗っ取りの危機の中で、ハーヴェイとリリーの恋は再び燃えあがります。ハーヴェイはチャンを殴り倒してリリーを救出しチャン監禁に監禁されます。今度はリリーがハーヴェイ救出に向かい、チャンは「無事帰して欲しかったらオレの女になれ!」と迫り、リリーはハーヴェイを救うためにチャンの要求を飲みます。娼婦がかつての恋人のために我が身を犠牲にするという「聖女伝説」。この展開を知らないハーヴェイはリリーの変心を疑い、5年の歳月を経て燃え上がったふたりの恋はどうなるのか?…プロットは単純ですが、そこはマレーネ・ディートリヒ、見せてくれます

 フェイは暴力で犯したチャンを刺し殺し、リリーは自由の身となり、ハーヴェイはリリーの献身に気づくわけです。汽車は9人の乗客を乗せて再び発車し上海駅に到着。短い旅で運命を共にした乗客はそれぞれの日常へと帰ってゆきます。
 リリーはチャンに奪われた時計を新たにハーヴェイにプレゼントしてハッピーエンド。シンプルと言えばシンプルですが、退廃的美貌と言われるディートリヒの聖女伝説、大人の恋の物語です。全編これマレーネ・ディートリヒに特化した、他はどうでもいいという映画ですw。1932年の映画ですからマァこんなものかも知れませんが、国際色豊かな上海特急はなかなか味があります。

監督:ジョセフ・フォン・スタンバーグ
出演:マレーネ・ディートリヒ、クライヴ・ブルック

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