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トール・ヘイエルダール コン・ティキ号探検記 [日記(2015)]

コン・ティキ号探検記 (河出文庫)
 きっかけは映画『テレマークの要塞』。この「ノルスク・ハイドロ重水工場破壊工作」に参加したひとりKnut Hauglandが後に「コン・ティキ号」に無線係として乗り込んでいたということ知りました。書名だけは有名ですが未読、面白そうなので読んで見ました。

 北はハワ、南はニュージーラン、東はイースター島という広大な海域に点在する島々の住人、ポリネシア人は何処から来たのか?という謎に挑戦したのが「コン・ティキ号」です。イカダでペルーから海流に乗ってポリネシアの島に漂流し、ポリネシア人南米起源を実証しようとした「漂流記」です。「コン・ティキ号」は、 1947年4月にペルーのリマ(カヤオ港)を出発し、8000km、102日の漂流の後、ツアモツ諸島のラロイア環礁に到着しヘイエダールの説を実証します。というノンフィクションです。

 ポリネシア人は南米から海流にのってやってきた、というヘイエルダールの説を学会は否定します。それなら実際にイカダに乗って証明してやる!というわけです。ヘイエルダール33歳、意気軒昂です。この冒険に参加したのは、
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左からクヌート、ベングト、ヘイエルダール、エリック、トルスティン、 ヘルマン
 
エリック・ヘッセルベルグ(33歳、ノルウェー、画家・彫刻家)天文観測(六分儀)
ベングト・ダニエルソン(26歳、スウェーデン、人類学者)賄い
クヌート・ハウグランド(30歳、ノルウェー、元レジスタンス)無線係
トルスティン・ロービー(29歳、ノルウェー、元レジスタンス)無線係
ヘルマン・ワッツィンゲル(31歳、ノルウェー、エンジニア)気象観測
 
いずれも20代30代の若者。学術探検というより、冒険が彼らの血を掻き立てたのでしょうね。面白いのは、元レジスタンスが2名加わっていること。いずれも無線係です。ナチスとの戦いに比べたら、8000kmの漂流なんか大したことはない、ということでしょう。

 資金集め、米海軍への支援要請から始まって、エクアドルでバルサ材(筏の原料)の伐採、ペルー海軍の軍港を借りての筏の組み立てと、けっこうハードな仕事をヘイエルダールはユーモアいっぱいに書きます。絶対に成功するという信念、と言うより若者の踊るような冒険心です。

 このノンフィクションの特徴は、ユーモアです。

わたしはある大国の大使に呼ばれた。
「ご両親は生きておられますか」と彼は言った。そしてわたしがはいと答えると・・・
「お母さんやお父さんがあなたの死をお聞きになったら、非常に悲しまれるでしょう」

 誰もこの冒険が成功するとは考えていないわけです。こうしたユーモアが随所にあり、読んでいて飽きません。また、著者は人類学者、海洋生物学者であるとともに詩人です。海草のヒゲ生やしウミガメやブリモドキをお供に、プランクトンの燐光をなかを漂うコン・ティキ号は一幅の絵です。

 コン・ティキ号は見事にポリネシアのツアモア群島に漂着し、ヘイエルダールのポリネシア人南米起源説を実証します。現在ではこの説は遺伝子分析によって否定され、ポリネシア人の起源は東南アジアだそうですが、『コン・ティキ号探検記』の記録文学としての価値はいささかも減じることは無さそうです。

 惜しむらくは、翻訳の拙さです。イワシやトビウオが筏に飛び込み、それが美味しい食料になるというくだりです、

海とお隣り同士のように親しくするということは、トルステインがある朝目を覚まして、枕の上にイワシを発見してはじめて、彼によって実現された。

この日本語はないでしょう。こうした「直訳」が随所に見受けられます。なかには、高校で習った英語の構文そのままの日本語訳まであります。英文学の大学教授でもある訳者は、何人かのゼミの生徒に翻訳させ、それを集めて本にしたのではないかと疑いたくなります。光文社で新訳を出してくれないものでしうか。
 
 という翻訳のハンディを引いても、なかなか面白い冒険記です。 

タグ:読書
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Xperiaで絵日記 盆栽やってみようか(2)幼木 [日記(2015)]

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庭で見つけた幼木 マキ            同じくマンリョウ
 
 これ以上庭に植物を植えないでくれと家族に言われています。一度松を植えて大きくなり過ぎ、柿にモミジでジャングル状態でした。鉢植えならいいだろうと、盆栽を計画しています。
 
 盆栽のサイトを覗くと、実生、挿し木でほとんどの樹木が盆栽となるようです。しからばということで、 季節も初冬、樹木の種を採取。注意して探すと幼木もいろいろ生えています。我が家の庭にも、マキ(イヌマキ)とマンリョウの幼木がありました。散歩の途中雑木林で見つけたのは、松、イチョウ、コナラ、モミジ、ウバメガシ、その他名前も定かで無い幼木がたくさん。この季節に移植すると枯れるかも知れないので、春になったら頂いてきます。
 
 実(種)も確保しています。イチイ、ハゼ、ドングリ、メタセコイア、サルスベリ、銀杏、豆柿?etc。果肉を取り去って濡れテッシュで包んでビニー袋に密閉して冷蔵庫保管。これも春に播いてみます。相当な数の素材が出来ることになります。どれか発芽、活着するでしょう(笑。
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ブナ科のなにか                 マツ 
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イチョウ                      苔も要ります
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種も確保しています

タグ:野草
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古いノートパソコン [日記(2015)]

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 久々のPCネタです。

 安いノートPCを買ってくれと頼まれ、寒い中日本橋(大阪)に行ってきました。本人はMac使いなのですが、仕事で使うソフトがMacでは動かないとのことです。要件を調べてもらうと、2コア、メモリ2Gなら動くといことで、買ってきたのがNEC PC-VK13MBBCBです。NECのパソコンは初めて。

Core i5 560UM1.33GHz、メモリ4G、HDD160G、無線LAN有り、光学ドライブ無し、blue tooth無し、1,280×768、SDカードスロット、PCカードスロット、USBx3、Windows7 Professional、1.17kg、2010/10発売

 立派なスペックで、私のノートより性能は上。光学ドライブはありませんが、普段使いませんから外付けで十分。Core i5、1.33GHz(ターボ・ブースト機能有効時 最大2.13GHz)ならたいていのことはできます。ターボ・ブースト機能は初めて。メモリは最大8Gまで増やせますが、32bitなら4Gで十分。HDD160Gは控え目ですが、サブノートとして使うなら問題ないでしょう、クラウドに逃がすという手もあります。何より1.17kgと軽いのがいいです。

 当然スンナリ起動し、netは快適、動画も十分。PCは、スマホと違って余分なソフトが入っていないのがイイですね(windows mobileもこうなんだったら、乗り換えてもいいかと思います)。

 USBの光学ドライブを繋いで見たのですが、認識しません。win7のデスクトップでも他のノートでも認識するのに何故?。netで検索するとレジストリがどうとかあります。待てよ、USBの電流が足りないのかも?とドライブ付属の2本のUSBを繋ぐと見事に認識。非力なのは、PCなのかドライブなのかは?。
 取り敢えず再セットアップディスクを作り、当面必要と思われる、openoffice、acrobat reader、google chromeをインストール。普段はMacの人なので、これくらいあれば用が足りるでしょう。safariを入れてあげようと思ったのですが、windows版は無くなっているいるようです。

 グラフィックボードだクロックアップだとHDDベンチの数字に一喜一憂した昔が懐かしいです。今やPCは単なる道具で、動けばイイカです。個人の努力やスキルが報われる趣味のフロンティアは、デジタルではなくアナログの世界かもしれません。


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映画 カウボーイ(1958米) [日記(2015)]

カウボーイ [DVD]
 グレン・フォードとジャック・レモン共演の西部劇です。
 グレン・フォードは『決断の3時10分』で(1957の方)ヴァン・ヘフリン相手の渋い悪党ベン(リメイクではラッセル・クロウ)が印象深いです。一方のジャック・レモンは、『ミッシング』『チャイナ・シンドローム』のシリアスな役柄もありますが、『お熱いのがお好き』『アパートの鍵貸します』でコメディアンの印象が強いです。このふたりの共演ですから、どんな西部劇が生まれるのか?。
 まぁ言ってみれば『ローハイド(1959年)』です。映画とTVの違いはありますが、『カウボーイ』が1958年ですから、『ローハイド 』の方が後発。当時この手の“ロング・ドライブ”が流行ったのでしょうか。

 フロント係として勤めるハリス(ジャック・レモ)のホテルに、牛を追ってシカゴにたどり着いたリース(グレン・フォード)一行が宿泊するところから幕が開きます。一仕事終わった後ですから、一行は旅の垢を落とすという具合になります。若いカウボーイは酒と女ですが、リースはオペラとポーカー。オペラというのは何とも渋い。リースはポーカーで大敗して、次の牛の仕入れ資金までスッてしまいます。リースは、牛の運送業者ではなく、西部で牛を買ってシカゴに運んで売るという牧畜業者ということになります。
 
 かねてから“カウボーイ”にあこがれていたハリスはリースに出資し、メキシコからシカゴまでのロングドライブに加わることになります。この話には少しう裏があって、ハリスのホテルに泊まっていたメキシコの牧場主の娘に惚れ、この牧場主がリースが牛を買う相手であり、リースに付いて行けばその娘に会えるという目論見があります。

 これで、ロングドライブを舞台としたグレン・フォードとジャック・レモンの物語が整います。『ローハイド』で言えば、隊長フェイバーさんと若いカウボーイ・ロディ(クリント・イーストウッド)みたいなものです。で映画はというと、インディアンの襲撃や牧童仲間の死、旅先でのいざこざなどの事件のなかで、グレン・フォードの経験と知恵が描かれ若いジャック・レモンが苦難に耐えて一人前のカウボーイ、人間に育ってゆくというストーリーです。
 物足りない?、そこがこの時代の西部劇のいいところです。

監督:デルマー・デイビス
出演:グレン・フォード ジャック・レモン アンナ・カシュフィ ブライアン・ドンレビ ディック・ヨーク

タグ:BSシネマ
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映画 エアフォース・ワン(1997米) [日記(2015)]

エアフォース・ワン 特別版 [DVD]
 なんと大統領専用機エアフォース・ワンがハイジャックされ、大統領が単身テロリストと戦うという荒唐無稽のアクション映画です。子供が尊敬する人に大統領の名が挙がる、アメリカならではの映画です。
 ロシアとアメリカが合同でカザフスタンの独裁者を拉致します。テロリストは、この独裁者の釈放を狙ってエアフォース・ワンをハイジャックします。大統領専用機がこうも簡単に乗っ取られていいの?というあっけなさ。武器は機内にあり、テロリストを手引きするシークレット・サービスがいたりで、ご都合主義もいいところなんですが、映画の見せ場は、大統領ハリソン・フォードのインディ・ジョーンズばりのアクションにあるわけですから、細部にはこだわりません。

 対するテロリストの親玉にゲイリー・オールドマン。この人の狂気の悪役ぶりは最高です。元は二枚目俳優だと思うのですが、『JFK』でオズワルドを演じた辺りから、どんどんその道に入って、次に来たのが『ドラキュラ』。『レオン』の気違い麻薬捜査官を経て『裏切りのサーカス』でオスカーにノミネートされるという、エキセントリックな人物を演じさせれば当代随一です。ジョン・ル・カレ『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ(1974)』を映画化した『裏切りのサーカス』はお薦めです。

 ハイジャックだというので、シークレット・サービスは大統領を脱出用ポットに入れて逃がします。エアフォース・ワンにはこういう仕掛けがあるんでしょうね。当然大統領は逃げません。50人のスタッフと同乗していたファースト・レディと娘を助けるためにエアフォース・ワンに残り、単身テロリストに立ち向かいます。パンチを繰り出しマシンガンをブッ放し、最後はジャンボジェットを操縦して、ジェット機と救出機をロープで綱渡り。手に汗握るインディー・ジョーンズの大統領版です。

 ばかばかしいと言ってしまえばそれまでですが、世界の警察、強いアメリカ、家族を守る強い父親が、これでもかと言うほど詰まった映画です。アメリカ人好みのマーケティングが冴えて、ヒットしたんではないでしょうか。
 こういう映画を『Uボート』のウォルフガング・ペーターゼンが監督するというのも、面白いです。

監督:ウォルフガング・ペーターゼン
出演:ハリソン・フォード ゲイリー・オールドマン ウィリアム・H・メイシー グレン・クローズ
タグ:BSシネマ
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丸谷才一 恋と日本文学と本居宣長、女の救はれ [日記(2015)]

恋と日本文学と本居宣長・女の救はれ (講談社文芸文庫)
 『恋と日本文学と本居宣長』、『女の救はれ』の二編からなり、 もともとは『恋と女の日本文学』というタイトルの本だったようです。光源氏の女色の物語が何故「文学」なのか?という疑問の答えになる(かもしれないと)読んでみました。 著者によると、

わが文学の恋愛肯定論を論じ、次いで日本文学史をさながら一本の赤い糸のように貫く女人往生主題を説く。

という評論です。

 そういえば、歌や詩にしろ小説にしろ、日本文学は恋を主題としたものが多いです。万葉集の1/3は相聞歌、源氏は言うに及ばず『和泉式部日記』は恋の日記文学、文豪・漱石の小説も読みようによっては三角関係ばかり。シェイクスピアもトルストイもドストエフスキーも恋愛が主要なモチーフのひとつとなっています。文「学」というものは、男にとっては女「学」、女にとっては男「学」なのでしょうか。
 著者は、中国文学に「恋」が希薄だといいます。唐代の「遊仙窟」という男女の情愛を書いた小説は中国では消えてしまい、遣唐使によって日本にもたらされたものが清代になって中国に逆輸入されています。中国では、史書や英雄譚は盛んですが、恋を扱った詩歌や小説は本として扱われず軽んじられたわけです。中国では、儒教が生活や思想を縛っているために、儒教と逸脱する恋愛の本は書かれなかったのです。
 この恋を中核に据えた日本文学の伝統が、明治になって、西洋文学の受容(恋愛の文学)とそれ以降の文学の発展を産んだと言います。「もののあはれ」と「色好み」です。
 著者は、本居宣長が西洋文学の影響を全く受けずに日本文学の本質を「もののあはれ」と捉えたことを評価します。

 そもそも日本文学では、何故恋が主要なモチーフとなるのか?。
 生まれた子供の母親が誰であるかは確実ですが、父親は推測に過ぎません。従って、血統、血縁というものを確実に繋ぎ財産を相続してゆくためには、母系が確実なわけです。「母系社会」です。母系社会で家を継ぐのは女性であり、男性は家を出て外で「妻」を探さなければならないわけです。母系社会の枠組みで、男性が「妻」になる女性の元に通う形態が「妻問婚」です。光源氏と葵の上、紫の上の関係です。
 貴族社会では、未婚の女性は絶対に男性にその姿を見せません。文字通り深窓の令嬢です。噂だけで見たこともない女性を口説くために、男性は女性に歌(短歌)を贈ります。歌の上手い下手が男性の値打ちとなりますから、現代の男性がオシャレをするように歌作りの修行に励んだのでしょう。心に響く歌なら女性はOKを出し、男は忍んで行きます。事が成って朝になってみれば、女性はとんでもないブスだったという話が『末摘花』(源氏)です。 
 
 で庶民はというと、たぶん「歌垣」でしょうね。歌垣で、男はコレはという女性を歌で口説き、OKが出れば「夜這い」ということになるのでしょう。この歌から文学が生まれ、文学の本質(出発)は男女の恋愛にあるというのが本書の主題です。そう言われてみると、光源氏の女性遍歴の小説が「文学」だというのは、分からなくもないです。 
 
わたしは、日本文学核心にあるものは、天皇が貴女たちに言い寄る恋歌であると思ってゐます。

だそうです。
 建礼門院と義経と『壇浦夜合戦記』(春本)に始まる『女の救はれ』も面白いですが、また今度。

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映画『テレマークの要塞 』に登場する無線機 Type 3 Mk. II(B2) [日記(2015)]

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 マニアックな話題です。 
 古い映画を見ていると、時々面白い無線機が登場します。映画『テレマークの要塞 』で、ノルウェーのレジスタンスが英国と無線連絡を取るシーンがあります。当時のノルウェーはドイツ軍の占領下にあり、ノルウェー王国はロンドンに亡命政府を樹立し、国内ではレジスタンスがドイツ軍と戦うという状況です。 『テレマークの要塞 』は、イギリス特殊作戦執行部(SOE)とともにナチスの原爆製造を阻止するレジスタンスの活躍を描いた映画ですから、このシーンで連絡を取る相手はSOEでしょう。ヨーロッパはほぼ全域が第三帝国の版図であり、フランス、ポーランド、チェコスロバキア、オランダ、ノルウェーなどはロンドンに亡命政府を作っています。
 イギリスは、これらドイツ軍占領地のレジスタンスを援助しナチスと戦ったわけで、レジスタンスとの連絡のために無線機が配られたのでしょう。
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                      高密度な送信機
 『テレマークの要塞 』で登場した無線機は、《Type 3 Mk. II》という送信機、受信機、電源がスーツケースに収められた「スパイ無線機」です。有名な無線機のようですから、これが使われていた可能性は大きいです。Crypto Museumに詳しい資料があります。

《送信機》
・3-16 MHzの16~20Wの水晶発振子制御の電信送信機
・EL32(発振)→6L6(電力増幅)
《受信機》
・3.1~15.2MHzのスーパーヘテロダイン受信機
・7Q7(周波数変換)→7R7(470kHzの中間周波数増幅)→7Q7(中間周波数増幅・BFO)→7R7(低周波増幅)
《電源部》
・交流97-140Vと190-250V、直流6V(バッテリ)
・受信用230V、-12.5V(バイアス)、送信用500V、ヒータ6.3V

 これに、スペアーの真空管、電鍵、アンテナ線、アース線、取説が付属して1セットがトランクに収まっています(総重量15kg)。送信周波数を決める水晶発振子は、レジスタンス毎に決まった周波数のものが配布されたのでしょう。
 交信するイギリスの基地局はエニグマで有名な《ブレッチリー・パーク 》です。ブレッチリー・パークには米ナショナルのHRO受信機やMarconi CR100/2がズラリと並んで、各国のレジスタンスや諜報員からの連絡を受信していたのでしょう。ブレッチリー・パークについては、映画『エニグマ』がその雰囲気をよく伝えています。
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ブレッチリーパークのHRO      同Marconi CR100/2
 オスロ~ロンドン間は1100km、ロンドン~パリ間は400kmですから、Type 3 Mk. IIの性能とブレッチリー・パークの設備(好感度受信機と大電力送信)を考えれば、十分交信が可能です。ゾルゲ(1933~1941東京)はもっと貧弱な設備で、東京~ウラジオストック間1100kmの交信を行っています。レジスタンス、スパイが無線通信を行う場合にハードルとなるのがアンテナです。おおっぴらに屋外にアンテナを建てるわけにはいきません。ゾルゲは、室内にアンテナを張っていたという証言(取調調書)があります。Type 3 Mk. II付属のマニュアルには、アンテナのことも書かれています。

 戸外にアンテナが張れない場合は、部屋の天井にジグザグに張れと記されています。アースも重要で、絨毯の下にカウンターポイズ(アース線)を張るようになっています。面白いのは、インシュレーター(絶縁碍子)の作成法です。ガラス瓶の口を使うように薦めていますが、このアイデアは秀逸。無線機を操作するのは兵士ですから、マニュアルは、同調の取り方からアンテナの設置方法まで懇切丁寧に書かれています。
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写真1.jpg 送信機.jpg
ゾルゲの手作り無線機と室内アンテナ(みすず書房『現代史資料 1』)

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150mm望遠+マクロコンバータ(3) [日記(2015)]

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 150mm+マクロコンバータのネガ→デジタル化も疲れたので、気分転換です。日頃スマホのカメラばかりで撮っていますが、ちゃんとしたカメラはやはり違いますねぇ。
 手持ちはきびしいです。三脚はオーバーなので、トレッキング兼用で一脚が欲しいところです。
 

モンベル(mont-bell) トレッキングフォトポール ウォールナッツ 1140153 WLNT 1140153

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  • 出版社/メーカー: モンベル(mont-bell)
  • メディア: スポーツ用品

 

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映画 マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015豪米) [日記(2015)]

マッドマックス 怒りのデス・ロード ブルーレイ スチールブック仕様(数量限定生産/1枚組/デジタルコピー付) [Blu-ray]
 『マッドマックス』4作目です。相変わらず、マックスが核戦争後の荒廃した砂漠で、暴力で支配する集団と戦ういうストーリーです。マッドマックス2』と『サンダードーム』も砂漠を抜け出してオアシスに向かうプロットが組み込まれていましたが、今回も同様で、緑の大地を目指します。
 『2』『3』では子供を登場させ、幾分メルヘンの味付けがありましたが『Fury Road』は、アクションと世界感がさらに過激になっています。

 敵役は、ウォー・ボーイなる戦士を従えて砂漠に君臨するイモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)。『サンダードーム』では、バータータウンの女王ティナ・ターナーと町のエネルギー(メタンガス)を握るマスター(侏儒)が敵役でしたが、イモータンは、水と緑(作物)を握り、自らを救世主と名乗って核戦争で生き残った人々とウォー・ボーイをマインドコントロールする怪物です。放射能汚染からまぬがれた健康な5人の女性を囲いハーレムを作るという、わりと常識的な?悪役。ティナ・ターナーとマスターほどの存在感はありません。

 このイモータンを敵にまわして戦うのが、軍団の大隊長フュリオサ(シャーリーズ・セロン)。イモータンを裏切り、5人の女性を連れて生まれ故郷、緑の大地を目指します。基本はイモータンvs.フュリオサで、マックス(トム・ハーディ)はこれに巻き込まれフュリオサ一行を助けるというストーリーです。芸達者なシャーリーズ・セロンはアクション映画には勿体ないです。

 脇役として、マインドコントロールから抜け出してフュリオサに味方するウォー・ボーイ、ニュークス(ニコラス・ホルト)、イモータン一味の「人食い男爵」などが登場します。いずれも、『2』に登場したジャイロ・キャプテンや、ブーメラン少年には及びません。

 残るは登場するマシンです。二輪、四輪からジャイロスコープ、機関車、飛行機と進化してきましたが、今度はというと初心に帰って?四輪。四輪といっても、巨大なタンクローリーや巨大なタイヤを履いた砂漠専用の四駆などアップスケールの四輪でそれなりの迫力ですが、所詮車の追いかけっこに過ぎません。

 Wikiによると、映画本編の前日譚にあたる全4冊のコミックがあるそうです。コミックには、『サンダードーム』と『Fury Road』の間を埋めるイモータンや人食い男爵、フュリオサの物語が描かれているようです。つまり、映画『Fury Road』は、一連の『マッド・マックス』のストーリの中から、イモータンvs.フュリオサ+マックスの因縁の戦いだけを映像化したということでしょう。アクションだけでストーリーは希薄というのは、このコミックが前提になっているからでしょうか。12月には日本語版が発売になるそうです。 曰く、

イモータン・ジョーはどうやって武装戦闘集団「ウォー・ボーイズ」を結成したのか?
フュリオサはなぜ5人の妻たちを逃がす決意をしたのか?
マックスを悩ます謎の少女の正体は?

 ということで、アクションだけを全面に押し出したこの映画は、中途半端です。『マッド・マックス』の世界はどうでもいい、アクションを楽しみたいという方にはお薦めですが。『5』『6』が計画されているようですから、そちらで『Fury Road』に至る世界が描かれるのでしょうか?、『エピソード1』として。

監督:ジョージ・ミラー
出演:トム・ハーディ シャーリーズ・セロン ニコラス・ホルト

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映画 夜叉(1985日) [日記(2015)]

夜叉[東宝DVD名作セレクション]
 高倉健は、任侠映画において、耐える男、その忍耐と炸裂の美学(カタルシス)を演じてきた俳優です。そのバックボーンは誠実さです。任侠映画を離れた(東映から独立した)後も、高倉健はずっとこのイメージを演じ続けてきたといってもいいでしょう。

 背中に「夜叉」の刺青を彫ったミナミ(大阪)のヤクザ修治(高倉健)は、足を洗って恋人・冬子(いしだあゆみ)の故郷、敦賀で漁師となります。15年が経ち、これもミナミから来た螢子(田中裕子)が漁師町に現れ飲み屋「螢」を開いたことによって、修治の平穏な生活は破られます。
 螢子の愛人・矢島(ビートたけし)が漁師町にシャブを持ち込み、漁師たちの間に広がります。修治がヤクザを辞めた理由のひとつがシャブでした。シャブ中毒の矢島は包丁を振り回して螢子を追いかけ、止めに入った修治は服の背中を切られ町の住民に「夜叉」の刺青を知られてしまいます。
 この事件をキッカケに、ミナミを知る修治と螢子の仲が急接近します。螢子は、シャブの代金が払えず暴力団に捕まった矢島の救出を修治に頼み、修治は螢子のために冬子の反対を振り切り、「人斬り夜叉」としてミナミに舞い戻ります。ヤクザに監禁された矢島を一旦は救出しますが、矢島は殺され修治は冬子の元に帰って「幕」。

 『夜叉』は、事件をきっかけに主人公の人生がほころび、そのほころびの中から彼の過去が顔を出すという降旗康男お得意のストーリーです。ところが、高倉健の魅力(私が勝手に言っているだけですが)《耐える男、その忍耐と炸裂の美学》があるかと言うと、これが?。ヤクザの過去を隠して平穏に暮らす修治が、「人斬り夜叉」に戻り矢島を救出するという必然性、所以が分かりません。矢島は町にシャブを持ち込み包丁を振り回して町民を追い回した人間です。
 
 何故矢島を救うことになったのか?、螢子に頼まれたからです。「螢」で螢子と飲んでいる時が一番安らぐという理由だけで冬子を「裏切り」、3人の子供のいる家庭を顧みず、矢島を救いに「夜叉」に戻ったわけです。冬子を裏切り螢子を選択したことで、高倉健の映画のバックボーン「誠実さ」が抜け落ちます。
 冬子の母親に「夜叉は背中ではなく修治の心に住んでいる」と言わせていますから、螢子がその夜叉を呼び覚ましたのかもしれません。男に巣食う「夜叉」を描くのであれば行き着くところまで行くべきであり、冬子の元に帰るラストは不可解です。
 『夜叉』は高倉健の美学(というものがあるなら)を描ききれていません。

 田中邦衛、小林稔侍、ビートたけしなどお馴染みの俳優が出演しています。ちなみに、ビートたけしのセリフは相変わらず「テメー、コノヤロー」です(笑。

監督:降旗康男
出演:高倉健 田中裕子 いしだあゆみ ビートたけし

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