SSブログ

最後の3日で仕上げる「読書感想文」 宮沢賢治『永訣の朝』 [日記 (2023)]

『春と修羅』 1.jpg
 小森陽一『大人のための国語教科書 -あの名作の"アブない"読み方!』を読んで、最短最速の「読書感想文の書き方」を見つけました。同書には宮沢賢治『永訣の朝』の詳しい解説が載っています。そうだ、詩を読んで読書感想文を書けばイイ!、詩は短いからすぐ読める!、青空文庫『春と修羅』にある!。で、小森センセイの本を参照にやってみました。但し、小森センセイの本は"アブない"読み方!ですから、これを丸写しにすると☓です。同書は、小森センセイが教科書の「指導書」を批判的に読んで「正しい」解釈を施すという本です。従って、この本の「指導書」の通りに感想文を書けば「合格」となります。原文の引用を使って原稿用紙3枚に収めます。

 教科書には『永訣の朝』以外にも、中原中也:サーカス、萩原朔太郎:竹、谷川俊太郎:二十億光年の孤独、高村光太郎:道程、石垣りん:表札、吉野弘:I was born などが掲載されているようです。これはという詩で感想文を書いてもいいでしょう。詩と言うのは意外と穴だと思います、詩はダメだと云う教師はいないはずです。
 俳句は17文字です、正岡子規と法隆寺をネタに「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」の感想文を書いていいわけです。

 で『永訣の朝』です。永訣とは永遠の別れ、宮沢賢治が妹のトシの臨終を看取る詩です。起承転結の4段から成り立ち、それぞれに賢治の心の動きが詠まれています。詩の文言を引用して、賢治の心の動きを書きます。

 ポイントは、死に行く妹を前になす術のない賢治を、逆にトシが励ますことです。「あめゆじゅとてちてけんじゃ」、雨雪(みぞれ)を取ってきて下さい、がそれに当たります。トシの優しさと「Ora Orade hitori egumo」(私は私でひとりで死を引き受けます)というトシの決意に賢治は勇気付けられます。そしてこれがポイントなんですが、妹の死という個人的な悲しみを、普遍的な祈りに昇華させます。「どうかこれ(賢治がトシのために取ってきた”あめゆじゅ”)が兜率の天の食となって おまへとみんなとに聖い資糧をもたらすやうに わたくしの すべての さいはひを かけて ねがふ」がこれに当たります。つまり「オチ」です。

 と云うことを、各段を適当に膨らませて書けばイイわけです。では書いてみます。

   ### 感想文 ###
宮沢賢治『永訣の朝』
           駄犬 ターボ

 『永訣の朝』は、宮沢賢治が妹のトシの死を看取る詩です。『永訣の朝』は4段から成り立っていると思われます。

第一段▼けふのうちに とほくへいつてしまふわたくしのいもうとよ ~ わたくしはまがつたてつぱうだまのやうに このくらいみぞれのなかに飛び出した 
 →トシがあめゆじゅ(雨雪)を食べたいと賢治に頼み、賢治は庭に飛び出します。

第二段▼蒼鉛いろの暗い雲から ~ まつすぐにすすんでいくから
 →賢治は、トシが「あめゆじゅとてきてけんじゃ」と頼んだことは、彼女の気遣いだと気づきます。妹の死に兄である賢治は何もしてやれないわけです。トシは兄のその無念さを少しでも和らげようと、雨雪を取ってきてくれと頼むわけです。賢治はトシの優しさに気づおきます。
 第一段では、雨雪は「うすあかく いっさう 陰惨(いんざん)な雲」、「蒼鉛(そうえん)いろの 暗い雲から降る」と表現され、気付いた後の第二段では、雨雪は「銀河や太陽、気圏などとよばれたせかいのそらから降る」と肯定的に表現されます。

第三段▼はげしいはげしい熱やあへぎのあひだから ~ このうつくしい雪がきたのだ
 →トシの (Ora Orade hitori egumo) が引用され、死に臨んで彼女の強い決意が記されます(だからローマ字?)。その姿は「やさしくあをじろく燃えているけなげないもうと」と表現されます。「雪と水の二相系」とはトシが生と死の間にいることを指していると考えられ、賢治が取ってくる「あめゆじゅ」の言い換えです。
 (うまれでくるたて こんどはこたにわりやのごとばかりで くるしまなあよにうまれてくる)
このトシの言葉を賢治は第四段で受けます。

第四段▼お前がたべるこのふたわんのゆきに ~  わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ
 →賢治は、取ってきた雨雪がトシとみんなの聖なる糧となるよう祈ります。
「どうかこれが兜率の天の食となって おまへとみんなとに聖い資糧をもたらすやうに わたくしの すべての さいはひを かけて ねがふ」で、賢治が妹の死を悲しむ個人的な感情が、「妹とみんな」に昇華されます。普遍性に昇華されるわけです。

 この四つの情景を「方言」で結び、情景=賢治の想いが際立つ仕組みになっています。

 死んでゆく妹が食べたいと頼んだ雪の一椀が、妹を失う賢治の悲しみを癒し、自分を思いやるトシへの感謝、そして、天国き行く妹の幸せしあわせ及びみんなのしあわせを願う気持ちに変るという詩です。

   ### 感想文ここまで ###。
 これで1,077字、原稿用紙3枚。

【余談】
 わたしのblogの読書感想文では、山際淳司『スローカーブを、もう一球』、坂口安吾『ラムネ氏のこと』にアクセスが多いのですが、この夏は 馳星周『少年と犬』に多くのアクセスを頂いています。震災のトラウマで一言も口をきかなくなった少年と、震災の釜石から熊本まで旅した犬・多聞の物語です。これもこの夏亡くなった駄犬ターボの応援かもw。

【当blogの読書感想文】

小林多喜二 『蟹工船』・・・青空文庫利用
芥川龍之介 『藪の中』・・・映画併用、青空文庫利用
山際淳司  『スローカーブを、もう一球
須川邦彦  『無人島に生きる十六人』 ・・・青空文庫利用
坂口安吾  『ラムネ氏のこと』 ・・・青空文庫利用
藤沢周平  『蝉しぐれ』・・・原稿用紙約3枚
吉村昭   『漂流』 ・・・原稿用紙約3枚
笹本稜平  『春を背負って』 ・・・原稿用紙約3枚
遠藤周作  『沈黙』 ・・・原稿用紙約3枚
百田尚樹  『海賊とよばれた男
夏目漱石  『こころ』・・・定番!
西村 淳  『面白南極料理人』・・・映画もあり
佐藤 剛  『上を向いて歩こう』・・・お馴染みの歌の話
門井慶喜  『銀河鉄道の父』・・・宮沢賢治です
馳星周   『少年と犬』・・・1910文字
伊集院静  『ノボさん』・・・1100文字
司馬遼太郎 『故郷忘じがたく候』・・・原稿用紙約3枚
川村裕子    『現代語訳 和泉式部日記』・・・原稿用紙約5枚
田渕久美子   『ヘルンとセツ』・・・原稿用紙約3枚
宮沢賢治  『永訣の朝』・・・このページ

タグ:読書
nice!(8)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 8

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。