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映画 ノマドランド(2021米) [日記 (2023)]

ノマドランド [AmazonDVDコレクション] ノマド: 漂流する高齢労働者たち  スタバでパソコン使って仕事をすることを「ノマド」だと思っていたのですが違うんですね。wikiによると、

ノマドは遊牧民、転じて放浪者の意。ノマドワーカー(ノマドワーキング)---特定のオフィスなどを持たない働き方をする人、働き方。

 冒頭、企業が倒産し企業城下町からは人が去り郵便番号さえ無くなったというテロップが流れます。夫と死別してその町に住むファーン(フランシス・マクドーマンド)は家を畳み、ワンボックカーに家財道具を積んで仕事を探しながら旅に出ます。60歳を過ぎたファーンは定職に就けず 、車上生活をしながら仕事求めてアメリカを彷徨います。自ら望んでノマドとなった者、ノマドに追いやられた者などファーンのような労働者は珍しい存在ではなく、行く先々のRVパークでは多くの出会いがあります。それはそれで心暖まるものがありますが、帰るべき家があるのが「旅」で、家を持たない現代のノマドワーカーは旅人でさえなく、孤独な流浪の民かも知れません。

 アマゾンの発送の仕事も年中あるわけではなくX'masなどの繁忙期だけで、農作物の収穫、シーズンの終わったテーマパークの清掃と、季節労働者です。世界恐慌の起こった20世紀始め、列車に無賃乗車しながら各地を渡り歩いた「渡り鳥労働者ホーボー」がいました。ノマドワーカーは、さしずめ現代のホーボーだと言えます。ファーンの姉は「ノマドの生き方は昔の開拓者みたいだ。アメリカの伝統だ」と言いますが、ホーボーはアメリカの不況によって生まれたのです。老人が多いのもノマドワーカーの特徴です。老人は語ります「2008年の金融危機の時に自殺を考えたが愛犬と目が合って思いとどまった、年金の額を調べると月550ドル、12歳の時から働いて娘を2人育ててたった550ドル。その時ボブ・ウェルズのRV節約生活を知った」と。ホーボーもノマドワーカーもアメリカの伝統であるわけはありません。マーケットで出会った元教え子は、先生(ファーンは教師をしていたようです)はホームレスになったのかと問い、ホームレスではないハウスレスだと答えます。

 ボブ・ウェルズとの会話で、ファーンは「思い出は生き続ける私の場合は思い出を引きずり過ぎたかも知れない」と語っています。彼女は夫との思い出=ホームと共に流離っていたのです。我が家で暮らそうと誘う姉、一緒に住もうと言うデイブ(デヴィッド・ストラザーン)の申し出を断り、ファーンは倉庫に預けてあった思い出の品を処分して、新たなノマドワークへと向かいます。

 この映画を観て、干ばつと砂嵐に追われオクラホマからカリフォルニアを目指す『怒りの葡萄』(1940)、ホーボーを描いた『北国の帝王』(1973)、季節労働者の登場する『二十日鼠と人間』(1992)を思い出しました。ヘンリー・フォンダにしてもリー・マービンにしても、ゲイリー・シニーズ、ジョン・マルコヴィッチにしても、ついでに言うとホーボーや砂嵐を歌ったウディ・ガスリーも皆若いです。21世紀の『ノマドランド』は老人ばかり。『怒りの葡萄』のトム・ジョードは殺人を犯して逃亡しますが未来があります。『ノマドランド』のラストで、「思い出」に蓋をして次のノマドワークに向かうファーンに希望や未来があるのか?。アメリカの「分断」に一石を投げかける映画でしょうがこれでは救いがありません。
 敢えて言えば、他人に頼らず自らの運命に立ち向かう誇り、勇気を描いたのかも知れません。

 ノンフィクション『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』を原作としているそうです。

監督:クロエ・ジャオ
出演:フランシス・マクドーマンド、デヴィッド・ストラザーン

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