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物語「コジンジョウホウ狂騒曲」 その1 [日記(2005)]

 この物語は創作でありモデルはありません(^_^;)
 4月1日、個人情報保護法が施行された。個人情報保護にまつわる狂騒を書いてみたい。
 殆ど個人情報の中で仕事をしている。周りは個人情報だらけで、何時何処で漏れてもおかしくはない状況にある。この環境で漏洩を防ごうと涙ぐましい努力が過去1年続いてきた。まず、専務取締役が個人情報管理責任者に、各部の長が管理者にが任命され、月1回「安全管理委員会」が開催されることとなった。続いて「個人情報保護室」が室長1名、女性社員1名で新設された。組織は完璧である。
 保護室の最初の仕事は規程の作成である。「文書管理規程」程度のものはあったが、「個人情報取扱規程」「個人情報管理規定」など規程類が矢継ぎ早に制定された。室長は、自分だけが規程を作るのでは不十分と考えたのか、現場にマニュアルを作れと指示を出した。加えて、個人情報の特定と登録が必要と考え、個人情報の一覧表の作成を命じてきた。この辺りから、個人情報がコジンジョウホウになってきたのである。あいうえお順に整理された名刺はコジンジョウホウだとか、課員の住所録や携帯電話の一覧表が問題視されだす。中身よりカタチ、本質より事象が優先されるのは、世の常であろうか。
 そうこうするうちに、従業員にIDカードが配られ、ドアに個人認証機能の付いたオートロックが設置された。全従業員が首からカードをぶら下げ、ピッと鳴らして入室。カードを忘れた日には、記帳してゲストカードを貰わないと入退室も出来ず、トイレにも行けないはめとなる。結構な投資だったはずだ、決断した社長はエライ。ところが抜け道もある。応接室は基本的に来客用であり、オートロックは無い。この応接を通って事務所内に入ることが出来るという抜け道が在った。私物はロッカーまで、室内は鞄の持ち込みも禁止ということで、全員に透明の袋が配られた。男子社員は誰も利用していない。大量漏洩で有名な某企業のシステム担当は、ポケット無い制服の着用が義務づけられているらしいから、透明の袋はかわいい物かもしれない。
 これで入退室は完璧と考えた保護室長は次にパソコンを問題とした。社内のすべてのFD、MOディスクとドライブをシステム課長に返却せよと命令が下った。そして「メディア使用申請書」なる帳票が誕生し、システム担当はディスクとドライブの在庫表を作ることとなった。大量のFDとMOデディスクをかかえたシステム課長は処分に困り、シュレッダーに頼った為、社内のシュレッダーの何台かは修理に出すはめとなったらしい。FDはシュレッダーにかかるが、MOは無理である。ドライバで分解したかどうか。で、ドライブはどうしたかというと、USBドライブは回収可能だが、内蔵ドライブは回収出来ない。相当期間放って置かれ、システム担当が1台1台殺して回った。殺し方がいいかげんで、コンパネで×を付けただけである。復活方法を知っている社員は当然多い。パソコン内蔵のFDドライブの口に紙で封印した会社もあるそうだが、見方によっては正解かもしれない。が笑えない話でもある。かくして我社からFD、MOは消えたはずだが、業務を見越してFDドライブとディスクを隠匿している社員もいるらしい(決して私のことではない)。彼、彼女達は、ことのいい加減さをしっかり見抜いているのだろう。カードスロットとUSBはどうしているかというと、そのままである。保護室長は知っているの知らないのか、これでは「頭隠して尻隠さず」状態であろう。最近購入したノートにFDドライブが付いていたとおまけまであった。
  この間私はと云うと、じっと息を殺して様子を見守っていた。問題はPalmである。Palmは当然ストレイジであり、Memory Stick Exportを使えばデータは抜き放題である。何時社内にPDA禁止令が出るかと戦々恐々としていたが、無視されたというか何の問題ともならなかった。カメラ付き携帯は話題とはなったが、PDAは話題にものぼらなかった(個人の携帯の持ちこみは禁止となったが、会社貸与のカメラ付き携帯は、予算の都合で買い換えが出来なかった)。カードスロットとUSBを見逃す(というか意識の外に追いやった?)保護室長が、PDAなど問題とするはずはない。一安心である。
・・・続く。