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呉善花 韓国「反日民族主義」の奈落 1⃣ (2021文春新書)  [日記 (2022)]

韓国「反日民族主義」の奈落 (文春新書 1308)
 ニュースを読んでいると、韓国という国は本当に「面白い」です →韓国をより良く理解するために、懲りずに呉善花氏の韓国論です。基本は『侮日論』の続編ですから「嫌韓」の感想文となり、閲覧ご注意です。全体は6章、

第1章:独善的な「正義」が生み出す嘘の数々
第2章:過激な反日を支える侮日の根深さ
第3章:なぜ「反日」が民族アイデンティティとなるか
第4章:奈落の底へ堕ちていく文在寅韓国
第5章:韓国が左翼独裁=全体主義国家になる日
第6章:北朝鮮を正統国家とする自虐史観

 第1章では、従軍慰安婦、徴用工、竹島などの「嘘」と、日韓併合を不法とする韓国の歴史捏造が暴かれ、第2章では反日の背景が解き明かされます。『侮日論』で展開された「華夷秩序(小中華主義)」「朝鮮侵略史観」です。第4章以下は現代韓国政治=文在寅政権への批判で、呉善花氏にしては珍しく舌鋒は鋭いです。面白いのは、反日こそが民族のアイデンティティだとする第3章。

「反日」は民族アイデンティティ
 著者は、韓国は「反日主義を大義として出発した国家」だと言います。韓国=李朝は長年中国の冊封下にあり、1905年に日本の保護となって1910年の日韓併合を経て1948年に独立します。自ら独立を果たしたのではなく、実態は日本の敗戦により独立がころがり込んだのです。
 独立はしたものの、韓国には国民をまとめるイデオロギー=ナショナリズムが存在しませ。そこで(李承晩が)目を付けたのが「反日」、

日本を「民族の敵」に仕立て上げ、反日民族主義を愛国主義の要として国内に普及させることだった。歴史の改竄・捏造はこの目的のために行なわれたのだ。

 国内をまとめる為に外に敵を作るのは政治の常套手段です(韓国の大統領は支持率が下がると反日に走ります。反日を全面的に政治基盤にしたのが文在寅)。ナショナリズムが無い(育たなかった)ので、伝統的な「侮日」「侵略史観」を「反日民族主義」(李栄薫の云う反日種族主義)として建国の大義としたわけです。憲法前文には、「(反日運動の)3・1運動で建立された大韓民国臨時政府の法統」と記されていますからソウなんでしょう。大韓民国臨時政府とは、朝鮮独立運動家が上海で作った政治組織ですが、連合国も枢軸国にも認められず、サンフランシスコ講和会議への参加もできなかった「任意団体」のようです。従って韓国が「3・1運動で建立された大韓民国臨時政府の法統」によって建国されたというのは、嘘、よく言ってこじつけ。ちなみに、

韓国の社会には嘘つきを非難するよりも、「騙される方が悪」いう通念が抜きがたくある

そうです。「騙される方」とは、国民なのか、日本なのか?。このアイデンティティを持続させるために、教育の場において「反日」を教えこんでいるようです。
 続いて著者は、何故ナショナリズムが育たなかったのかを考察します。

「衛正斥邪」の鎖国政策
 日本が近代化=明治維新に踏みきった要因はペリーの来航です。朝鮮も、1865年のロシア船の来航を始めドイツ、フランス、アメリカの侵攻があり日本とは江華島事件(1875)によって日朝修好条規を結んでいます。外圧を前に、朝鮮にナショナリズムが芽生える筈ですが芽生えません。李朝は開国に向かわず「衛正斥邪」をスローガンに頑なな鎖国政策を取ります。

「衛正斥邪」とは「正を衛り邪を斥ける」の意で、正とは儒教(朱子学)、邪とはそれ以外のすべての宗教や思想をいう。日本の「尊皇攘夷」に相当するが、「衛正斥邪」の正と邪は、中華文明を正とし中華文明に従属しない民族を邪とすることをも意味する。 李朝特有の小中華主義から出たスローガンなのである。

長年染み付いた冊封体制の事大主義によって、民族主義の萌芽は潰されていた、というのです。

「郷約」による儒教化
 著者よると、ナショナリズムの発生を阻害したのは事大主義=儒教だと言います。李朝が儒教を取り入れた背景は2つあると言います。
 1つは安全保障上の理由です。独立を維持するために体制(中央集権の官僚国家体制)と文化(儒教)を宗主国=中国と同質化させたこと。

李朝は朝鮮半島全土にわたる「抑仏崇儒」(仏教を抑圧して儒教を崇める) 政策を強硬に推進していった。たとえば、朱子が著した『文公家礼』(儒教式の冠婚葬祭手引書)を政治・社会・家族にわたる制度として移植し、全国民規模で朝鮮古来の礼俗や仏教儀礼を徹底的に儒教式に改変していった。

もう1つが朝鮮固有の血縁集団間の紛争です。

李朝時代に入ると、古くは一地域にまとまって居住していた血縁で結びつく 親族集団が、しだいに各地に分散居住するようになっていた。そのため、各地で「血のつながっていない」 人々の間の抗争が激しくなり、それが支配層の悩みの種となっていった 。こうした状況が慢性化するに至って、 李朝は、単に王朝国家の身分制度をもってするだけでは、地域社会に安定した秩序を生み出すことができないと思い知ったのである。

秀吉の朝鮮侵攻において、李朝は各地で敗北を重ねますが、これは郷村間、宗族間での対立が激しく、連帯して秀吉軍に対抗できなかったためだと云います。これではダメだというので、李朝は「儒教化」を徹底し、イデオロギーによって血縁集団間に結束をもたらそうと考えます。そこで李朝が導入したのが中国の制度である《郷約、きょうやく》。

郷約は、農民が生活を展開する郷村社会に、儒教的な秩序を確立しようとする支配層儒者たちを中心とする組織である。郷約では、村人たちが守るべきり方などについて、儒教倫理に基づいて具体的かつ詳細に成文化し、これを人々が実行することによって人々の儒教的な教化が達成されるようになっている。

儒教のイデオローグを郷村に配置して、思想統制を図ったということでしょう。結果、祖先祭祀を軸に結束する親族集団「郷村」が全国各地につくり出されていったと云います。

韓国では儒教の徳目のなかで「孝」が最重要視されている。「孝」という徳目は、単なる父母尊重のモラルなのではなく、祖先以下の父系血縁一族の持続・繁栄のために守るべき、絶対的な「律」だともいえる。
「孝」は日常的な祖先祭祀をとおして、人々の内面に深く浸透していく。こうして朝鮮の親族集団は郷村社会に根づき、人々は「儒教的家族」を形づくっていったのである。

 ナショナリズムは、血縁、地縁を超えて人々が共同して国家・民族の独立統一を目指す近代思想です。「血の一体性」に支えられた血族集団が割拠する半島でナショナリズムが育たなかった要因が儒教だというわけです。

 李承晩は、ナショナリズムの代替として伝統的「反日」で国家の結束を図ったとすれば、金正日は主体(チュチェ)思想をナショナリズムの代替イデオロギーとしたのかも知れません。次は「第6章:北朝鮮を正統国家とする自虐史観」です。続きます

当blogの呉善花氏
スカートの風(1997角川文庫)
侮日論 (2014文藝春秋)
韓国を蝕む儒教の怨念 (小学館新書2019)
攘夷の韓国 開国の日本  (1996年文藝春秋)
韓国併合への道 完全版 (2012文春新書)

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